異世界でみんなの飯テロ保護してます!

雪見だいふく

守れ! 苦手な人も多いあれ!

 パルクール!パルクール!
 なんだこの鳥。最悪の目覚めだな。
 俺はいつも通り部屋から出る。

「おはよ!」
「おはよ」

 嬉しさで今日の目覚めが一瞬にして最悪から最高に変わった。これは覚醒しそうだな。色んな意味で。
 という訳で仕事だ。まぁ、これは地球の為だからな。って、俺なんか主人公じみたことしてると感心する。
 俺はこの世界に来た直後なら絶対にこんなことはしていなかっただろう。
 だが、不自由な生活になって思った。世界になにかが欠けるだけでこんなに大変なんだと。
 ゲームとアニメがない! それだけで人生が激変した。
 と、ゲーム愛、アニメ愛を語ったところで準備を済ませる。私服(と、いっても戦いやすそうな服装)に着替え俺は指定された場所に向かうため店から出る。

「親父さん! いってきます!」
「おう。いってこい」

 意外とあっさり仕事を辞めることを許可してくれた親父さんのためにも頑張らないとな……そう思いスキルを使用しバイクを出す。爽快にバイクは進んでいった。

 ブーーン!

 ――数分後

「おはようございます! 陽葵さん」
「おはよっ!」

 本当に可愛いな。と思うってしまう。いけないいけない仕事をしなきゃ。

「今日の仕事は何ですか?」
「あ、今日はね! あれよあれ!」
「勿体ぶらないでくださいよ」

 なんなんだろう。嫌いそうな食べ物だから……ピーマンとかかな?

「鯖よ。さーば」
「鯖……嫌いな人確かに多いですよね。美味しいのに……」
「……嫌いなのよね。いっその事この仕事無視しようか!」
「何言ってるんですか!? 鯖を好きな人もいるんだから守らなきゃ駄目じゃ……」
「ま、いいじゃないの!」

 と、陽葵さんは回れ右をし後ろを向く。

「駄目ですって! わがまま言わないで行きますよ」
「ぶー……」

 やばい。そんな甘えた顔しないでほしい。可愛すぎて許してしまいそうだから。と、思いつつも俺は心を鬼にし行く準備を的確に進めようとする。

「早く行きますよ! って言いたいんですけど場所はまず何処なんですか?」

 陽葵さんは嫌がるように細めていた目を一気に見開く。何かを思いついたような感じだった。

「そうか……! 言わなきゃいいのね! 私天才!」
「そう言わずに……」
「……むぅ。場所はーAmazon川」
「発音よく言わないでください! っていうかこの世界にはないですよね?!」

 我ながら完璧なノリツッコミじゃね!? と自分に感心する。

「ふっふっふ。場所を教えて欲しくば私を倒しなさい! お嬢さん!」

 ガシッ

「わぁぁぁ! こめかみ掴まないでー!」

 俺の方が身長は高いしこの辺は何とかなるだろう。
 そして俺は連れていってもらうために追い打ちをかける。

「スキル発動。 演技『狂人』
 案内しないと……分かりますよね?」
「はい! 案内します!」

 2日目から先輩に対してこんな扱いをしていいのだろうか……とは思うが案内してもらうためだしいいだろう。

 ――数分後

 ……凄いな。初めて見たよテレポート。
 今回は凄く遠いのでギルドからテレポートで来た。こんなのも使えるんだな……使いてーと思った。食材はもはや関係ない気がしたけど。そこは触れないでおこう。
 なんて呑気なことを思いながら俺は爆発音のする方へ向かう。
 すると隣にいた陽葵さんが嬉しそうに叫ぶ。

「鯖だー。鯖がいじめられてるー。愉快愉快!」
「……何さらっと酷いことを言っているんですか!?」

 鯖が嫌いな人以外にとってはその光景は本当に残酷で酷いものだった。鯖を味噌煮ならぬ、クリーム煮にしていたのだ……。

「……助けてください!どうか、鯖をクリーム煮には……」

 鯖を扱っていると思われる男性が縋りながら抵抗していた。

「うるせぇぞ。鯖なんかいらねぇんだよ!」

 あいつか……酷いな。

「おい。てめぇ」

 陽葵さんは角に隠れて見ている。仕事をサボるな! と言いたいところだが俺も嫌いな食材ならあーなってもおかしくはないので見逃すことにしよう。

「鯖なんかいらねぇだろうがよぉ! 何が悪ぃんだ?」
「そうだそうだー!」

 壁からひょこっと顔を出して続けるように言う。この人は……敵の味方してんじゃねぇよ!
 俺は鯖を滅ぼそうとする男に対し丁寧な口調で話しかける。

「あの……好きな方もいるんじゃないですか? それをそのように扱うのは……」
「あ? うるせーよ。俺が嫌いだって言ってんだからいらねーんだよ」

 なんて自己中なんだ!

