異世界でみんなの飯テロ保護してます!

雪見だいふく

謎の誘拐!?

 ホーケキョッキョー
 ここは本当になんでもいるな!
 俺はそう思い布団から出る。そして、サン・チュに挨拶をしようと部屋の前の扉に立ちノックをする。

「おーい、サン・チュ。おはよう」

 だが、返事はなかった。……ん? いないのか。そう、思いたい。無視じゃないよな。
 俺が下に降りるといつも通りに焼男さんは起きていた。

「親父さん。おはようございますっ」
「おう、おはような」
「あの……サン・チュ起きてます?」
「娘はまだ起きてないな。どうしてだ?」
「え……いや、その。さっき挨拶しようかなー。と思ってたらいなかったので。ははは」
「お前が性奴隷にでもして嫌だから出ていったんじゃないか?」
「なっ……! 辞めてくださいよ! 1回もそんなことはしてません!」
「はっはっは。冗談だ」

 この人は娘が心配じゃないのか? もしかして俺が心配しすぎなのか!?

「ところで、サン・チュはどこなんでしょうね」
「あいつは家出とかしたことがないからな。その線はないと思うぞ」
「……あの! 今日も休みいいですか? 心配なんで探してきたいんです……」
「あ、あぁ。俺も捜索に協力するよ」

 俺もそうだがこの人もなんだかんだ言って心配なんだな。

「わかりました……じゃあ2人で探すとして、俺は南西。親父さんは北東を」

 すごく効率が悪いのは分かっている。だが、これしかないだろう。

「じゃあ、俺も準備と店員の誰か手が空いてそうな人にも頼んでみるよ」
「お願いします。それじゃあ、行ってきます」
「おう! 助かるぞ。頼むな!」

 と、スマホを渡された。
 この世界にもあったのかぁぁ!! だったらゲームしたかったな。

 俺はバイクで見たこともないような場所を探す。探し始めてから、だいぶ経っている。効率が悪いし当然だがなかなか見つからないな。
 そう思いバイクで捜索しているとやけに人が集まっている場所があった。
 周りはざわついていた。俺は少し気になりバイクから降り聞き耳を立てるように野次馬の話を聞く。
 これに混ざっている俺も完全に野次馬なのだが。

「あの娘……大丈夫かな」

 あの娘……ってことはサン・チュの可能性が無くもないな。俺は気になり会話をしてなさそうな1人の男性に話しかける。

「どうしたんですか?」
「さっきポニーテールで金髪の若い娘がな……そのビルに連れていかれた」

 きたぁ! ビンゴ! これは主人公補正だあぁぁぁ!!
 と、言っても相手は男だろうし何人いるかも分からない。無謀な戦いなのは分かっているが逃げ出す訳には行かないだろう。

「あ、ありがとうございます」

 俺はそう伝えると走って廃ビルに向かう。周りがざわつき始める。だが、俺はそんな言葉には聞く耳を持たない。
 ビルに入ると上から音がした。俺は階段を全力で上る。すると男達がいた。

「おい! お前らに用がある!」
「あ? 誰だこいつ」

 そこには3人組の男に襲われいた白い肌を晒したサン・チュがいた。

「離せよ。その子が何したんだよ。ていうか、3人がかりで女を襲うなんて恥ずかしくないのか?」
「う、うるせー!こっちは3人だぜ?」
「お前ら、もしかしてその子をさらった理由は構って欲しかったからか?」
「――ちげーよ!!!!」

 三人揃って言うなし。じゃあ何のためにしてるんだよ。

「じゃあ、なんだよ」
「俺らはロリコンだぁぁ!!」
「おい! てめぇなに口走ってんだよ! ばか!」

 勝手に仲間割れを起こしている3人組を見て哀れに思う。

「うわ……」
「な、なんだよ」

 気持ち悪いし早く終わらせるか。

「スキル『出前の初級術』」

 自分の前にバイクを出せた。この能力すげぇな!!
 俺はニッコリ笑いながらそのバイクに乗り爽快な音を立てる。
 3人を轢き殺す勢いだ。

「ちよっ……おま!! 危ねぇよ!!」
「スキル『愛想笑い』」

 バイクに乗りながら更にニッコリ笑い近づき精神面で倒す。このスキルはなんて便利なんだ。
 3人の顔からは恐怖が伺える。

「おい、落ち着け!」
「あはははは! きゃははは」
「おいおい。やべえぞこいつ! 俺らも本気出すか」

 そう言うと相手はスキルを呟く。

「スキル『愛想笑い』きゃはははは。本気! 本気! あひゃひゃひゃひゃ」

 轢かれそうなのにも関わらずそこから動じず笑い続ける。分かっていても怖い。
 俺は咄嗟にバイクを止める。これやばくないか……?

「スキル『釘打ち』」

 笑いながら釘を持ち近づいてくる。怖っ!
 恐怖のあまりに足が動く。

 ザクッ!

 動けないようにするためか靴に釘を刺される。このままだと動かなくなるっ……俺は避けるためにすかさずスキル『皿洗いの極意』を使うが全く効かない。

 やばい。死ぬぞ……!

「スキルぅ!『愛想笑いかーらーの!Go Home タヒねニコッ』」

 ……!? この声はサン・チュ? 後ろを振り向けないがそんな声がした。
 すると、前の奴が1人開いている窓から外に追い出された。

「あははは!」

 2人目もすぐ外に飛ばされ、3人目も外に追い出されていた。
 外に追い出している隙に釘を取り外した俺は嬉しさと尊敬のあまりサン・チュに抱きついてしまった。

「サン・チュ……お前……すごいなぁ!!」

 俺は泣きながら締め付けるようにする。

「ねぇ、あの……私裸なんだけど」

 彼女の顔は真っ赤なりんごのようだった。

「あの、その……ごめん!」
「その……あなたなら」

 更に顔を赤くし目をそらすそうにそう言った。可愛さと照れのあまり頭が真っ白になり意識が遠のいてしまった。


 んっ……こ、この天井は……あれ? そこは店の天井だった。
 俺はどれ位かは分からないが倒れてしまいここまで運ばれたようだ。
 俺は起き上がる。
 すると、サン・チュは申し訳なさそうに俺に謝ってくる。

「その……ごめんね?」

 こいつって、こんなに可愛かったか?

「あのさ。ありがと……」

 彼女は再び顔を赤くする。そんなやり取りを見ていた親父さんが冷やかしながらも感謝を伝える。

「ありがとな!」

 だけど、俺は普通に倒されそうだったし実際のところ何もしてないんだよなぁ。

「あの……俺は……」

 そんな声を打ち消すようにサン・チュは大きな声で話し始める。

「本当にそうなのお父さん! 一がいなかったら……」
「本当に助かったぜ!」
「あ、俺は本当に何も……」

 すると、彼女は振り向き人差し指を口の前で立てて「いいの」と、言わんばかりにこちらを愛らしい仕草で見ていた。
 俺はこの時に気づいてしまった。
 異世界のヒロインはこいつだったんだ……俺が初めて気がついた瞬間だった。

獲得スキル
ロリコン対策

取得スキル
皿洗いの極意 出前の初級術

カルビ名人

迷惑客の対処 愛想笑い 協調性 驚き対策 ロリコン対策

おトイレの付き添いq

つまようじ回避マン

お色家 変装『舞妓』

地球のゲームでもあったようなレベルの煽り 
演技『狂人』

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