異世界でみんなの飯テロ保護してます!

雪見だいふく

ポテトチップス

 俺はお菓子地区の知り合いに挨拶をし、船の出発を待機する。
 乗る船は、大きめの客船で一般客と一緒に向かうつもりだ。防衛側に頼みたいのだが、今となっては敵認識されていても全然おかしくない。いや、敵認識されていなきゃおかしいからな。

「ありがとうございましたー!」

 俺は船の上から手を振り、別れを伝える。まぁ、来てくれた人は数人しかいないのだけれど。

「楽しかったですね」

 俺達が乗った船の船内は電車のようになっていて。4人がけで向き合っている。俺は通路側の席で、目の前には陽葵さん。右にはエミリー。右斜め前にはサン・チュだ。
 小学校の遠足を思い出す。まぁ、こんなハーレムはしていなくて、むさ苦しい男集団だったが。

「うん! お菓子、たくさん持ってきたから食べようかー」
「あ、私これ食べたーい」

 と、ペコが胸に抱えたのはポテトチップス。
 何だか、徹夜でポ〇モンの厳選をしていた頃を思い出す。懐かしい食べ物だ。
 お菓子地区なのに、あんまりお菓子を食べなかったからなー……。

「なっ……。それは、のり塩味!? 渡さないぞー!」

 陽葵さんとサン・チュがポテトチップスの袋を引っ張りあっている。

「じゃあ、俺はこれを……」

 のり塩が好き人は多い。もちろん王道のコンソメもだ。だが、俺はこれを選ぶ。『シンプル・イズ・ベスト』。
 ポテトチップスの頂点はうす塩味である。そう断言したい。
 俺はポテトチップスの袋を掴もうと、手を広げる。だが、それを妨げる者がいた。

 パチンッ

 何……だと?!

 こんな経験をしたことはあるだろうか。
 四人で友達と集まった時。必ず一人はコンソメ派がいる。それも、コンソメが多数派だ。

 袋、どれ開けるー?

 と、なった時に『うす塩』は否定されることがほとんどだ。
 だから、毎度毎度コンソメを食わされてきた……。

 な、なのに!? コンソメを選ぶ人間がいないだと!?


『それは渡しません』


 エミリー!! 余計なことすんな! コンソメ派になれ! 集団に一人は欠かせない逸材なんだぞ?!

「ここは、平等にじゃんけんなんてどうですか……?」
「じゃんけん……か?」
「はい。そうです」

 ……ダメだ。負けた瞬間にコンソメルートだ。ポテトチップスの袋を買った時にコンソメを買わない人間は恐らく少ない。
 コンソメともう一つ。が何かは分からないが……ここで賭けるには対価が大きすぎる。

 ていうか待てよ。何で、一人一袋なんて考え方をしているんだ?

 普通に食べろよ!

「なぁ、エミリー……?」
「何ですか。覚悟が決まったんですか?」
「普通に二人で分けない?」
「……! そ、そんな手段が……」

 驚きの表情を浮かべるエミリー。
 のり塩味のポテトチップスをポテトチップスなどのお菓子が入っている袋に戻し、俺達をじーっと見つめる、陽葵さんとサン・チュ。

「で、でも、それは私の手に触れたポテチを舐めたいという魂胆では……? 変態ですね」

 と、本当に怖そうな顔をして体を抱えて窓側によける。

「そこまで逃げるか!? 別に考えてねぇよ! どんな発想してんだ!」
「で、でも……」

 すると、二人がここぞとばかりに会話へ参加する。

「「残念だなぁー。エミリーは『うす塩味』を食べなくていいんだね。はい。コンソメ」」

 ポカーンとしている、エミリーの手に陽葵さんがコンソメをポンと置く。

「じゃあ、私達三人で食べよっかー」
「今まで、一緒に食べよう。って、話をしてたんだよー」

「「で、でも、エミリーは食べれない! って言うからねー」」

 二人は完璧に息を合わせ、エミリーをチラッ、チラッと見る。

「わ、わ、私もそう思ってました!」
「顔を真っ赤にして可愛……あっ」

 思っていたことが漏れてしまう。

「さ、最低ですっ!」

 俺の頬に手の平の痕が刻まれた。
 め、めちゃくちゃ痛い……。
 体が少し宙に浮いたからな。力強すぎんだよ。咄嗟の判断で、身体強化を頬にしなかったら首ごと飛んでいったかもしれないな。

「ご、ごめんなさい……。あの、これ……」

 そう言うと、上の部分から開かれたポテトチップスを俺の手の近くに持ってくる。
 怪我人にポテトチップスを渡すって……。でも、反省の気持ちなんだよな。

「ありがとう」

 俺は微笑んでそう返した。

「あー、壮一だけずるいー! あーん」
「やりませんよ!」

 恥ずかしいな、もう!!

「他のも食べようよー」
「分かったよー」

 そう言うと、陽葵さんがポテトチップスを食べやすいように広げて開く。
 あぁ。なんか楽しいな。

 うす塩味にコンソメ味。袋を縦開きする者に広げて開く者。徹夜をして孤独に食べる者や昼間に友達と囲んで食べる者。
 それぞれいるけど、みんなで囲めば、色々なことが分かる。

 ポテトチップスは笑顔が生まれる、最高の食べ物だ。

取得スキル
皿洗いの極意 出前の初級術

カルビ名人 焦がし焼きマスター 山葵鼻つめ リーフターン 玉ねぎボンバー 土下座フラッシュ(晴れの時だけ使用可能) 水鉄砲(小) おっぱおビーム

迷惑客の対処 愛想笑い 協調性 驚き対策 ロリコン対策 ジャパニーズソウル 無神経

おトイレの付き添い 遊園地の支配 身体強化(全身) 魚との会話 危機察知

つまようじ回避マン

お色家 変装『舞妓』

地球のゲームでもあったようなレベルの煽り 
演技『狂人』 主人公補正 騙される弱抵抗力

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