流れ星が落ちた場所で僕は君と出会った。

パクリ田盗作@カクヨムコン3参戦中

戦争の始まり



「あれ、ヨシュアさん? なんで教会の外にでてボーっとして何してるの?」
「あん? ああ、マイトか、どうしたよ、今日は一人か?」


ホワイト・スノーが格納されている倉庫ドッグからの帰り道、マイトは教会前で心ここにあらずと言った様子で立ち尽くしていた神父服姿のヨシュアを見つけ声をかけた。


「ええ、ホワイト・スノーのとこに行ってましたから。ヨシュアさんこそ、何してるんですか? ボーっと空を眺めてたみたいですけど」
「なあに、ちっとばかし考え事してたんだよ。昨日のオルブ連邦の声明のおかげで世の中はごたごただからな。テロリストどもも偉そうに堂々と画面に映るしよ。俺もいろいろ考えさせられちまうんだよ」


マイトがヨシュアの様子を聞くと、ヨシュアは軽くため息を付いてスキンヘッドの頭をなでて愚痴を述べる。マイトは愚痴を述べているヨシュアが心ここにあらずと言った印象を受けた。


「ヨシュアさんもO・C・Uの依頼は受ける予定ですか?」
「ま、受けることになるだろうな。アナベルのねーちゃんに世話してもらえるしな」
「まだ、どうなるかわからないですけど、その時はよろしくお願いします」
「おう、こっちこそよろしく頼むぜ。それよりマイト、立ち話してていいのか? もうすぐ日が暮れるぞ、アナスタシアの奴が待ってるだろう?」


マイトとヨシュアは立ち話をしながらO・C・U軍の傭兵としてオルブ連邦との戦争に参戦する話をする。ふとヨシュアが気づいたように腕時計を見せてマイトに時間を知らせた。


「おっと、ほんとですね。それじゃあ、僕は失礼します」
「急いで帰ってやれよ。ルサルカの奴意外とさみしがり屋だからな」


マイトは慌てた様子でアナスタシアの事務所に向かって走って帰ろうとする。ヨシュアはそんなマイトの後ろ姿に声をかけてその姿を見送った。


「マイトか……本当は、お前もあいつみたいに笑ってる年齢のはずだよな……やっと見つかったと思ったら、お前何してんだよ……なあ、息子よー、なんでお前はテロリストになってんだ?」


ヨシュアはポケットからPDAを取り出すと映像を再生する。映像にはオルブ連邦が全宇宙に向けて宣戦布告した演説会見が映し出されていた。
旧オルブ連邦の政治家達が銃を持った少年少女達に撃ち殺されていくシーンで映像を止めて、銃を構えているマイトと同じ年齢の少年兵に画像を拡大してヨシュアは息子と呟いた。



「アナスタシアさん、ただいまです―」
「おかえりなさい。ご飯出来てるわよ」


一方、ヨシュアと別れたマイトはアナスタシアの事務所へと戻っていた。
急いで戻ったのかマイトは形で生きをしながら帰宅の連絡を告げる。
アナスタシアは普段着の上からエプロンをはおり、夕食の準備をしていた。


「クリスマスとマイト君の一日遅れの誕生日ということで、ご馳走を作ってみましたー」
「おお、ありがとうございます、アナスタシアさん。無茶苦茶うれしいです」
「喜んでもらえてうれしいわ。さ、それじゃあ、食べましょうか」


事務所のテーブルの上には七面鳥のローストチキンなどクリスマスの定番とも言えるディナーが並んでいた。
マイトは目の前に広がるごちそうを見て大はしゃぎでアナスタシアにお礼を言い、席に座る。アナスタシアはマイトの喜ぶ姿に姿に微笑んで席に座ると食事を開始する。


「無茶苦茶おいしいです!!」
「そんなにあわてて食べて、のどに詰まらせちゃだめよ?」


リスのように口いっぱいに料理を頬張るマイトの姿を見てアナスタシアはおかしそうに笑う。この時は戦争も何もかも忘れてクリスマスを楽しんでいた。
そう、オルブ連合が全宇宙へ宣戦布告したこの時期は多くの人がこう考えていた。
たとえ戦争が起きても最終的には大国主導の連合軍がオルブ連邦を鎮圧させ勝利する。結局いつも通りの平穏は続く、小国の反乱などすぐに終わるとそういう風に、多くの人が考えていた。


だが、現実は違った。



宇宙西暦230年 12月27日 星間連合軍会議室にて


「さて、ご列席の方々はご存知だろうが……我がロリック星系国を構成する3大国の1つ、チャウワンがオルブについた。そして、隣国インディを制圧し、ロルシアに向かってきている」
「ほう、ずいぶんと無様だな? テロリストに国を奪われるとは、大国としてなっていないな」


