流れ星が落ちた場所で僕は君と出会った。

パクリ田盗作@カクヨムコン3参戦中

マイトの初仕事!?



「さてと、鍵をかけてっと……ホワイト・スノーも早く直してほしいだろうけど、新人の僕じゃ当分先の話だなぁ……」
「そうでもないぜ? お前さんみたいなのでもこなせる仕事ってのはあるもんだぜ」


倉庫のドアをロックしてセキュリティをかけなおしていると、マイトの背後から声をかける一人の男性。
マイトが振り向くとカトリック教っぽい神父服を着たスキンヘッドにサングラスの黒人が立っていた。


「だ、誰ですかっ!?」
「そう怖い顔すんなよ、お隣の倉庫の人間だよ。坊主、金が必要なんだろ? お前みたいな坊主でもこなせる仕事があるんだ。どうだ、俺の仕事の手伝いをしないか坊主?」
「いや、僕は素人も素人なんでこなせる仕事とかないですから。しかも上司を通さないで仕事を受けたりできません」


神父服の黒人はにこやかに勧誘してくるが、マイトは警戒して当たり障りのない言葉で神父服の黒人が提案する仕事を断る。


「んだよ、ノリが悪いな。お前が素人と分かった上での仕事だってのによ」
「いや、そのー……胡散臭いといいますか、都合がよすぎるといいますか…… うまい話には裏があるもんですよ?」


マイトの態度に神父服の黒人は肩をすくめる。マイトは必死に角が立たないように言葉を選んだつもりで断る口実を述べていた。


「おお、いいねー、そういう心掛けは大事だぜ」


マイトがうまい話に警戒している様子を見て神父服の黒人はマイトに好感を持ったのかニカッと笑う。
その笑みすらマイトには胡散臭く思えて仕方なかった。


「まあ、お前さん用の依頼があるってのは本当なんだが、いきなりじゃあ、信じられないだろうしな。うし、アナスタシアの事務所行くぞ、坊主」
「いや、なんでそんな唐突なんですかあなたは!? いきなりすぎて意味が分からないんですけど!!」


神父服の黒人はマイトの話を聞いてる様子はなく勝手に話を進めていく。
さすがにマイトも我慢の限界だったのか、語気を荒くして抗議するが、糠に釘、暖簾に腕押しと言った様子で神父服の黒人は気にした様子もない。


「細けえことはいいんだよ。おら、いくぞ」
「ちょ、担がないで!?」


ひょいと言う言葉が似合うほど自然な仕草で神父服の黒人がマイトを脇に抱きかかえ、アナスタシアの事務所に向かう。
マイトは必死に暴れるが、第三者が見るとスーパーでお菓子を強請って駄々をこねる子供を抱きかかえて出ていく親のように見た。


「で、私の事務所まで拉致されたわけね……」
「なんか初日からすいません」
「細かいこと気にすんなって」


呆れた様子でコーヒーを淹れるアナスタシア、ペコペコ謝り続けるマイト、まるで家主のように事務所のソファーにくつろぐように座り、アナスタシアの淹れたコーヒを飲む黒人。


「いや、貴方も最初からこっちに来なさいよ、ヨシュア。顔見知りなんだから普通に来ればいいでしょ?」
「ユーモアに満ち溢れた行動だろう? 世の中楽しく生きなきゃな」
「普通にしなさい、普通に!」


アナスタシアは微笑みながらヨシュアと呼ばれた神父服の黒人に小言を告げる。
顔は笑っていたが、その目は永久凍土のように冷たく笑っていなかった。
そんな視線を刺されてもゲラゲラ笑いながら軽口を返すヨシュア。その態度にアナスタシアは怒鳴った後に深くため息を付いた。


「えーっと、結局こちらの方はお知合いなんですか?」
「ん、そうね、知り合いっていうか同業者よ。彼は、ヨシュア・アレスト。見た目はアレだけど悪いやつではないわ」
「アレとかいうなよ。まあ、坊主、さっきはいきなりで悪かったな」


