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メタルジュエルワーム戦



 「気を付けろ!ボスは地中だ!」


 ヒロキが声を荒げるのと同時に地中からメタルジュエルワームが飛び出してきた。
 全身が出てきたわけじゃないので全長はわからないが、今地上に出している部分だけでも5メートルはある。
 その名の通り、身体中に不規則な形で結晶化したジュエルを身に纏い、ジュエルを身に纏っていない露出している部分は、鈍い銀色の光沢がある。目と鼻がなく、こちらの姿を未だ発見できていないのかキョロキョロと頭を動かしてこちらを探しているようだ。


 (まだ気づかれてないのかな?)


 「あいつ俺たちの姿がみえてないのか?」


 そういって、シュンが一歩歩き出して、そばにある拳大くらいの大きさの石をガリっと踏んだとたんに、メタルジュエルワームがピタリと探す動きを止めて、いきなりシュンのいる場所目掛けて鋭い牙をむき出しにして噛みついてきた。


 「な!?」
 「シュン避けて!」


 リンの叫びと同時にシュンがメタルジュエルワームに噛みつかれていた。
 メタルジュエルワームは元の位置に戻ると、そのまま口に銜えているシュンを飲み込んだ。


 「くそ!シュンがやられた!」
 「気を付けて!音に反応しているわ!」


 仲間がやられることになれていなかった私は一瞬の出来事についていけずに呆然としていると、すぐさま次の攻撃に備えるようレイからの注意が飛んできた。


 「【ジャイロアロー】!」


 お返しとばかりにレイが攻撃を放つが硬質なジュエルの部分に命中するが、キンッっと弾かれた。
 音に反応したメタルジュエルワームがシュンの時と同じように口を開けて噛みついてきたが、予め向かってくることを予想していたレイは噛みつきを回避する。
 噛みつきを回避すると同時に、ジュエルで覆われていない部分に向かって再び【ジャイロシュート】を放つが、そんな攻撃を意に介していないかのように再び噛みついてくる。


 「くぅ。弓じゃ何もできないわね」


 攻撃を回避しつつ、自分の攻撃が全く通じないことに歯噛みするレイ。
 私は【《神獣降臨ファフニール(獣人化)》】を使用して【《蛍火》】を発動させた。


 「リンお願い!」
 「任せて!【フレイムピラー】!」


 リンが杖を掲げて魔法を発動させた。
 MPをかなり込めたのか、普段より大きい火柱がメタルジュエルワームを包み込んだ。そして、【フレイムピラー】によって起爆した【《蛍火》】が更に包み込む。


 「よし!」
 「これならどうよ!」


 お互いの連携が上手く決まって、ハイタッチを交わした。


 「……うそぉ!」
 「効いてないの!?」


 爆炎が収まり、姿を現したジュエルメタルワームは身体中のジュエルがあちこちかなり欠けているが、大したダメージが入っていないように見える。


 「いや、効いてないわけじゃないぞ。レイ、あそこを狙え!」
 「わかった!」


 レイはどこを狙ったらいいのかわかったようで、そこへ向けて【ジャイロアロー】を放った。レイが放った魔矢がジュエルメタルワームに突き刺さると、メタルジュエルワームが痛みで苦しみ始めた。


 「よし、効いてる!」
 「え!どうして!?」
 「レイが放った矢が刺さってるところを見てみろよ」


 ヒロキにそう言われて魔矢が刺さった場所を見てみると、鈍い銀色に輝いている部分の一部にピンク色のところが見える。


 「さっきの熱で身体を覆っていた所が溶けて肌が露出したんだ」
 「ゴーレムみたいに全部が鉱物じゃないんだね」
 「表面さえとかしちゃえばいけそうだね」
 「ああ、虫でも鉱物でも熱に弱いことには変わりないな」
 「うぇ、気持ち悪い」


 急にワームっぽさが出始めたジュエルメタルワームにレイが青い顔になった。


 「みんな!気を付けて!」


 ジュエルメタルワームを攻略する道筋が出来てみんなで喜んでいると、緊迫したリンの声にハッとして慌ててジュエルメタルワームを見ると、身体全体が地上に出てきてぐるりと自分の身体を巻き始めたメタルジュエルワームの身体が徐々に力を溜め始めた。


 「お、おい。あいつは何をするつもりなんだ?」


 ヒロキが訝し気にジュエルメタルワームを見つめていると、じっと力を溜めていたジュエルメタルワームが回転し始めた。徐々に早くなっていく回転に、私はだんだんと嫌な予感がしてきた。


 「ね、ねえヒロキ」
 「な、なんだマチ」
 「私、嫌な予感がするんだけど」
 「奇遇だな。俺もだ」
 「「……二人とも、急いで逃げて(ろ)!!!」」


 私はレイとリンに急いで逃げるように呼び掛けて、少しでもジュエルメタルワームと距離が取れるように全力で走った。
 全力で逃げ出した私とヒロキの姿を見た二人が逃げ出した始めたの同時に、メタルジュエルワームの回転が最高に達した瞬間、身体中に付いているすべてのジュエルが四方八方全てに飛び散った。


 「く!【《炎竜の爪サラマンダークロウ》】!」


 私は後ろを振り返って、飛んできたジュエルを破壊する。大きな塊は破壊することができたが、細かいものは破壊することができず、肌の露出している部分に切り傷が増えていく。
 かなり距離をとったおかげでここまで飛んでくるジュエルの数は多くなかった。もし、中心近くだったら絶対に防げなくてデスペナになっていただろう。


 「おい、みんな無事か!」
 「リンがやられた!」
 「くそっ!」


 弾幕が止み、みんなの無事を確認するとリンが飛んできたジュエルに対処できずにデスペナになってしまった。レイはデスペナは回避したようだが、細かい切り傷があり血を流している。
 ヒロキもデスペナにはならなかったようだが、肩に少し大きめのジュエルが刺さっていた。


 「マチ、最大火力をあいつにぶつけてくれ」
 「うん」
 「とどめは私に任せて」


 「【《大噴火イラプション》】!」


 私はジュエルを全て飛ばして、身体を守るものがなく無防備な状態となっているメタルジュエルワームに向かってこの姿で出せる最大火力を叩き込んだ。【《神吐息白炎熱線》】は獣人化の状態では使えないので、【《大噴火》】が獣人化で使える最大火力の技だ。
 私は地面に手を付きスキルを発動させた。メタルジュエルワームがいる地面が盛り上がり、そこから溶岩が噴出した。
 【《大噴火》】により、メタルジュエルワームはほとんどの銀色の膜をはがされ、ピンク色の肌が露出した状態となった。直撃を受けた場所は、膜を貫通して肌を焦がしている。


 「レイ!」
 「【シャイニングストリーム】!!」


 私がその場を離れると同時に、レイのスキルが発動して肌が剥き出しとなった状態のメタルジュエルワームに次々と突き刺さっていく。
 矢の雨が収まると、メタルジュエルワームはその場に力なく倒れた後、光の粒子となって霧散していった。




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