異世界でみんなの飯テロ保護してます!

雪見だいふく

『天焼き焼き武肉会』その先に待つもの……

    ビヒャッヒー!
   鳴き声が異世界らしくなってきたな……。
   遂にやってきたこの日……と、いっても応募してから1日しか経っていないが天焼き焼き武肉会予選1回戦の日だ。

「おはような! 今日は頑張れよ」
「店長……! 任せてください! 絶対に勝ち進んでこの店のPRをしてきますから!」
「あっ……頑張りなさいよね?」
「分かってるって! 頑張るぜ」

 っしゃあ! 頑張るぞ!
  俺はスキル出前の初級術を使用してバイクを出す。
  風をまとうようにバイクで駆ける。 よし行くぜ!

 ――数10分後

 じ、自動とはいっても距離が長い!
 俺はそびえ立つ門の前で立ちそう思う。俺はその門をくぐり中に入る。
 するとアナウンスが聞こえてくる。

「選手の皆さんは中央の和室に集合してください」

 ……やべぇ! なんだよこれ……厳ついおっさんしかいないじゃないか!
 そう思っているとあちらこちらから声が聞こえてくる。

「おいおい。なんだよあの餓鬼」
「坊ちゃんが来るような場所じゃねぇよなあ」

 と、俺に聞こえるような声で馬鹿にするように言ってくる。事実確認のために恐る恐る聞いてみる。

「お、俺のことですか……?」
「そうだよ。てめぇと当たった奴はラッキーだなってな! はっはっはー」

 むかつくぜ……絶対倒してやるからな!



「予選1回戦! 第1試合を始めまーす!! 第2試合の方は準備の方をお願いします!」
 俺は2戦目だから準備か……初戦は弱い人がいいな。

 ――数分後……

 前の試合が終わり俺達は何も無い闘技場のようなところに立つ。ち
 相手はフードを被った男だ。顔は見えないが髪は恐らく短いだろう。フードの端から出ていないしな。
 ちなみにルールはどちらかが賭けて降参するまで終わらないという強制ルールだ。

「2試合目を開始します! よーい! 始め!」

 相手は無言で近づきスキルを死ぬほど小さな小声で言う。

『貝塚フィールド……』

 すると相手の後ろには異臭を放つ何かとクレーターのような穴が空いた。
 名前めっちゃ弱そうだな!
 貝塚は確か縄文時代のごみ捨て場みたいなものか……その程度の攻撃なら……!
 
「スキル『出前の極意』」

 バイクで翻弄するか!
 すると前から魚を捕まえるような網が飛んでくる。
 ……!?
 やばいっ……!

『ホールドネット……』

 捕まってしまう。殺されはしないが流石にやばいな……。
 捕まえられた網に入ったまま持ち上げられ貝塚フィールドの方に持っていかれる。投げられた!?
 俺は落とし穴のような場所に落とされる。
 ま、まずいっ……! 意識も途切れかけていた。


「 スキル『シャイニングスプラッシュ……』」
 
 上から太陽が当たり輝く水が降ってくる。段々と勢いが強くなりそれと同時に意識も遠くなっていく。

「うっ……」

 ――――――

「よーい! 始め!」

 ここは……試合開始直後!? また唐突な死に戻りかよ……しかもこれ気持ち悪いんだよなぁ! ていうか思ったんだけど大会で死ぬってどういう事だよ! 殺す気でやってんのかよ!
  確かにさ、大会の説明の時に言ってたよ。

「死んだら自己責任でーっす!」

 って、満面の笑みで言ってたけどさ。もう少し考慮しろよ! 
 この小説のタイトルを変えた方がいいよ!『常識外の人には絡まれたくない!』とかさ。と、余談を考えていると相手がさっきと同じスキルを打ってくる。

「貝塚フィールド……」

  ふっふっふ。同じ手にかかる俺ではない! 穴を最初から無いものにしてやるぜ!