連合会軍議室にてホログラム映像で北欧系の顔立ちをした中年ハゲの男性、ロリック星系代表 ユゼースが苦渋に満ちた顔で自国星系の状況を報告する。
ユゼースの報告を聞いてどう見てもかつらとしか思えない違和感を備えたこんもりとした髪型をした欧米系白人の肥満体型の中年男性であるエウロパ星系大統領ギルガンが馬鹿にしたような表情で皮肉を述べる。


「ギルガン、今は皮肉を言っている時ではないでしょう? それに、僅か一日でここまでの事が起きたのだ。オルブやテロリストたちは、ずいぶん前から中国に手回しをしていたのでしょう」


アルメリア帝国宰相である南米系の顔立ちをした青年シュナイザーがギルガンを注意する。


「シュナイザーの言うとおりだろうよ。それに、終わったことを攻めてもどうしようもない我らがするべきは、これからどうするかという話だ」
「我々がすべきことというと、ロルシアへの救援か……今回の首謀となるオルブの排除かということになりますね」


O・C・U議会代表である黒人の老人であるベアードが会議を進めようとする。それに乗っかかるように中東系の顔立ちの長髪に豊かな髭を生やした中年男性のシェラザード星系首長アッディーンが今後連合軍が取る方針を提案する。


「ウチにとってはどうでもいい話だ。ウチは変わらず不干渉を貫く。整備物資や補給物資、補給基地が欲しいなら提供してやるが戦闘には参加せんぞ。他国と関わる気はサラサラないんでな」


日本国首相であるアジア人系の顔立ちをし、黒縁メガネに七三分けの髪型をした初老の男性の鷲尾は中立を謳う。


「鷲尾、これは銀河規模の問題ですよ! そういった協調性を乱すような態度は……」
「とはいってもな、ウチには遠征に参加できるほど兵隊がいない。補給やらなんやらの後方支援しかできないんだ。それでいいだろう?」


鷲尾の発言にアルメリア宰相のシュナイザーが注意をする。だが鷲尾はどこ吹く風と言った飄々とした表情で遠征できないと繰り返す。


「日本に関しては補給をしてくれれば十分だろうよ。それよりも鷲尾、貴様の所はロリック星系に近いんだ墜とされてくれるなよ? 突然、日本からも攻め込まれるなんぞ勘弁してほしいからな」
「そこは安心しな。うちの国は、専守防衛にかけては世界最強だよ。お前らが束になってきても沈むことはない」


エウロパ星系大統領ギルガンが鷲尾に皮肉を言うが、不敵な笑みを浮かべて鷲尾は防衛に関しては自信があると答えた。


「はっ、相変わらず、大した自信じゃな。まあ、日本についてはそれで良いじゃろ。さしあたって、アッディーンが言うようにロルシアを救うのか本体を狙うのか、どうするつもりだ?」
「私としては、ロルシアを救ってもらったうえでチャウワン・インディの解放も行ってもらいたいところだな。ロリックの同胞たちが諸君らに撃たれるのは見たくないのでな」


鷲尾の発言にO・C・U議会代表のベアードが鼻で笑いながらも会議を進める。救出かオルブ本国を叩くか票決を聞くとロリック星系代表ユゼースが救出に一票入れる。


「ふん、救援なんぞまどろっこしい手段はいらん。悪の本体を殲滅してこその正義だろうが! 我らエウロパは、オルブ殲滅作戦を決行する」
「私もオルブの殲滅に1票を。ロルシア等の救援に手間取っているうちに、他の地域でも反乱を起こされてはイタチゴッコになりますからな。速やかな鎮圧こそが必要」


エウロパとシェラザートはオルブ本国攻撃に票を入れる。


「では、我がアルメリアは救援に1票を。苦しんでいる人々を救うことも大国に必要な行動です」
「ふむ、日本は中立、殲滅にエウロパとシェラザート。救援がアルメリアとロリックか……戦力分配を考えれば、O・C・Uは救援が妥当かの? それとも、戦力分散は愚行故、殲滅に加わったほうがいいかの?」


エウロパとシェラザードの投票を見てアルメリアは救出に一票いれる。O・C・U議会代表のベアードはわざと悩むような素振りをして両国の出方を伺う。


「ハッ、貴様らO・C・Uは救援に向かってやれ。オルブなんぞ、我が国の精鋭だけで十分よ」


エウロパの大統領ギルガンは傲慢さが溢れる態度でO・C・Uは救出に迎えと告げるとベアードは救出に票を入れて、連合軍議会参加者全員の投票が終わり決議が決定する。


「さてと、そんじゃあ、これからの方針は決まったんだこれで解散でいいだろう?」
「では、私は失礼する今も戦っている同胞たちにこの決定を知らせねばならないのでな」
「私も失礼しよう。父に遠征の許可をもらい遠征部隊をそろえる必要がありますので」
「では、私もこれで我がシェラザートの技術のすべてを持ってエウロパと同じ戦場に立たせていただきましょう」


