ミミック転生  ~『比類なき同族殺し』の汚名を晴らす方法~

チョーカー

ユニークスキルについて

 
 しかし―――

 彼女の言葉は予想外だった。

 「もしかして、私は猛獣使いの才能まで目覚めちゃいました!」
 「い、いや…違う」

 俺は慌てて否定した。しかし、彼女は矢継ぎ早に言葉を飛ばしてくる。

 「しゃ、喋った!貴方が噂の『ユニークモンスター』さんですか!」
 「た、たぶん……それだ」
 「おぉ、確かに知性を秘めた顔立ちをしてますね」
 「顔立ち?俺に顔があるのか?」
 「えぇ、全体的にスラッと面長でありながら、どこか丸みもあって……そう!ハンサムさんですね」
 「そりゃ、俺がミミックだからだ!顔じゃなくて、体の全体図じゃないか」

 そんな会話を重ね、彼女は「なるほど、なるほど」と繰り返したかと思うと―――

 「ところで、あなたは私がテイミングした魔物モンスターという事で良いですよね?」
 「だから、違う。俺の顔が分るなら、仲間になりたそうに見えるか?」

 そういうと、彼女はキョトンとした顔を見せた。

 「では、どうして私を助けてくれたのですか?」
 「それは……」

 俺は言いよどむ。彼女だって魔物から「お前に惚れたから」なんて言われたら気持悪いだろう。
 だから、俺は考えた。

 「俺も、かつては人だった。それをアンタを殺す直前に思い出したからだ」

 これもウソではない。真実だ。
 少女との会話で、俺が犯した罪の意識が一時的に消えていた。
 もしかしたら、俺は彼女を救う事で、自分の心を救おうとしていたのかもしれない。
 だとしたら、俺は、何て浅ましい生き物なのだろうか?
 一方で彼女は……

 「貴方、転生者!それで……」

 なぜだ?彼女は急にモジモジと……頬も赤く染まっている?

 「つまり、聞いていたんですよね。私の喘ぎ声とか……そのなんでもするって……」
 「おい、止めろ。俺の純情や黒い後悔を下ネタに持って行くな」

 少しばかり発情していた事実は彼女に伏せておく。

 「それでは、そろそろ出発しましょう」

 と彼女は、俺の体を持ち上げ、そのまま小脇に抱える。

 「いや、お前!俺に何をするつもりだ!?」
 「え?結局、貴方って私にテイミングされた魔物モンスターって事で決着つきませんでしたけ?」
 「ついてねぇよ!おま!下ろせ!案外、扱いが雑だ!怖い!怖い!ぶつかる!」


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 俺にだって、可愛い女子に誘拐されたいという願望もある。
 まして、一目ぼれした相手ならなおさらだ。それは普通の感情のはずだ。断じて特殊性癖ではない!
 しかし、口では嫌がりながらも内心はルンルン気分だったのは否定できない。
 だから、互いに公平な交渉を重ねて―――重ねに重ねてだ。(ここ重要)
 俺は彼女にティミングされた魔物モンスターという事になった。
 誠に遺憾ではあるが、同時に嬉しくもある。

 そんなこんなで、俺は彼女に連れられてダンジョンの外に出た。
 俺と彼女が出会ったのは、それなりの階層だったはずなのに、数時間で出入口まで帰還する事が出来た。
 これは驚くべき事だ。

 (やはり、この少女はただ者ではない?)

 ちなみに数時間、その間に俺は何をしていたのかと言うと……
 俺は『スキル』について調べていた。
 この世界には、ステータスと呼ばれているものが存在している。
 強く意識すれば視線の端に浮かび上がってくる文字がある。
 それが『ステータス』だ。もう1つ『プロフィール』という文字もあるが、今は説明を割愛しておく。
 俺は意識を集中させる。本をめくるイメージで『ステータス』を開く。
 やはり、自然と目が行くのは『ユニークスキル』の欄。

 『転生者』
 『意志疎通(人型)』
 『意思疎通(魔物)』 
 『異世界の知識』
 『比類なき同族殺し』

 5つのユニークスキルだ。

 まず1つ目……

 『ユニークスキル 転生者』

 それは、文字通りに転生者―――つまり、異なる世界から転生した者であり、前世の記憶を持ちこした者の称号でもある。
 このスキルを取得したのは、つい先ほど……俺が前世を思い出したからだ。
 その効果は……特にない。どうやら、他のスキル獲得条件だったり、既存のスキルを強化するために必要らしい。

  『ユニークスキル 異世界の知識』

 この世界に関する知識の源。異世界の知識を有するスキルだ。
 俺は、他の魔物と比較しても人間や外の世界に精通している。
 これは、このスキルのおかげではあるが……それは正確ではない。
 俺がこのスキルを獲得したは、俺が前世の記憶を取り戻したからになる。
 今までの知識は『転生者』として前世の記憶と共に封印されていたのだ。
 つまり、封印されている状態から零れ落ちる、僅かな情報量にすぎなかった。
 もしも、このスキルを通常状態で使用したら……想像するだけで躊躇してしまう。

 『ユニークスキル 意志疎通(人型)』
 『ユニークスキル 意思疎通(魔物)』 

 この2つは説明するまでもないだろう。
 人間と魔物と意思疎通が可能なスキル。
 ただ、それだけだ。

 そして―――次は問題のスキルだ。

 『ユニークスキル 比類なき同族殺し』

 獲得済みだった標準スキル『捕食者』が進化したスキル。
 俺が同族だと認識していた種族……つまり人間を殺した結果、得たスキルという事なのだろう。
 その効果は―――

 対人型特攻スキル。 
 敵対者が人間。あるいはそれに属する者に対して自動発動。
 戦闘中、様々な恩賞バフにより強化される。

 わかるようで、よくわからないスキルだ。
 人と戦う時に体が強化されるという意味なのだろうが……
 実際に人間と対峙してみないと、その真価は発揮できないか。

 『ユニークスキル』と言われてるスキルはそれだけ、あとは獲得済みの『通常スキル』
 『通常スキル』と言ってもミミックとしての技能は説明するまでもないかもしれない。

 『擬態』  

 『気配遮断』

 『毒触手流拳法』

 『特殊歩行術』 

 『体内消化(強)』

 『体内拡張(中)』

 このくらいだ。どれも平凡なスキルで解説するまでもない。
 もしも、解説すべき時があるかもしれないが……それはその時だ。

 こうやって『ユニークスキル』など使用可能な獲得スキルを眺めていると、ある事に気がつく。

 「嘘!?俺のスキルって……別にチート性能じゃない!?」

 割と衝撃的な事実だった。


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