「スキル『焦がし焼きマスター』」

 焚き火のようなものが完成していた。ふっふっふ。これを目の前にして我慢なんて出来るわけがないだろう? さぁ焼け! 焼くのだ! 焼き芋をするのだ!
 ……俺が食べたくなってきた。

『消化……』

 焚き火なんて最初からしてなかったかのように火が一瞬で消される。
 えっ……焼き芋をしろよおおお!! 俺には勝つ手段がないんだよなぁ……主人公補正が欲しいよ!
 勝つ手段が無い俺は交渉をしよう。と考える。

「あ、あのー。よければ2人で協力して地元のおじいさんに焼き芋を売りませんか……?」
「俺には地元などない。技を見たところ焼肉屋の家だな……」

 いや……焼肉屋の家でも産まれてないし……そもそもこの世界には俺の地元はないし! でも、あの対局だけでどこで暮らしているのかを見破るなんてやはり相当の腕前だよな。と、1人で感心したように「うんうん」としていると地を這うようにという表現が合うくらいの勢いで急接近して来ていた。
 つっ……!! 油断した隙に……!
 フードの男は俺が目を閉じもう一度、死を覚悟していると耳元でこう囁いてきた。

「お前、元地球人だろ……」

 何故バレたー!! この人もあれか転移者なのか?
 すると何もすることはなく一瞬の間が出来た。これは応答に答えろってことか……?

「そ、そうですが」

 怖い怖い何この人。

「そうか……ならいい。レフリー私の負けだ」
「えっ……?」
「勝者は一選手です!」

 良くわからないけど勝ったー! 勝負が終わると今までの無口とは裏腹に話し始める。

「後で来てくれないか? 場所はすぐそこの居酒屋に。大会が終わってからで構わない」
「あ、え、はい……?」

 後で行くとして……なんか勝った気がしない! まぁいいよね!

 そして他の勝負も次々進み、俺の2回戦が始まった。

「よーい! 始め!」

「 スキル『物理』」

 物理……? 科学系の何かか?
 痛っ! 俺の脛に下段蹴りが炸裂する。なんだこいつ! 格ゲーのキャラかなんかかよ!
 だがその手の物理にはこれ有効だ。

「スキル『皿洗いの極意』」

 華麗に受け流す。これマジで便利だわー! 恐らく、この手の相手ならバイクで引いて終わりだろう。特に苦戦することもなく試合は終わった。
 そしてその後も俺は持ち前の大事な時には発動しない主人公補正を駆使し雑魚にしか当たらず勝ち続け決勝戦まで進んでいた。

「さぁ遂に決勝です! 赤コーナー! 焼肉デザートダンシング代表! 一選手! 青コーナー! 焼肉デザートダンシング代表! 肉竹 焼男!」

 そう。俺の前に立っていたのは親父さんだった。後、偉そうに言っていた爪楊枝とは当たらなかった。

「……まさか勝つとは思っていなかったから俺も出てたんだよ」
「親父さん……遠慮はいりませんからね」
「もちろんだぜ」

 「スキル『電撃スマッシュ』」

 俺の周りに雷の様なものが落ちてきて動けなくなる。こんなの無理だろ。動けない隙に親父さんはダッシュで近づいてきて俺の間近になるとほぼ同時に雷は無くなり拳……いや手に何かを持ちそれが振りかざされる。

――――――
――――
――

「んっ……」

 そこは俺が戦っていた場所だった。
 起きた時にずっと見ていてくれたらしい看護の人の話だと俺は気絶していたそうだ。

「おう、大丈夫か?」

 俺を上から見るように親父さんが話しかけてくる。

「強すぎますよ……痛たたた。ところで……あのスキルどうやって使用したんですか? 拳じゃ気絶まではしませんよね……」
「あ、これだよこれ」

 と、手に持っていたのはスタンガンだった。ガチで殺す気か!

「それはずるいですよ!」
「物の使用は自由ってね」
「……確かにその通りですね。……やばい! 忘れてた! 俺用事があるんで!」
「お、おう?」

「待ってください!」と、看護の人が叫んでいたが俺はそれを無視し、フード男と約束したところへ急いで向かった。


 ガランガラン

 俺は喫茶店でよくあるような木の扉を開く。

「いらっしゃい。見ない顔だな」
「あの用がありまして」
「まぁ、好きなところに座ってくれ」

 すると奥の方にフード男がいた。俺は隣に座ると話しかける。

「すいません。思ったより長引いて遅れました」
「ああ。大丈夫、大丈夫。ところで要件の方なんが……」
「はい、なんでしょう」
「まずは自己紹介からしようかな。俺の名前は吉田よしだ 光彦みつひこ。年齢は23歳だ」