 なら話し合いはせずに勝負になるのだろう。地形は砂浜気味でさらさらしている。さすがは魚を扱っているところか。天候は晴れだ。
 俺は少し間を起き格好をつける。

「……なら、力づくで止めるからな?」
「かかってこいや雑魚がよぉ!」

「 スキル『出前の初級術』」

 いつもならバイクだけという場面だが、ここではバイクの他にもう一つ用意する。それはピザだ。出前といったらやっぱりこれだよな! 初級術なので出せるかなと思い出そうとしてみたがやはり出せたので嬉しい。

「バイクなんか出して何をするんだよ」
「は? だーかーら! お前は悪いやつやん? 俺から見たらさ。それだから引くんだよ。ひーく! ぷっぷーだよ?」

 我ながらなかなかに変な表現をしたな。恥ずかしい!

「おい! 待て! 理由聞いてからにしろよ。ね?」
「うるさいなーもー。大人しく捕まってくれれば俺も仕事楽なのにさー」

 やべぇ。俺はサイコパスなんじゃないかと不安になる。
 そんなことお構い無しに引こうと相手をぐるぐる回るように追い回していたが。

「お前鬼畜過ぎないか!? とりあえず理由を聞いてくれよ! な!?」
「……えへっ」

 ブーーン

「だから待てって!」

 そこまで言われたら聞くしかないな。俺はバイクを止め相手との距離を取った場所で降りる。
 はぁ。めんどいなぁ。捕まればいいのに。どうせ結果は同じなのになー。

「はいはい。聞いてあげますよ。どうせくだらないんだろうけど」

 ふっふっふ。我ながら見事な煽りだな。

「むかつくやろうだ……仕方ない教えてやろう。あれは、小学生の頃だった。鯖は元から嫌いだったんが残す程ではないから食べたんだ」

 ……何その聞く前からくだらなそうな理由。

 〇(回想) 吉沢小学校 4年2組教室

「おーい! 悟(さとる・敵キャラ)! 今日の給食ぅ。鯖の塩焼きだぜ! ひゃっはー!」

 えぇ……僕嫌いなんだよなぁ。

「そうだね! 美味そう!」

 まぁ、適当にこんな感じでいいかな!
 そして給食は始まった。

((いただきます!))

「わははは! 牛乳、俺に吹きかけんなよ!」

 何をやっているんだろう。汚いよな……ははは。はぁ……そんなことより鯖かぁ。嫌いなんだよな。こいつはパサパサするし。美味くないし。しかも骨が多くて食べにくいし……。
 その後も数々の苦難乗り越え遂に俺は鯖を食べ終わった!
 ふぅ。終わったー!
 そして俺が他の物も食べ終わるとほぼ同時に給食も終わった。

((ごちそうさまでした!))

「悟! 美味かったな!」

 うぅ。不味かったけどとりあえず……。

「うん! そ……ゲフッ!」

 やばい! ゲップしちゃった。謝らなきゃ!

「あ、ごめん!」

 許してくれるよね。さすがに……。

「うわ……ねーわ関わんなよ」

 え……? え……なにこれ。この出来事をきっかけに俺とは誰も関わってくれなかった。中学・高校と進んでも誰かにその事を言われ、何故かそれだけで誰も話してくれなかった……。

 〇砂浜・対戦中

 ……意外に可哀想だああ!! でも、これ鯖は悪くないわ。

「大変だったな……でも、鯖は悪くないと思うんだ。それって友達もどきが悪くないか?」

 友達もどきとかいい言葉選びが出来たかなと思った。

「は? 友達(思ってるだけ)は悪くねぇよ! 鯖のせいでゲップしたんだよ!」
「あのな。まず鯖の事だけど悪くないよな? パサパサするのは鯖だからしょうがないとする。
 骨が多いのなら最近は何とかなってると思うぞ? 俺なんか特にエイトイレブンの鯖の塩焼きとか大好きだったしな。あれなら骨も少なくて美味しいじゃないか。
 ほら、なんとかなってるだろ? 後は出会った人が悪いだけじゃないか??」

 これって正論だよな。

「っせぇ! あいつらは友達だ! 中・高の時はあまり話さなかったものの皆ニッコリ笑ってくれてたし! 小学の頃なんか『俺たち友達だよな』と言って奢りあいをしてたんだぞ!?」

 やばい。可哀想だ。これ分かってないやつだ。笑ってくれたのは愛想笑いだよな。
 もうどうでもいいから余談をするけどあのスキル強いよな。現実世界でもこうして使われるくらいだもんな。
 後、奢りあいは絶対に9・1くらいの割合でお財布にされていたんだろうな。

「うん。大変だったね」

 と、俺は悟の肩に手を置いた。明らかにこれは適切な判断のはずだ。

「……るさい! うるさい! 俺は悪くない! 鯖が悪い! 元の世界に戻れるとしたらあれだけは無いで欲しい!」

 おいおい。おかしいだろ! もはや八つ当たりじゃねぇか。

「そうだそうだ!」

 ……お前、いや陽葵さんも参戦するな!

