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雪見だいふく

処刑

 俺は吊るされている。
 高さは大体、二十メートルくらいあるのではないだろうか。
 宙に吊るされているため、足がどこかに乗っているような感触はもちろん無い。
 怖すぎて、今にも発狂しそうだ。
 まぁ、吊るされた直後は発狂し続けていたんだけれど。
 吊るされながら、色々なことを考えてしまう。
 例えば、どうやって殺されるのかと思うと、それにって恐怖で死にそうだ。
 首をこのまま吊られるのだろうか……とか、この高さから落とされて死ぬのかな……とか、吊られていて見えない後ろから兵士達に刺されて死ぬのだろうか。
 色々と悪いことが過ぎる。
 すると、バカでかい音で何かのアナウンスが入る。

『これより、一時間後。罪人の処刑を行う。罪を犯したものはこうなる。目に焼き付けとけ。繰り返す……』

 一時間後。と、いうアナウンスが流れると俺に見えるようにしている、嫌味なのか、時計台にある時計が見える位置に回転している。
 はぁ? 何だよ、この馬鹿げた国はよ。
 ……てか、死刑? 一時間後!?
 今回ばかりは、復活とかそういう問題じゃないだろう。
 何といっても、こんなに大きく公開されていて生き返るなんて、どう考えてもおかしいからな。

 あぁ。もう! どうすんだよ!
 恐怖で震えが止まんねぇし。てか、俺が何したってんだよ。

「離せよ!! クソが!!」

 怖さを振り払うために叫ぶ。
 俺は叫び続けたが何も起こらない。

 十分。また、十分。と、刻一刻と過ぎていく。
 残り三十分になると、下に豆粒のような人がたくさん現れ始める。
 下のざわめきが小さいながらに聞こえてくる。
 嘲笑っているのか、それとも悲しい目で見てきているのか分からないが、いずれにしろ腹が立つ。
 人が集まってきてから、また叫ぶ。

「クソが!! この国は腐ってんぞ! 俺が何したって言うんだ!!」

 周りが更にざわめき始める。
 他の住民も同じことを思い、助けてくれればいいのだが……。
 すると、下の方から声が聞こえる。
 叫んでいるのか、両手を口に当てているように見える。

「うっせぇぞ! 逆らった、お前が悪いんだ!! 国を馬鹿にするな!!」

 はぁ? お前らだって、おかしいと思わないのか? 貴族みたいな奴らだけ、楽な生活してんだぞ?
 だが、そいつと同じ意見のやつがほとんどらしく。「そうだそうだ!」という声や「大人しく死ね」という声まで聞こえてくる。

 ……どうやら、俺の思いは届かなかったみたいだ。
 サン・チュ、エミリー、ごめんな。
 陽葵さんに学や翼……。この世界で会い、助けてくれた人、全員に謝りたい。
 俺はこんなところで死んでしまうからだ。それも、自分が不注意だったせいで。

 そして、諦めて俯いていると下の方で何かが起きていることに気づく。
 鎧を着た、何かが兵士達を次々に倒していたのだ。
 そして、一人たりとも血を流させることは無かった。
 あの強さは遠くから見ても誰か分かる。確実にエミリーだ。

 ……ありがとな。

 そして、下の住民達がいる方で誰かが高い台に立っている。
 すると、声が聞こえてくる。

「あの人が吊るされるのはおかしいと思いませんか?」

 マイク越しに話しているのが分かる。
 この声は確実にサン・チュだ。

 ……助けてくれてるのに俺が諦めていいのか?

「おい! 話を聞け! 俺はこの街のおかしな状況を救うために質問をしただけだ!
 何かバレたくない情報があったのかは知らないが処刑されてしまう!
 おかしいだろ! この国の『クソ貴族共』が!」

 ……下からは抗議の声も聞こえたが「確かに……」と、言うような声も徐々に聞こえ始める。
 処刑まで残り五分。
 頼む……! 間に合ってくれ!

「処刑の前に話を聞かせろ!」

 等、町人の不満の声が聞こえ始めるが時間は残り二分。
 ……間に合わないのか?
 絶対にこんなところで死にたくねぇんだよ!

「クソ貴族が! 人の話を少しは聞けぇぇぇぇ!!!」

 俺は最後の抵抗をするように叫び続ける。
 すると、後ろから足音が聞こえてきた。

 トン。トン。トン。

 後ろの確認は出来ないが恐らく、処刑官だろう。

「さっきから聞いていればクソ。クソ。クソ。お前こそふざけんなよ? 罪人が!」

 マイク越しでそんなことを叫ぶ。
 失言だな。馬鹿め。
 町人の不満は大爆発。

「ふざけんな!」や、「理由を話せ!」など、様々な声が一斉に上がる。

「お前ら町人も付け上がったもんだなぁ。まとめてぶっ殺すぞ?」

 町人達は静まり返るように、しーん。と、黙る。

「ここまで来て、独裁主義者に負けんのかよ! 絶対に嫌だぞ!」
「さぁさぁ。残り一分となりました。お前らもしっかり見とけよ。この高さから落とされる人間の末路を!」
「……うっせー! まだ、助かるかもしんねーだろ!」
「ごちゃごちゃとうるさいな。大人しく死ね!」

 と、背中を思いっきり叩かれる。
 赤く腫れ上がっているだろう。かなりの威力だ。
 だが、死ぬとなれば、そんなことを気にしている場合ではない。
 抵抗をし続ける。

「うるせーな。後、十秒で殺してやんだから待てよ」

 ……もうおしまいか。
 頭で時間を数えたくもないのに数えてしまう。

 五、四、三、二、一……。

「死ねぇぇぇぇ!」

 俺を括りつけていた物が斬られる音がする。
 この高さから落ちるとなると、死ぬとか、そんなことは考えられなかった。
 恐怖で何も言えなかった。
 俺はただ目を閉じた。

 バッ

 上から落ちていく感覚が無くなる。

 ……死んだのか?

取得スキル
皿洗いの極意 出前の初級術

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