異世界でみんなの飯テロ保護してます!

雪見だいふく

祝福

 俺達は疲労が溜まっていたのであまり話さずにホテルまで歩く。

「疲れましたね……」
「うん……」

 陽葵さんが珍しく素っ気ない返事をする。
 皆、黙っていたので俺も黙りホテルまで戻った。
 ホテル近くの砂浜には大穴、道にはアスファルトが崩れかけたような跡。かなり荒れていた。
 はぁ……まぁ、このホテルは壊れなくてよかったな。事実、俺達のせいで神様が来たので申し訳ない。
 いつかは魚達が怒って来ていたのかもしれないけど俺らがはちゃめちゃな泳ぎ方をしなければここまではならなかっただろう。
 あれ……でも、俺何もしてないよな。
 そう思いながら開く自動ドアを通る。
 すると……

「本当にありがとうございます!」

 俺達はホテルのフロントでは済まず、部屋にいた人達にまで歓迎された。

「あ、はい……ありがとうございます。疲れてるんで……それじゃ」
「そう言わずこっちこいよー!」

 いや、マジで疲れてんだよ。離せよ。凄く喜んでる金持ちそうなスーツを身にまとった男性や女性に囲まれ、俺達4人は連れて行かれる。
 囲まれている隙間から見える感じからして恐らくパーティ等を開く大広間のような所だろう。
 シャンデリアが吊るされている場所の下に大きなケーキが見える。美味しそうだ。
 けれども、疲れているのでテンションは上がらない。すると、隣にいた陽葵さんと鈴菜が囲まれているのにも関わらず大きな声を上げた。

「ケーキだよ! ケーキ!」
「ケーキだ! やったね!」

 俺達、男3人は黙り込む。2人とも疲れているからさっさと寝させろ。と言わんばかりに嫌そうな顔で金持ち達を睨んでいる。

「そうですよ。あなた方が喜ぶかと思いましてケーキを用意させていただきました! このホテルを救った恩人ですからね!」

 本当にそう思っているなら寝させろよ! イライラするなぁ! 恩人! 恩人! とか、言ってる割にはお前ら逃げてたってことは期待してなかったってことだろうが!

 俺達はホールケーキが乗っている机やオードブルが乗っている大きな机に囲まれるように座らせられる。
 オードブルの中身としては20センチはする大きなエビを使用したエビフライ。30センチはする光り輝く大きなカニ。刺身だったり、全てのものが光輝き美味しそうだった。
 だが! 俺達はあんなのと戦ったばかりだ。食べる気も起きない。ていうか、海辺の街とはいえ、こいつらもあんなのを見たあとに良く海鮮料理なんて出せるな。

「うおおおおお! すげー!! こんなの全部食べていいんですか!?」

 翼が隣で叫ぶ。陽葵さんも鈴菜もキチガイのようにテンションが上がっている。
 あれ……皆、そんなものなの? 俺も気にせずに食べるべきなのか? だが、学も気にするように黙り込んでいた。
 だよなぁ。絶対、こうなるのが普通だよな。
 ウエイトレスのような人が俺達に苦手な物だけ聞き食べ物を盛り始める。
 俺の前にはマグロ、カニ、エビ等、様々な調理、種類の料理が盛り付けられた。もちろんタコも。
 俺は浮かない顔で料理に手を付ける。学も同じだった。

「おっ、美味いな。このカニ! 凄く身が詰まってるぞ! 磯の香りとカニの風味が鼻から入って噛めば噛むほど味が沁み美味くなるぜ。ほら! お前も食えよ」

 と、物凄く大きなカニを俺の手に置く。
 俺はそれを渋々口に運ぶ。
 ジュルル……カニの汁が口の中で弾ける。プリプリの身が踊り始める。
 翼の言った通りの感想の味が染み出す。

「うっ……美味いな」
「そんな浮かない顔してどうしたんだよ。ほら! さっさと食わないと俺がお前らの皿の分まで食っちまうぞ?」

 と、急かされる。
 学もそれに応じるように盛られた物を食べていた。
 水を口に良く運んでいたことから食べ物が喉に通っていないことが分かる。
 すると、ホールケーキを囲んでいた2人は異様なテンションになっていた。

「ひゃっはー!! 美味い! このクリーム! 甘くて美味しいぃ。イチゴの酸味とクリームが程よく絡んで美味しいぃ」
「はい! あーん」

 鈴菜が俺の口に運んでくる。
 ぼーっと眺めていた俺は驚きながらもそれを食べる。
 周りが騒ぎ始める。
 はぁ。変な噂が立たないといいんだけどな。
 すると、後ろから物凄い勢いで叩かれた。

「考えても仕方ないじゃん! 折角なんだから楽しもうよ。はい」

 と、陽葵さんも口にケーキを運んできた。
 そうだよな。考えても仕方ない……俺も楽しむ事にした。
 俺は陽葵さんから貰ったケーキを含みテンションを上げていった。学も空気を読んでかは知らないがテンションを上げていた。
 その後、他の金持ちや一般市民とも関わる機会もあり会話を楽しみながら、たくさんの美味しい海鮮料理を食べて部屋に戻った。

「ふぅ。疲れましたね」

 パーティは夜まで開かれ時刻は8時を回っており疲労もピークへと達していた。
 歯磨き以外の風呂等は忘れてしまう程に疲れていた。
 そんな俺達に気を利かせたのか布団は既に用意されていた。

「疲れたなー」
「布団も用意されてるし寝るか」
「そうだね」

 その後は疲れていたし酔いも回っていたせいか会話もしなかった。
 俺以外が布団に入ったことを確認し、俺は電気を消した。


 ――目を瞑り俺は眠りについた。

取得スキル
皿洗いの極意 出前の初級術
カルビ名人 焦がし焼きマスター 山葵鼻つめ リーフターン 玉ねぎボンバー 土下座フラッシュ(晴れの時だけ使用可能) 水鉄砲(小) おっぱおビーム

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