異世界でみんなの飯テロ保護してます!

雪見だいふく

準備

「その、条件なんですが……」
『ゴクリ』

 俺達は真剣な表情でサン・チューリを黙視する。

「まぁ、あなただけなんですけどね」

 と、俺に人差し指を突きつける。
 結構、威力強いな……じゃなくてなんで俺だけ!? もしかして、こいつ興奮しまくってるしガチホモか!? 今もめちゃくちゃ息を荒らげてるし。
 そして、鈴奈! 俺達に期待の目を向けるな。

「ハァハァ。言うのは照れますね……」
「頑張れよ」

 と、翼が俺の肩を叩く。
 いやいやいや! 助けろよ!
 今すぐ扉を開けて逃げるか。
 俺が後ろを振り向き扉に向かい歩いていくと……

「寝不足で死んでもいいのかな? 1回だけだよ。1回だけ……ハァハァ」
「……」

 父上。母上。ごめんなさい。

「要件を述べる! サンチュで俺を巻いてくれー!!」
『ただのMかよ!』
「いやぁ……その言いづらくてゲームの中で巻かれた時、最高の快楽だったのでね」
「じゃあ、その滞在先に行く時に巻いてから行きますので……準備が出来たら場所と時間をお願いします」
「それなら、もう場所は決まってるんですよ。私達が管理する島。サン島です。肉地区の近くに位置しており、ここからはかなり距離があるので6時間くらいは掛かると思います。肉地区などに野菜を輸送したりするためにある島でもあります。観光施設も安定しており魚地区の方もいるので釣りやダイビングも出来るかと。そちらの準備が出来次第用意します。なるべく早めにお願いしますね。恥ずかしながら私も巻かれたいので……ハァハァ」
「じゃあ、もう明日の10時からでいいですか?」

 と、いう事で明日の10時から急遽、俺達の夏休みが始まることになった。
 サン・チューリさんは俺達との契約を交わし笑顔で帰っていった。

「あの、俺が勝手に決めちゃいましたけど良かったですかね?」
「んー。いいんじゃない。1ヶ月くらい行っちゃう?」
「いいね! 夏休みの1ヶ月、全部向こうで過ごそう! お金とかはその……なんとかなるでしょ!」
「よしっ! 海だよな! 俺の時代来たんじゃねぇか!?」
「いいですね。ビーチでのんびりワインを飲みたいものです」
「じゃあ、各自準備をして今日は明日に備えて早めに寝よう!」

 と、なったので昼食を取った後は各自、自由行動となった。
 でもな……俺、この前陽葵さんとショッピングしてる時に何かあるかなー。と思って水着買ったし。
 海といったらビーチボールとかだけどそんなの観光施設がある島なら置いてあると思うしな……何もすることがない!
 だからといってゲームは部屋にリターンする可能性があるしな……あ……そうだ!
 こういう時にクエストってするんだな。

「学さん。クエストしたいんで確認してもいいですか?」
「ええ。いいですけど……1人で大丈夫ですか? 何なら私も……」
「俺が暇でするだけなので大丈夫です。無理はしませんよ」
「本当に後悔はしませんね?」

 なんでこんなに念押しなんだよ。後悔する要素があるのか?

「しません」
「本当の本当の本当にいいんですね?」
「本当の本当の本当にいいです」
「そ、そこまで言うなら……どうぞ」

 俺は学さんに渡されたクエスト帳を確認する。
 そこに書かれていたのは、

『クズリリー(父)を探せ。
 報酬:熊鍋
 どこ辺りにいるのかの推測:キャバクラ』

 ……俺は黙ってクエスト帳を閉じ学さんに返した。

「やっぱり辞めておきます」
「だと、思いましたよ」

 まず、1つ目。熊鍋って……自分達の肉を料理する気か? 申し訳ないし。恐ろしすぎる。
 2つ目。弱い家族は要らないから家族を捨てて出ていったって聞いた記憶があるんだが……キャバクラって、ただ浮かれて酔い潰れてるだけじゃないか! って、言うか。熊がのこのことそんな所に入れるのかよ。
 街にそんな大きい熊が降りてきていたら普通の社会なら確実に射殺だろ。だって危ないもん。

 結局、俺はする事もないのでこの社会の常識を少しは頭に入れるため夕食の時間まで読書をすることにした。
 この世界で流行った事とか色々調べた。
 知らないことが沢山分かり知識を得れたような気がした。
 その後、俺達は夕食を食べ6時半には全員起きることにし8時頃には寝ることにした。
 そして、次の日。
 今日の夜中。最後のインターフォンが鳴り響きかなり眠たいのだが6時頃には起きることにしていたので起きた。

「ふぁあ」

 でも、あの迷惑探偵から逃げられると思うと眠さと同時にわくわくが止まらなかった。
 そして、全員が準備を済ませ指定された港に9時50分頃には到着した。

「草とか山ばかりだったから海ってなんか新鮮ですね」
「だねー! やっと、海鮮料理とか食べれるよ」
「本当だよね……野菜以外のスイーツも食べれるといいね!」

 女子2人は目を輝かせる。俺も凄く楽しみにしてるんだけどね!

「泳ぎてー! サーフィンしてー! 魚系統のスキルを磨きてー」
「俺にもその手のスキルを教えてくれよ」
「厳しいから覚悟しとけよー?」

 と、いつになく上から目線で話しかけてくる。
 結局、皆テンションがめちゃくちゃ上がってるってことか。

「お酒の系統も覚えてみませんか?」
「未成年なんで……じゃなくて、知らなかったけどこちらの世界にそういうのは無いらしいですね。そこら辺は適当だから面白い世界っすよ」
「じゃあ、一緒に1杯しますか」
「うし! めちゃくちゃ楽しむぞ!」

 2分程話し込んでいるとサン・チューリが小走りでこちらに向かってくる。

「すみません。少し遅れてしまいまして……じゃあ、この船で行ってもらいますね」

 と、如何にも高そうなクルーザーに手を掛ける。
 大きさを分かりやすく説明するなら地下鉄の電車1両分くらいだ。
 釣りでも出来そうな船の上にかすかに見える階段。まだ、乗ってないのでその程度しか分からないが客室のような場所もありそうな感じだ。

「じゃあ、私は付いて行けないので……この人に運転して貰って下さい」

 と、色黒でスキンヘッド、目にはサングラスを掛けているガタイの物凄く良い男がクルーザーから出てくる。

「じゃあ、最後にその……」
「巻くのはいいんですけどこんな所で巻かれてどうやって帰るんですか?」
「あ……楽しみすぎて忘れてました」

 と、スマホのような物を取り出し誰かに電話を掛ける。

「待たせてすみません。3分程待ってください」

 ――3分後
 フェラーリのような車がものすごいスピードで到着する。

「さぁ! 巻いてくださいっ! ハァハァ」
「リーフターン」

 サン・チューリの体は綺麗に葉っぱで巻かれた。
 俺達は見下すような形で「本当にありがとうございます!」と、感謝を伝えてクルーザーに脚を掛けた。

取得スキル
皿洗いの極意 出前の初級術

カルビ名人 焦がし焼きマスター 山葵鼻つめ リーフターン 玉ねぎボンバー 土下座フラッシュ(晴れの時だけ使用可能)

迷惑客の対処 愛想笑い 協調性 驚き対策 ロリコン対策 ジャパニーズソウル 無神経

おトイレの付き添い 遊園地の支配

つまようじ回避マン

お色家 変装『舞妓』

地球のゲームでもあったようなレベルの煽り 
演技『狂人』 主人公補正 騙される弱抵抗力

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