マイトがアナスタシアにヨシュアと知り合いかと聞くと同業者だと答える。
改めて紹介を受けたヨシュアはまたニカッと笑うがやはりマイトには胡散臭い人物にしか見えなかった。


「は、はあ、いきなりで驚きました。あ、僕は、マイト・ダイナーです。よろしくお願いします」
「おう、よろしくな、マイト」


マイトが自己紹介すれば気軽な感じで返事をするヨシュア。
アナスタシアも自分で入れたコーヒーで喉を潤すと口を開く。


「で、ヨシュア、仕事の話って言ってたけど、どういうこと? 私は機体を修理中だし、マイト君は訓練中よ?」
「ん、それでいいんだよ。今回の仕事は素人のマイトのほうが依頼人の要望にかなうんだよ」
「素人のほうが都合がいいって、どういうことですか?」


ヨシュアが持ってきた仕事の内容を聞いてマイトが怪訝な表情を浮かべる。


「胡散臭い任務じゃないでしょうね? 危険度の高い仕事はしないわよ。無理しても意味がないんだから」
「まあ、まあ、話を最後まで聞きなさいって。とりあえず依頼内容は新型機のテストだよ、テスト」


アナスタシアも警戒した表情でヨシュアを見る。ヨシュアは二人の様子も気にしておらず、大まかな依頼内容を告げてコーヒーを飲んでくつろぐ。


「はあ? なんで傭兵が新型機のテストするのよ? 普通に軍のエースに任せるか子飼いのパイロットがやるでしょ?」


アナスタシアはヨシュアが持ってきた仕事内容を聞いてありえないと首を横に振る。


「だから、最後まで聞けって。来月行われる世界規模の式典、知ってるだろ?」
「各国企業の新型機のお披露目式よね?」


マイトにはわからなかったが、ヨシュアとアナスタシアには式典が何か知っているのか、話を続ける。


「その通り、そして式典に参加する企業の一つが依頼人だ。依頼人のところの新型機は、性能的に他の企業に比べるとどうしても見劣りしちまうらしいんだ。そこで、依頼人たちは、性能よりも操作性を売りにしようとしてるわけだ」
「素人でも、簡単に扱える……性能は劣るけど、即応性によって総戦力の増加を売りにすると?」
「そういうこった。優れた機体でも扱えるパイロットが少なけりゃ意味がない。なら、多少劣っても扱いやすいほうがいい……そういう風に宣伝したいわけだ」


ヨシュアが詳しく依頼内容を説明する。ヨシュアの話は筋が通っているのか、アナスタシアはとりあえず続きを聞く態度に戻った。


「だが、本当に素人に乗せて失敗したら目も当てられない。乗せるにしてもどんな人材を乗せるか困っていた。そんな風に困っているところにだ、素人がテロリストを落とした……それも厄介者で知られるピースベルを落としたという情報がはいった」


ヨシュアはマイトをちらりと見て話を続ける。


「素人とはいえ、ピースベルを落とすほどの才能だ。少し訓練させれば、自分たちの機体の性能を引き出してくれると考えたわけよ」
「それで、あんたがわざわざ依頼を持ってきたわけ?」


アナスタシアはマイトを見ながら依頼主の思惑がわかって納得した。


「そういうこと、まあ俺と依頼人はそれなりに繋がりがあるし、俺はお前とも知り合いだからな。仲介役としてはもってこいだったわけ。どうだ、依頼の内容と理由は分かったか?」
「なんか、僕が過大評価されてる気がします……結果が出せなかったら、どうするつもりなんですか……」


マイトは今ひとつ乗り気ではない。初仕事がいきなり新型機のテストパイロット。それも本来なら軍のエースパイロットが行うはずの仕事が割り振られそうになっている。どうしてもマイトには信じられなかった。


「まあ、結果を出せるかどうかを判断するために1ヶ月間の訓練期間を設けてるんだよ。1ヶ月で使い物になるなら、それを売りにして、 無理なら普通に選ばれたエース達が式典に参加して終わりってところだ」


