流れ星が落ちた場所で僕は君と出会った。

パクリ田盗作@カクヨムコン3参戦中

襲撃



「今の爆発はなんなんだ……って、あれは……」


式典第2試合終了直後、会場のあちこちで爆発が起き、式典会場が阿鼻叫喚の混乱に陥る。
格納庫へと戻ろうとしていたマイトは爆発した箇所に振り向くと、一機の戦闘用ロボットが着地していた。


「ピースベル!? いや……ピースベルタイプだけど違うモデルっぽい。さっきの爆発はあいつの仕業?」


着地した戦闘ロボットはマイトの故郷でシンデレラに搭乗して戦ったピースベルタイプによく似た形状の戦闘ロボットだった。マイトが戦ったタイプよりスリムなので軽装甲型か高機動型と思われる。
襲撃者側のピースベルはマイトが搭乗するブラックドッグを見つめていた。


「なーんか、こっち見てるけど、まーさーかーねー……」
「こんな、こんな式典を開いて人殺しの道具を作って……お前たちみたいなのがいるから、戦争の犠牲者が生まれるんだ!! 俺がお前たちを倒して戦争をなくしてやる!!」


ピースベルのオープン回線から男性の叫び声が聞こえる。
ピースベルのライトアームに搭載された銃口がブラックドックに向き、榴弾が発射される。


「緊急回避!!」


ブラックドッグは左に戦闘機動で飛び退き、榴弾を回避する。地面に着弾した榴弾は破裂し、周囲に鉄片を撒き散らし、地面や式典の機材をズタズタにする。


「戦争の犠牲者云々言ってる割には非人道的な兵器使ってるよ!?」
「ブソウヘンコウヲスイショウ ゲンザイノヘイソウデハセントウハキケンデス」


爆心地を見てマイトは思わずツッコミ、サポートAIはひっきりなしに武装変更を推奨する警告音を繰り返す。


「襲撃してきたのはこいつの他にもフレームアーマーが何体かいるのか、向こうでも爆発が起きてるし……逃げ回れば援軍が来てくれるかな?」


マイトはランダム回避でピースベルの狙いを定められないように逃げ回り、周囲の状況を見て行動を決め兼ねていた。


「ブラックドッグのパイロット、聞こえるか? 聞こえていたら周波数を0910に合わせてくれ」
「これは? とりあえずブラックドッグ、周波数を言われた通り0910にあわせて」
「リョウカイシマシタ」


回避行動中、共通回線でマイトのブラックドックに通信が入る。マイトはブラックドッグのサポートAIに命令して通信で言われた周波数にチャンネルを合わせる。
チャンネルを合わせるとコクピットの端に通信者の画像がポップアップする。
画像に写っていたのはゼニアスP8のパイロット、マックス・パトリック中尉だった。


「ブラックドッグのパイロットかね? 私はマックス・パトリック、先ほどまで君の相手を務めた男だ。時間がないので用件だけ言おう。協力して、ピースベルタイプをかく乱しようではないか。我々で、アレを引付ければ被害を減らせるはずだ」
「協力するのは構わないんですけど、どうやってかく乱するんですか? お互いの武装は模擬戦用のものですよ?」


マックスの提案に驚くマイト。マックスはマイトのことなどお構いなしに話を続ける。


「この会場にいるのは、あのピースベルタイプ一機のみ。私と君で別方向から接近、ペイント弾でメインカメラを狙う。大した効果はないだろうが、相手をひきつけることはできる。援軍が実弾を持ってきてくれるまで、時間を稼ぐつもりだ」
「それなら……片方が狙われたらもう一方が援護をする。両方狙われたら、回避重視。これでいいですか?」


マイトは逡巡するがそれ以外に手段がないとわかると覚悟を決める。


「ああ、構わない。君と私でお互いを支えあい、無粋にも舞踊の終わりを乱した輩を懲らしめてやろう」
「了解です。大したことのできない新人ですけど、援護させてもらいます、マックスさん」


