異世界でみんなの飯テロ保護してます!

雪見だいふく

じゃんけん

「まずあなた方に生活していただくのはこちら5階です」
「生活って護衛するまでの待機って事ですか?」
「ええ。そうなりますね」
「とりあえず部屋の案内をするのでここで降りてください」

 エレベーターの扉が開かれる。
 10階建てにしては高い城だなと思っていたが天井がやはり高い。
 かなり長い廊下、分かれている通路から見てかなり部屋数があるだろう。

「こちらに来てください」
「わぁ!この城本当に広いわね」

 陽葵さんが俺の肩を揺らす。

「そうですね。なんだかワクワクしてきました!」
「あなた方には護衛の指名が……分かっているんですか?」
「す、すみません」

 でも、こんな来づらいところに本当に支配軍なんてわざわざ来るのだろうか。
 というより、来れないんじゃないか?

「こちらです」

 部屋の番号には513、514、515、516、517となっていた。

「部屋はあなた方で決めてください。食堂などの施設は部屋の案内に書いてあります。それでは」

 と、女は忙しいのかさっさと帰っていった。

「ふっふっふ。この感じ!懐かしいわね。部屋割りと言えば、これでしょ!」

 と、陽葵さんは手首を鳴らす。

「あの、ここまで来て殴り合いをするんですか?」

 と、鈴菜さんは弱々しい声をあげる。

「「「「じゃーんけん!ポン!」」」」

 鈴奈さん以外全員はパーだった。

「じゃんけんに決まってるよ?まぁ、鈴菜は最後に決めてねー」

 なんとも汚い。まぁ、1人でビビって勝手に手を握っていただけだしな。

「よっしゃ!次の試合いくか!」
「ちょ……まぁ、いいですけど」
「あの、俺3人に言うことがあります。ここまでして俺に勝つ気はありません。鈴奈さんを騙してまでっ……俺はチョキを出します。どうぞグーを出してください」

 と、俺は迫真の演技で泣き始める。

「そうか。お前いいやつだな」
「私もあなたのそれには感心しました」
「まぁ、くだらない茶番はやめて早く終わらせるわよ!」
「「「「じゃーんけんポン!」」」」

 ふっ。俺はパーを出す。
 翼、学さんはグーを出していた。

「てめぇっ!騙しやがったな!」
「ふははは!騙される方が悪いんだよ。ってことで、俺が1番に部屋を決めさせてもらうぜ」
「ねぇ、一君?何を言ってるのかな?『私』もパーなんだけど?」
「な、なにぃ!?」
「その程度のゴミクソ演技に騙される馬鹿いないわよ」

 あの、実行した俺が言うのもなんですけど本人達の目の前で言うのやめましょうよ……
 もうあの2人見れないんですけど、絶対怒って……って、ええ!?
 なんか、喜んでいるし。変なのに目覚めないで欲しいんですが……って、鈴菜さんは鈴菜さんで端っこで負のオーラを出しながら三角座りをして泣いてるし。
 もう、この人達やだ……俺が泣きたいよ。
 ここで、活躍出来ずに処罰されるのが目に見える。

「ふぅ。ここはどうせなら心理戦といこうよ」
「確かに運ゲーよりはいいですからね」
「そうよね。じゃあ、私は……じゃんけんポン!」

 俺は咄嗟にグーを出してしまった。

「馬鹿ね。私が普通に挑むわけないじゃない!」

 そ、そんなドヤ顔されても。
 俺達の後に男達はじゃんけんをするらしい。

「なぁ、学。こんなつまらねぇ戦いより実力で決めないか?」
「別に私は構いませんが戦う場所がないかと」
「そんなの、城の外で適当にしてれば良いんじゃないか?」
「あの!でも、今日はゆっくり休めって言ってたので明日とかにした方がいいと思いますよ?ほら、この城の案内に決闘する場所みたいなのもあるかもしれませんし」
「確かにそうだな。でも、今日の部屋割りどうすんだよ?陽葵とお前はいいとして」

 あの、1人忘れてます。
 まぁ、こんな事言えるわけないな。幸いにも泣いてるから気づいてないみたいだし。
 とりあえず皆で部屋を見渡し……たんだが、正直部屋に大した違いはなかった。
 修学旅行では『海』などといった景色が確かにあるだろう。

『俺海が見える部屋が絶対いい!』

 みたいな感じのやつだ。
 でも……でも、景色は全てビニールハウスじゃねぇか!
 この5部屋。見えるビニールハウスが少し違うだけで何もないし!
 山くらいあってもいいじゃん。山は全くの正反対ってなんだよクソ野郎!

「……うぅ。私、513号室で。ト、トイレ近いから」
「俺は514で。トイレ次に近いから」
「ちっ。一応、俺と学は同時に言うか?」
「515!」
「517!」

 2人の答えは違った。翼が515、学さんは517号室だった。

「まぁ、とりあえず鈴菜さん。516号室ね」

 俺は泣いている鈴奈さんの肩をポンと叩き、鍵を手に無理矢理握らせる。

「俺はトイレが3番目に近いから515号室がいい」
「私は山の欠片が見えるので517号室で」
「しゃあ!部屋も決まったことだし明日に備えて今日は各自のんびりして明日決闘だな!学!」

 え、部屋決まってんなら戦う意味無いじゃないか。

「……戦わなくてもいい気がするけど。まぁ、いいです。それじゃあ、明日ここの廊下に9時集合で。それじゃあ、俺は部屋に戻りますね」

 ガチャ
 俺は部屋に入った。
 そして、現時刻は14時。……やる事が無い。

取得スキル
皿洗いの極意 出前の初級術

カルビ名人 焦がし焼きマスター 山葵鼻つめ リーフターン

迷惑客の対処 愛想笑い 協調性 驚き対策 ロリコン対策 ジャパニーズソウル 無神経

おトイレの付き添い 遊園地の支配

つまようじ回避マン

お色家 変装『舞妓』

地球のゲームでもあったようなレベルの煽り 
演技『狂人』 主人公補正 騙される弱抵抗力

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品