ヨシュアは仕事のメリット内容をマイトに説明する。


「まあ、失敗しても罰則とかない、結構うまい仕事だぜ? 成功報酬は金と新型機を1機、さらに訓練期間中の必要経費も向こう持ち。美味すぎだと思わね?」
「なんか、すっごく裏がありそうで怖いです……」


あまりにも話しがうますぎてマイトは警戒よりも恐怖が前に出ている。
ヨシュアは安心させようとニカッと笑うが、マイトには効果がないようだ。


「まあ、そう思うのは無理もねえ。俺も最初に聞いたときは、破格の条件だと思ったからな。けど、依頼人もそんだけ切羽詰ってるわけだで、どうするよ?」


ヨシュアはこの仕事を受けてほしいのかマシンガントークのように矢継ぎ早にマイトに声をかける。マイトはアナスタシアに助けを求めるように顔を向ける。



「契約はギルドを通すんでしょうね?」
「おう、そこは安心しろ。後で依頼内容の変更やら、苦情が来ないようにギルドを通すことは向こうに話してある」


アナスタシアは釘を差すようにギルドを通すことを求める。
ヨシュアも予想していたのか、依頼人に了承取っていることを教えた。


「マイト君、少し忙しい1ヶ月間になるけど受けてみない? デメリットのない、かなりおいしい依頼だわ」
「いいんですか? 失敗したら、僕やアナスタシアさんの評価とかそういうのが下がるんじゃ」


マイトは失敗を恐れて消極的になっていた。アナスタシアはマイトを安心させるように微笑む。

「別に大丈夫よ。向こうからの条件も素人が欲しいっていうのなんだから、素人が失敗しても誰も気にしないわよ」
「最初のころに失敗しなかった奴なんていないもんだ。まあ、ちょうどいい練習だと思って受けてくれよ」


アナスタシアとヨシュアがマイトを励ます。


「ヨシュアの言う通りよ。操縦の訓練するついでにお金をもらう、そんなものだと思いなさい」
「そ、それじゃあ、受けてみます。ヨシュアさん、よろしくお願いします」
「おう、まかせとけ。明日にでも、依頼人のところに契約詰めに行くからお前らもついてこいよ」


マイトが依頼を受ける事を了承すればヨシュアがニカッと笑ってPDAを弄る。おそらく依頼人にマイトが依頼を受けることを承諾した旨をしらせているのだろう。


「はいはい、ありがとうね、ヨシュア。貴方にしては美味しい依頼だったわ」
「ありがとうです、ヨシュアさん」
「なあに、俺にも利益がある話だからよ。仲介だけで金貰えて、マイトが成功すれば俺も新型機もらえるんだからな」


アナスタシアとマイトが礼を述べるとゲラゲラ笑いながらヨシュアが依頼を受けさせようとした訳を話す。


「ぼろい商売ね……その企業大丈夫なんでしょうね……」
「信頼はできるから大丈夫だって。まあ、次の式典でこけたらどうなるかわかんねーけどな。とりあえず、邪魔したな、また明日」
「あ、また明日です」


アナスタシアがジト目でヨシュアを睨む。
ヨシュアは明日の約束を取り付けると逃げるように事務所から出ていった。
マイトは急な初仕事に頭がついていっていないようだった。


「いろいろ思うこともあるし、初めての依頼で緊張するでしょうけど、ヨシュアの言ってたように気楽にしてなさい。美味しい依頼であることに変わりはないんだから」
「はい、やれるだけ頑張ってみます!」


アナスタシアがマイトの肩に手をおいて声をかける。


「そうそう、その意気よさて、じゃあ、ご飯にしましょうか私の手作りだから、味わって食べてね」
「わー! むちゃくちゃ、楽しみです!!」


二人は事務所に戻ると夕食の準備をして明日の英気を養った。

          

コメント

コメントを書く

「SF」の人気作品

書籍化作品