異世界でみんなの飯テロ保護してます!

雪見だいふく

歓迎会

 わいわいと騒ぐ店内。

「こっちも1本!」
「はいー! 分かりましたー」

 俺は急いでビールを運ぶ。

「やる気入ってるわね!」
「当然だろ! へへっ」

 と、俺はこめかみをかく。

 その後も何か懐かしい仕事を済ませ少し早い閉店をする。

「ふぅ。俺達のために少し早く閉店して頂きありがとうございます!」
「気にすんなよ! お前が帰ってきたんだから歓迎パーティーを開くのは当たり前だろ! すぐ用意するからここで開くぞ!」
「じゃあ俺はもう1人呼んできますね」
「婚約者か!」
「「「「おおぉ!!」」」」

 その場にいた見たことあるような無いようなモブ店員達まで盛り上がる。

「だから婚約者じゃないですってば!」
「ツンデレか?」
「ツンデレだな」
「う、うるせぇ!」

 俺はモブ店員達に多少のイラつきを覚えながらも女騎士を呼びに行く。

「はぁ……そもそも名前自体知らないし怒らせると怖いんだぞ……全く」

 俺は扉を開く。

「今、怖いと言いましたか?」

 ドアを開けると扉の真ん前に体育座りをし俺に真顔で剣の刃先を向けてきた。

「だって皆が結婚結婚うるさいからあいつはダメですよーっていうアピールを……」
「流石に言っていいことと悪いことがあると思いますよ? 殺します」
「だからそれを辞めてください! とりあえず剣をしまいましょうよ……」

 そう言うと怒ったような表情をし剣をしまった。
 可愛いんだから普通にしていればいいのに……。

「……」

 彼女はムスッとし俺を睨み続ける。
 はぁ……早くこの人を連れて歓迎パーティーをしてもらいたいのになぁ。
 そう思っていると彼女は珍しく俺に愛想の良い表情を向けニパァと満面の笑みを浮かべる。
 いや……何かを思いついてしまったのか!?
 すると彼女は俺にニッコリ笑いかけるようにこう叫んだ。

「きゃー! もうやめてよー! お楽しみは後で……ねっ? しょ……」

 俺は咄嗟に口を右手で閉じ左手で床に押し倒す。
 口に当たる吐息が妙にエロい。

 ガチャッ

 扉がかすかに開く音がする。
 隙間から誰かが目を輝かせじーっと見ていた。俺はそいつをじーっと見つめ返す。
 ……はっ!
 少しの間を開けてしまったが我に戻り何をしているんだ俺は。と思う。
 誤解を解くために口から手を離す。すると押し倒した状態の彼女が話し始めた。

「私をっ……馬鹿にした罰だ」

 長い髪が乱れ俺の手にかかる。息が荒れていて妙にエロい。
 もう何なんだ。
 そして早く誤解を解きたいはずなのにその場から動きたくない自分がいた。馬鹿なんじゃないか?

 やっぱり俺はクソ童貞だった!

 ふぅ。脳内で本音を叫んだら何かスッキリしたぜ。

「一応言うけどなお前も俺としてると思われて色々危ないんだぞ!?」

 俺の性欲が暴走するかもしれないから危ないんだぞ!? こう続けたい。
 こんなエロい顔して押し倒されてくれているとか誘ってるとしか思えない。

「ほらほら。私に惹かれている間にも色々な人に知れ渡っているかもな」
「ぁぁ! ムカつく! お前は本当に何なんだ! 誤解を解くためにもさっさと行くぞ」
「殺しますよ?」

 こいつは本当に何なんだ!
 犯しますよ? って返してやりたい。俺が紳士で助かったなクソ女が!

「あーもう! いいから俺を守ってくれるために来たんだろ? なら早く行くぞ。俺の神経が崩壊する」
「舐めやがって……殺しますよ?」

 こいつの女王様の恐らく姉を奪う作戦を裏目に取ってやる。

「おい。大人しく付いてこないと女王様にチクるぞ。嫌われちゃうぞー?」
「ごめんなさい」

 そこからは俺が歓迎会をしてくれるいつも店を開いている場所へ向かうと黙って大人しく付いてきていた。
 ……戻ったらまた冷やかされるのかなぁ。

「呼んできましたー」
「何だか遅かったわねっ!」
「お楽しみのところをすまないな」
「違いますから!」
「いえ大丈夫ですよ……」

 その言い方だと後でするみたいじゃないか。
 すると焼男さんが耳打ちで話しかけてくる。

「お前にしては良い人を見つけたな。優しそうで綺麗な人だな」
「本当に違うんですって!」
「名前はなんて言うんだ?」

 すると焦るようにその会話に割入ってきた女騎士が自らの名を名乗り始めた。

「私の名前はレータ・エミリーと申します」

 こいつ……俺にはいつまで経っても教えてくれなかったくせに都合が悪くなったら名乗りやがって!
 しかも女騎士っていうより令嬢みたいな可愛らしい名前だな!

「それじゃあ名前は一・エミリーになるのかー」
「今はまだ分かりませんがそうかもしれませんね」

「「「「「「ヒューヒュー」」」」」」

「なりませんよ!」

 この具合で楽しめたのだが冷やかしにも耐えた俺の歓迎会は23時くらいまで続き終了した。

「「またねー!」」

 サン・チュと俺が他の従業員を見送りエミリーを連れいつも食事をしていた部屋に戻る。

「いやー! 楽しかったけど疲れたなー!」

 焼男さんは何となくビールを今日はあまり飲まなかったらしい。つまり酔ってはいないということだ。
 ならば要件を早く話すべきではないのだろうか。
 だけど、この雰囲気を壊してもいいのか……? 実際に俺も楽しかったしな。

「ところでお前は本当にエミリーさんと結婚するんだよな?」

 このままいっても誤解されるだけだ! 要件を正直に話そう!

「……違います!」


『大事な話があってきました――』

取得スキル
皿洗いの極意 出前の初級術

カルビ名人 焦がし焼きマスター 山葵鼻つめ リーフターン 玉ねぎボンバー 土下座フラッシュ(晴れの時だけ使用可能) 水鉄砲(小) おっぱおビーム

迷惑客の対処 愛想笑い 協調性 驚き対策 ロリコン対策 ジャパニーズソウル 無神経

おトイレの付き添い 遊園地の支配 身体強化(全身) 魚との会話 危機察知

つまようじ回避マン

お色家 変装『舞妓』

地球のゲームでもあったようなレベルの煽り 
演技『狂人』 主人公補正 騙される弱抵抗力

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