共闘と作戦が決まればマイトとマックス、ゼニアスP8とブラックドッグ両雄が並び立つ。


「それじゃ、行きますか!」
「ああ、即興のダンスだがお付き合い願おう」


敵のピースベルがまた榴弾を発射する。マックスとマイトは左右に分かれて回避すると、ピースベルを挟撃するように挟み込む。


「その素敵なお顔に、お化粧はいかがですか!」
「舞踏会に遅れたお嬢様、こちらからもメイクをプレゼントしよう!」


片方が牽制し、片方が射撃する。ピースベルがマイトの方を向けば、マックスが妨害し、マックスに攻撃を移そうとするとマイトが牽制に入る。
ピースベルのボディはペイント弾でカラフルに塗装され、実弾ならば撤退してもおかしくないダメージになっていただろう。


「こいつら……ペイント弾を当てたぐらいでいい気になるなよ! まとめて吹き飛ばしてやる!!」


ピースベルのパイロットが苛立ったように叫ぶと、右脚がスライドしてライフルが射出され、ピースベルの手に収まる。


「お前達のような傭兵や兵士がいるからっ! 戦争が終わらないんだ!!」


ライフルからエネルギー弾がマイト側に一発、マックス側に二発発射される。


「そんな派手な攻撃じゃあ」
「我らをとらえることなどできぬと知れ!」


マイトはブースターを駆使した戦闘機動で、パトリックは可変機構を利用して戦闘機に変形し、上昇してピースベルの攻撃を避ける。


「くそっ! ちょこまか……ぐあっ!?」


ピースベルのパイロットはムキになって二人に向けてライフルを乱射するが決定打になっていない。
しつこく撃ち続けようとしたピースベルの背面が爆発する。ピースベルの背後には単発式のバズーカーを構えたブラックドッグがいた。


「後ろが、がら空きだぜ? テロリストさんよー。うら、お前ら、実弾装備持ってきたぞ! 今までのお返ししてやれや!!」
「その声はヨシュアさん? 助かります!!」
「ブソウコウカンカンリョウ ソンショウナシ サクセンコウドウニモンダイナシ」


ヨシュアが搭乗するブラックドッグの足元には武器が積まれたコンテナがあった。
ヨシュアがピースベルに向かってマシンガンで牽制している間にマイトとパトリックは実弾武装に換装する。


「さあ、反撃開始だっ! 穴だらけにしてやる!」


マイト、ヨシュア、パトリックの3機の攻撃に追い詰められていくピースベル。
マイトのビームライフルがピースベルの右肩に命中して、ピースベルの右腕が大破する。


「くそー……兵器があるから……戦争がなくならないっていうのに……お前たちはそんなに戦争したいのかよ! お前たちみたいな奴はみんな死んでしまえばいいんだ! 次は、次は必ず仕留めて見せるからな!!」


ピースベルのパイロットは捨て台詞を吐いて撤退する。ピースベルがある程度上昇するとゼニアスP8のように戦闘機に可変して逃げていく。


「一番厄介なのを追い返せたな。マイト、他にも雑魚のこってるから処理しに行くぞ」
「了解です。あ、マックスさん、お互い無事で何よりでした」
「ああ、君の射撃も操縦も素晴らしかったよ。さあ、残っている敵を殲滅しよう」


ピースベルが撤退したことで襲撃側のテロリストは浮足立ち、各国のお披露目予定の新型機の実戦テストの餌食となった。


「ふー、なんとか終わったみたいだね」
「おつかれさま、マイト君。私もアナベル少佐も無事よ~」


式典は一時中断、現在はO・C・U軍による残党掃討戦が始まっており、軍人ではないマイトは一旦格納庫への帰還を命じられた。
マイトはブラックドッグから降車すると大きく伸びをしてホッと一息つく。格納庫の入り口からアナスタシアが手を振ってマイトに駆け足で近づいてきた。


「よかったです。テロリストのせいでアナスタシアさんたちが怪我したら、たまったものじゃないですよ」
「ふふ、これもやる夫君がピースベルを引付けてくれたからよ。他の機体は、各国が個別で相手してくれてたしね」