 さっきとは打って変わって明るい表情、明るい声で話しかけてくることに軽く疑問を覚えていたが俺も安易に自己紹介をする。

「俺の名前は一 一です。よろしくお願いします」
「まぁ、本題に入るよ。今、この世界、いやあちらの世界もか……単刀直入に言わせてもらうと食べ物が危険な目にあっている」
「……? あの、言っていることがよく分からないのですが」
「……お前は全く何も知らずにこの世界に来たのか? 最初に神のような人からスキルカードと一緒に説明を受けるはずなんだが……」
「そうなんですか!?」
 
 やっぱり俺担当の神様使えないわ。

「……ここからはあまり人には聞かれたくない。奥で話そう。マスター奥いいかい?」
「少し待ちな」

 するとロックのようなものを解除し店の奥にある本棚の後ろに部屋があった。

「さぁ、こっちへ」

 言われた通りに階段を降りると、そこには謎の受付のようなものがあり、人も何人かいた。

「光彦さん! お疲れ様です! ところでその隣の坊主は新しく仲間に入りそうとおっしゃってた方ですか……?」
「まぁ、そうなるな」
「分からないというのなら……まず、この世界について話そう。この世界はな地球の食べ物が全てと繋がっているんだ」

 どうゆうことだ……?

「つまりだな。この世界で滅ぼされた食べ物は復旧されるまで、現実世界でも無かったことにされるんだ」

 つまり現実世界に俺が戻ったとして、ジャガイモが滅ぼされていたらポテチが食べられないでは済まされずその事、自体も忘れるってことか?

「それって、現代にかなり影響を及ぼしませんか……?」
「ああ。そうなる。卵とかが無くなってしまったら、恐らく現代はかなりの問題をきたすだろう。まぁ、その物の存在を忘れているのだから代用があるのかもしれないがな。まぁ……そこで動いているのが我々ギルドの人ということだ」
「それは分かりましたけど、食べ物を滅ぼす悪い奴らって誰なんですか?」

 正直いって、この世界は色々とおかしいと思う。滅ぼす必要性が全くと言っていいほどにないのだ。
 滅ぼすとしたら他の食べ物以外ありえないと思うのだが。

「それはな……俺らのように亡くなった人間だ。俺らは守る側で種類は全く違うがな。それは食べ物を滅ぼす側の人間だ。その食べ物をに深い恨み……と、いっても逆恨みがほとんどだがな。例えるなら……給食の時間に嫌いな食べ物が出てきて無くなればいいのに! とか、アレルギーのせいで周りと比較される! とかな。そんな理由でも本人にとっては嫌なのだろう」
「そんな自分勝手な理由で……許せませんね」
「という訳でだ。我々のギルドに入ってくれないか?」

 だが気になることがある。なぜ俺らがこんな世界に飛ばされているかだ。
 亡くなった人間は皆、様々な異世界に飛ばされるのだろうか。それとも俺らは食の英雄としてランダムに決められたのか。
 まだまだ気になることが沢山あるが、こんなに美味しい食べ物を潰す奴らなんて許せない。今の焼肉店が潰れたら許せない。
 俺の答えは簡単だった。

「はい。喜んで! 俺にも世界の食を守らせてください」
 その時の俺は笑顔だっただろう。異世界にせっかく来たんだ。やることがあるだろう。そう。これは俺に課せられた使命なんだ。

「君ならそう言ってくれると思ったよ。ありがとう」
「はい! 身勝手な奴らを一緒に倒しましょう!」

 これからが本当の戦いなのだろう! 俺の異世界はここからだ!

獲得スキル
ジャパニーズソウル

取得スキル
皿洗いの極意 出前の初級術

カルビ名人 焦がし焼きマスター

迷惑客の対処 愛想笑い 協調性 驚き対策 ロリコン対策 ジャパニーズソウル

おトイレの付き添い

つまようじ回避マン

お色家 変装『舞妓』

地球のゲームでもあったようなレベルの煽り 
演技『狂人』

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