会議が終わると同時に、日本、ロリック、アルメリア、シェラザートの順に通信を終えてログアウトしていく。


「まったく、余裕のないやつらだ。国の代表たるものが余裕を持たぬとはな。アルメリアはまだしも、シェラザートは我らと同様に内紛など慣れていように」
「ふふ、この騒動で死ぬ人間を減らしたいのだろう? アルメリアの宰相殿はお優しいからなさて、ワシも国軍の編成と、傭兵たちの召集に努めるとするか。ではの、ギルガンよ、次は会議などではなく茶会を催したいものよ」
「同感だなくだらぬ戦など終わらせ優雅に過ごしたいものだ」


こうして星間連合軍によるロルシア救援とオルブ本国強襲の二面作戦が決議され、遠征が行われた。



「O・C・U軍としては、ロルシアの救援に向かうこととなった。O・C・Uのほかはアルメリアがロルシア救援に向かい、傭兵部隊もこれに同行してもらうことになります」


星間連合作戦会議決議後、アナスタシアの事務所にアナベル少佐からO・C・U軍所属の傭兵として参戦の打診が来ていた。


「まさか、ロリック星系の内部分裂が起きるなんて……ロルシアのほうは大丈夫なんですか?」
「まだ戦線を維持しているようですが、インディ方面はすでに何か所か制圧されてしまっています」


通信映像が変わって、ロリック星系内の勢力地図が表示される。チャウワンはオルブの勢力下に置かれ、インディは徐々に侵攻が広がっている。ロルシアも防御に徹しているがいい状況とはいえない。


「たった3日で、これですか……」
「ああ、予想外の出来事です。こんな状況ですが、マイト君にアナスタシアさん、O・C・U軍からの依頼を受けてもらいたい。傭兵部隊に参加し、今回の救援作戦への参加を要請します」


オルブ決起から今日までの勢力図の変化を見てマイトは絶句する。アナベル少佐も寝耳に水か青天の霹靂と言った様子で現状に動揺が隠せないようだ。


「危険すぎる任務ですね……テロリストを鎮圧するだけではすみませんわ。当然、報酬の方も期待してもいいのでしょうか?」
「無論です。弾薬費、輸送費は全て、こちらが請け負いましょう。そして、成功報酬も任務の難易度を考慮したものです」


アナスタシアは最初は参戦を受け渋るが、アナベルは弾薬費や輸送費も軍側が持ち、世紀報酬も難易度に合わせて増額すると約束する。


「それなら十分ですわね。わかりました、確かに依頼のほうお受けいたします」
「ありがとうございます。現地には私も向かいますし、友人として、私ができる限りで貴方たちをサポートしますよ」


報酬面で納得いったのか、アナスタシアは依頼受領の手続きを取る。アナベルは依頼受領官僚のサインを見てホッとし、戦場で共になることを告げて最敬礼をする。


「アナベルさん、お互い頑張りましょう。僕もできることをやってみます」
「ああ、マイト君も気を付けてくれ。今までよりも危険な仕事になるだろうから。それでは、集合場所やその他についてはギルドの方に情報を送っておきますので、準備をしてください。それじゃあ、また後日」


アナベル少佐との通信がきれるとアナスタシアは両頬を叩いて気持ちを入れ替え、マイトの方を向く。


「さあ、これから忙しくなるわね。契約を結んだ以上、私たちは依頼主のために全力で働くわよ。私たちは平和や誇りとかそんなもののためじゃなく、自分たちのために戦い、生き残りましょう」
「世界一の傭兵を目指すためにも、僕はできることをしていきます」
「ええ、がんばりなさい。でも、絶対に無茶はしちゃだめよ? この間も言ったけど、自分の限界以上のことはしちゃダメ。死んでしまったらどうしようもないんだからね」


アナスタシアは出撃に向けての必要な書類や手続の準備をしながらマイトに声をかける。マイトも緊張した様子はあるが気後れはなく気力に満ちた表情をしていた。


「わかってます! 僕が死んだら悲しむ人がいるって言われたばかりですから」
「うん、よろしい。それじゃあ、準備をしておきましょうか、ホワイト・スノーやシンデレラもヴァネッサさんにチェックしておいてもらいましょうかね」
「そうですね、機体に不備があると大変ですからしっかり見ておいてもらいましょう」
「ええ、整備不良で戦死なんて最悪だもの。それじゃあ、いきましょうか」


マイトとアナスタシアは事務所を出ると本契約を結ぶためにギルドへと向かう。
何も知らない第三者がマイトとアナスタシア、二人の後ろ姿を見れば仲の良い姉と弟に見えただろう。
彼ら二人はこれから戦争へ向かう。戦闘用ロボットに乗って戦場へ向かい、引き金を引いて命を奪い合う戦争へと……宇宙西暦231年、新年を迎えたこの日、マイト・ダイナーは戦争の表舞台へと足を踏み入れたのであった。

          

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