「陽葵さんはさっきからどっちの味方なんですか?!」

 まぁいいか……後、そろそろ勝負にケリをつけるか……。

「もういいよ……黙れ!」

「 スキル『出前の極意』」

 ブーン!

 俺が引き倒そうとすると相手はようやくスキルを使用した。

「スキル『無視ールド』」

 無視をされふ孤独感から作ったようなスキルだった! 俺も悲しくなりバイクの速度まで落ちていく。
 くっ……こうなったら!

「スキル!『ピザブーメラン』」

 ふっふっふ。これはピザの具が手につくと不快になることを利用しているスキルだ。
 さっきバイクに乗っていた時に思いついたぜ。ちなみにピザって1人で食べるイメージはあまりないからな心理ダメージも期待できそうだ。
 相手は慣れているかのようなすました顔をしスキルを使用する。

「スキル!『ぼっチーズフォンデュ』」

 なにっ……!? チーズフォンデュを作り出すことによりピザの美味しさがチーズに制圧されていく……! しかもそれだけではない!
 ぼっち……うわぁああ! チーズフォンデュって囲んで食べるイメージがある! なんだか悲しくなってきた!

「ピザは嫌いじゃないんだけどな……やむを得ない」

 そう言うとピザを下に叩きつけていた。パリパリの生地がぁ!! そう思い投げられた方を確認すると、そこには1人の少女が何かを投げつけていた。
 ……!? なになになに!? もはや思考が追いつかない。

「これを使って!」

 飛んできたものは分かったがやめろよ! 鯖が飛んでくるってなかなかシュールな光景だぞ。
 この時、俺の頭に語りかけるように情報が整理され小学生の頃に作った料理を思い出した。

(鯖とピザ……そうだ鯖ピザ……! あれは鯖嫌いなやつにとってはたまらないはずだ!)

「コンボスキル! 『鯖ピザトルネード!!』」

 物凄い勢いで悟の口付近に鯖ピザをなげつけた。

「な、なに!?」

 顔面にクリティカルヒット。その場にバタリと倒れ込んだ。

「そんなものを受けれるわけがない……」

 そう言い残し悟は気絶した。

「確保! やりましたよ! 陽葵さん!」

 昨日に比べてあっさり終わったけど鯖を投げてくれた子に助けられたって感じかな。あとでお礼を言わなきゃ。

「もう……捕まえないでよねー。でも、お疲れ様!」

 捕まえないでよねー……って、ははは。

「あの陽葵さん。少しいいですか? お礼を言いたい人がいるので……」

 あの子にお礼を言わなきゃ。

「あ、うん。別にいいよ」
「ありがとうございます!」

 んー……どこだ……? 俺は周りを見渡すようにぐるぐると回る。
 いないか……なら諦めるしかないな。

「やっぱりいいです! 報告をしに行きましょう!」「そう? なら行こうか!」

 ――という感じで報告を済ませ家に帰った。

「ただいま!」

 家だー。こんなに苦労したのはいつぶりだろ……ここからは話すと長くなるので俺のあっちでの話はまた後にしよう。

「おかえり!」

 俺はいつも通りに飯を食べたりした後に部屋に入る。疲れが溜まり布団に入った時にふと思ったことがあった。
 それは悟の言ってたことについてだ。

『元の世界に戻れるとしたら……』

 俺はそんなことを考える。いつかは戻るのかもしれない。戻ったらやり直したいこと頑張りたいことが出来てきた。
 だから! 元の世界に戻る方法を探しながらも世界を救いたいな!
 そんな主人公みたいなことを考えながら睡眠を取った。

獲得スキル
主人公補正

取得スキル
皿洗いの極意 出前の初級術

カルビ名人 焦がし焼きマスター 山葵鼻つめ

迷惑客の対処 愛想笑い 協調性 驚き対策 ロリコン対策 ジャパニーズソウル

おトイレの付き添い

つまようじ回避マン

お色家 変装『舞妓』

地球のゲームでもあったようなレベルの煽り 
演技『狂人』 主人公補正

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