アナスタシアはアナベル少佐と臨時の司令部で各企業のテストパイロット達に指示を出していたという。


「いや、僕は大したことないです。マックスさんに合わせて動いてただけです。僕一人じゃ、どうしようもなかったですよ」
「それでも、マイト君が私たちを守ってくれたことに変わりないわよ。ありがとうね、マイト君」


謙遜するマイトにアナスタシアはマイトの頬に口づけをする。マイトは一瞬何が起きたかわからず、キスされた頬に手を当てて呆然とする。アナスタシアはそんなマイトの様子を見て微笑んでいた。


「なっ……わっ……えっ、えええっ!?」


爆発したようにマイトの顔は真っ赤になってあたふたと慌てふためく。アナスタシアはそんな初な反応を見せるマイトを見て笑っていた。
そんな二人の元へ走ってくるアナベル少佐、興奮した様子でまっすぐマイトに向かってくる。


「マイト君!! 君は素晴らしいぞ!! 君のおかげで我が社は救われたぞー!!」
「うわああっ!? はっ、離してくださっ!?」


アナベル少佐はそのままマイトを抱き上げるとグルグルと踊り回り、アナスタシアがキスした頬と反対の頬に何度もキスしてくる。


「ア、アナベル少佐、いったいどうしたんですか? 僕のおかげって、なにかしましたか?」
「君とブラックドッグがあのピースベルタイプを食い止めてただろ? O・C・U軍の人間がそれをみて、ゼニアスP8とブラックドッグをそれぞれ半々で導入することに決まったんだよ!!」


そう言ってアナベル少佐はマイトを下ろして、辞令が書かれた書類を見せる。
辞令にはアナベル少佐が言うようにゼニアスP8とブラックドッグをそれぞれ半々導入する内容がかかれていた。


「式典前はゼニアスP8にほとんどシェアを奪われてたのに、半分もシェアをとることができたのは、君の活躍のおかげだ!」
「は、はあ……あんまり実感はないですけど、それはよかったです」


マイトは目を回しながらもアナベル少佐にお祝いの言葉を上げる。


「で、さっき決まったんだけど、マイト君には追加報酬を上げることになりました。予想よりもシェアをとれたんでそのご褒美ってことです」


アナベル少佐がまた別の辞令を取り出してマイトに見せる。辞令には契約時に交わした報酬とは別の追加報酬の金額がつかされていた・


「成功報酬とさらに追加金って……い、いいんですか!?」
「なにせ、君に依頼する前はシェアの取得予想5%以下だったからね。それが50%だよ。逆に払わなきゃこっちが怒られる」


マイトは恐縮し、アナベル少佐に何度も確認をする。アナベル少佐は何度も確認するマイトに付き合って何度も説明をして追加報酬が事実であることを教える。


「これだけの額貰えたなら、支給される機体を売ってなんとか、ホワイト・スノーの修理費に足りるわね」


追加報酬の額を覗き見したアナスタシアが修理費に達したことを口にする。
さり気なくマイトを抱き寄せ、マイトを隠すようにアナベル少佐との間に入る。


「おお、やっとホワイト・スノーを直してやれるんですか!」
「ああ、マイト君の本来の相棒だったっけ? せっかくだ、私の知り合いの修理屋も紹介しよう。紹介者がいないと働かない変わり者だけど、腕前は確かだし、それなりにサービスしてくれると思うよ」
「アナベル少佐、ありがとうございます! これで、これでやっと僕は友達と一緒に働けます!!」


マイトはアナベル少佐の両手を握って上下に激しく振って喜びを露わにする。
アナベル少佐はそんなマイトの喜ぶ姿を見て頬が緩みそうになるのを歯を食いしばって我慢している。


「き、気にしなくて構わない。これはマイト君のおかげで得た利益だ。それに、これからも依頼を頼むかもしれないし、す、末永く付き合っていきたいからね」
「はい、これからもアナスタシアさんと僕にお仕事をください! 頑張ってやって見せます」


こうして波乱万丈なマイトの初任務である式典のテストパイロットの仕事は終わった。

          

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