ミミック転生 ~『比類なき同族殺し』の汚名を晴らす方法~
行方不明な少年
「それじゃ、俺はマリアのカバンに擬態しておくから」
「わかったよ。依頼人との会話は―――事情を聞くのは任せてよ」
俺は気配遮断スキルを使い、ただの宝箱に擬態した。
町では俺がみたい魔物が歩いていても、マリアが近くにいれば、『猛獣使い』に調教された魔物だと思われるだろう。
しかし、町の外に住む人間に取って、やっぱり魔物は恐怖の存在であり、見慣れてない魔物を見たら恐慌状態になってしまうかもしれない。
(まぁ、ギルド職員のルナティックさんですら、突然現れた俺を見てパニックになったからなぁ)
依頼者宅にたどり着いた俺たちは扉をノックした。
中から「どうぞお入りください・・・」とかろじて聞き取れる声がしてきた。
俺はマリアに確認を取る。 彼女は「うん」と頷いた。
どうやら、聞き間違えではないみたいだ。
扉を開いて中に入る。
「妙に暗いな。カーテンが閉められている」
「灯りがも消えるみたいだね・・・」
ヒソヒソと声のボリュームを落として、依頼者―――声の主を探す。
すると―――
「こちらです。冒険者さま……」
声の主は椅子に深く座り、項垂れている。
その様子は、衰弱しているように見える。
彼女が依頼者に間違いはないだろう。子供が行方不明になった母親......か
(疲れはてている。不味いな、子供が行方不明になってから時間が経過しすぎているかもしれない)
俺は、そう分析した。
ギルドへ依頼を出したのは、おそらく最終手段。
親族や近所の協力で周辺探索を行い、万策が尽きた後にギルドへ依頼を提出したのだろう。
緊急性のある依頼は冒険者に優先されてる。
しかし、今回の依頼は掲示板に貼られていた。
(……ギルドから生存率は低いと判断されたか)
「これを……」と依頼者は紙をみせた。
「この子の名前はコウです。これはこの子の誕生日に絵師さまに描いてもらった似顔絵です」
紙には男の子が描かれていた。
職業『絵師』でも熟練度が高い人間が描いた似顔絵なのだろう。写真のような精密な絵。 この家の経済状況を推測するのに、かなり無理をして描いてもらったのではないどうか?
子供を溺愛しているのが見てとれる。
俺はもう一度、似顔絵を確認する。
5才くらいだろうか?
栗色の瞳と髪。将来は端正な顔だちになるだろ。
もしかしたら、それを目的にした誘拐の可能性があるかもしれない。
「では、当日の様子を教えてください」
「はい、コウがいなくなったのは、5日前でした。ここちらがコウの部屋です」
依頼人の誘導でコウ少年の部屋に通された。
「ここです。私が5日前の朝に目が覚めてコウを起こしに部屋に入った時にはすでに……」
「え?」と俺は声を漏らしてしまった。
「あれ?声が聞こえましたが......どなたか、おられるのですか?」
「あ~、すいません。実は私は『猛獣使い』なので・・・・・・」
「そ、それで、この部屋に魔物が!か、隠れているのですか!」
「大丈夫ですよ。大丈夫。きちんと調教した魔物ですから」
「そ、そうですか……でも、すいません」
そうマリアは説明したが、やはり魔物への恐怖が本能レベルで染み付いているのだろう。
見てわかる程に体調が悪そうになった。
依頼人は部屋から退出して休んでもらうことにしてもらう。
その前に、俺は小声でマリアに確認の質問をするように頼んだ。
「あの―――最後に質問なのですが……」
「はい、なんでしょうか?」
「コウくんがいなくなった時、この部屋の窓の鍵は閉まっていましたか?」
「あの日の朝……はい。確かに閉まっていました」
「では朝に、この家で鍵が開いていた場所を覚えていますか?」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「もう、依頼人を怖がらせたらダメだよ」
「すまない」と俺は謝った。
俺が声を出して驚いた理由は―――
この件が行方不明と言うより誘拐の可能性が遥かに高いと判断したからだ。
それもただの誘拐ではない。
『いいえ、あの日の朝、この家でどこも鍵が開いていた場所はありませんでした』
それが依頼人の返答だった。
つまり、戸締りがされている家の中から行方不明の少年は突然と姿を消した……という事になる。
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