流れ星が落ちた場所で僕は君と出会った。

パクリ田盗作@カクヨムコン3参戦中

マイトの旅立ち



マイトが傭兵になると決めてから、早いものでもう一か月も経った。
あの日の夜、マイトが決意してから、両親へのの説得、傭兵ギルドへの手続きに勉強や体力づくりと忙しい日々を過ごし、気がついた時には一ヶ月経っていた。


マイトが最初傭兵になることを両親に伝えると、当然ながら最初は反対された。
だが、マイトが本気で傭兵を目指すことを話して、アナスタシアが面倒を見ることを話したら、最終的には、定期的に連絡を取ることを条件に両親はマイトが傭兵になることを認めた。


「いや、バレバレだったし、危険はなさそうだったから放置してたがな」


マイトが山にいるホワイト・スノーに会ってたことを話すと両親ははホワイト・スノーのこと知っていた。
マイトがちょくちょく山に行ってたから、後をつけて確認してた。
ホワイト・スノーが壊れてることを知って、危険がなさそうだから放っておいたそうだ。



両親への説得を終えたマイトはアナスタシアから傭兵としての基礎訓練を受けていた。


「訓練終わらなきゃ依頼なんて来ないわよー。お得意さんがいるわけじゃないしねー」


傭兵ギルドの所属に関しては必要な書類はアナスタシアが取り寄せて、契約の内容とかの説明をしながらマイトと一緒に作成した。
前科や書類に不備がない限りギルドは希望者を拒否することはない。提出から数日後にはギルドからの許可も出てマイトはデータ上では傭兵ギルド所属の傭兵となった。


ただ、しばらくはアナスタシアの下働き扱いで、実質的に活動するのは訓練とか勉強が終わってからになる。


訓練のほうは基礎的な体力作りから始めることになった。
最初は悲鳴を上げていたマイトも一ヶ月後には訓練に食いついていけるようになり、薄っすらと全身に筋肉がつき始めた。


勉強の方は銀河共用語習得と傭兵ギルドの規則と各国の交戦に関する法律、ロボットの整備など覚えることが多く、マイトは最も苦しんだ。
抜き打ちでアナスタシアがテストをしたり、銀河共用語での応答して、間違えると体罰を受け、マイトは悲鳴を上げていた。


それでもホワイト・スノーと一緒に傭兵になるという想いに嘘はつきたくなかったのかマイトは必死に食らいつき、なんとかアナスタシアが定める最低ラインをクリアすることが出来た。


ホワイト・スノーとシンデレラは二機とも修理屋が回収し傭兵ギルド専用のドッグへと運んでいった。
シンデレラはドッグ収納後に修理されるが、ホワイト・スノーの修理はまだ見積もりも出ていないため手が出せず、倉庫で保管となった。


ホワイト・スノーとシンデレラは意外なことに顔見知りだった。双方以前のオーナーがパイロットとして所有していた時に交戦しており、ホワイト・スノーがマイトのいる星に堕ちた原因を作ったのがシンデレラだった。
修理屋のコンテナに収納されて主電源が切られるまで二人は聞くに堪えない罵詈雑言をお互いに浴びせ続けていた。


マイトの必要最低限の訓練を終え、アナスタシアの怪我もほぼ完治したことから、数日後にマイトは、アナスタシアの事務所があるO・C・Uと呼ばれる惑星に行くことになる。


「さてと、持ってく荷物はまとめたし、何か必要になったらまた送ってもらえばいいかな」


マイトはアナスタシアの事務所に住み込みで働くため、必要な荷物も着替えと持ち運びできる日用品ぐらいだった。
トラベルケースの蓋を閉めるとマイトは窓際に移動して夜空を見上げる。


「15年間か……過ごしてる間は退屈だったけど、こんな田舎町でも、いざ出ていくとなるとさみしいなあ……僕は、もう傭兵だ。次にこの町に帰ってくるときは、有名になって父さんや母さんにいっぱい自慢話をするんだ……」
「外の景色を見て感傷に浸るとか、中二病乙だな」


マイトが黄昏れているといつの間にか父親がやってきており、マイトの呟きを聞いて必死に笑いをこらえていた。


「父さん……もうすぐ出ていくから感傷に浸ってるのに、中二病扱いはひどいよ」「んー、まあ気持ちもわからんではないが、別に今生の別れってわけでもないだろう?」


呟きを聞かれたマイトは顔を赤くして抗議する。父親は自分の息子が出ていくというのに気軽な態度を取り続けている。


「そりゃ、そうだけど……傭兵って危険な仕事だから、その……」


傭兵になると決めたが、マイトは15歳、やはり不安と恐怖があるのだろう。
父親はそんな不安そうなマイトの肩に手をおいて微笑む。


「確かに危険な仕事だろうな。だからマイト、一段落ついたら必ず帰ってこい。もちろん、定期的な連絡も忘れるなよ?」
「そりゃ、約束だからちゃんと連絡するし、落ち着いたら帰ってくるけど……なんで、そんな当たり前のことを?」
「なあに、人間ってのは『帰ってくる』って意思があれば、どんな状況でも生きようとするんだ。だから、お前に帰ってきてもらうためだよ」
「父さん……」


父親の言葉を聞いてマイトは父親の顔を見つめる。
父親は優しく微笑んでマイトを励ます。


「……父さんもいい年こいて中二病だね」
「息子を心配して恥ずかしい事言ったのにそりゃないだろうが……」
「なに、恥ずかしかったの? だったら似合わないことしなければいいのに」


息子に突っ込まれて照れ隠しに逆ギレする父親。
先程の不安な顔とは打って変わってクスクスと笑うマイト。
そこには親子の交流があった。


「でもま、いい言葉だとは思うよ。また『帰ってくる』ために頑張ってみる!」
「 ふん、頑張れよ、バカ息子」


笑ったら吹っ切れたのかいい顔で挨拶するマイト。
父親は目を細めてマイトの頭を撫でて息子の成長を心のなかで喜んでいた。


「次に帰ってきたら、僕のすごさに父さんはきっと驚くよ」
「は、寝言は寝て言え、バカ息子。それはそうと、次帰ってくるときはアナスタシアさん嫁にして帰れよ? ああいう可愛い子は、うちの嫁として大歓迎だからな」
「ななななっ、何言ってるの!? アナスタシアさんは、僕の上司! 失礼なこと言わないでよ!!」


父親の爆弾発言にマイトは顔を真赤にする。
そんなマイトの初な反応に残念そうな表情を父親は浮かべた。


「ああ、ああ、これだから童貞は……お前、美少女と二人暮らしするんだろう? 一緒に仲良くなって嫁にしちまえって、俺が母さんを落としたのだってな――」


そんな親子のくだらないやり取りをしつつ、ついにマイトが旅立つ日が来た。


「じゃあ、行ってきます。父さんも母さんも元気でね」
「お前も体に気をつけろよ! 連絡忘れるなよ。用事がないけど元気ぐらいの連絡は入れろよ」
「頑張るんですよ。アナスタシアさんに迷惑をかけないようにね」


宇宙へと上がるシャトルステーションのロビーでマイトは両親に別れを告げる。
両親はマイトに声をかけ、アナスタシアに頭を下げる。


「ご両親とも心配でしょうが、息子さんは私が責任を持ってお預かりしますので。それから、療養中の間、泊めていただきありがとうございました」


アナスタシアもマイトの両親に頭を下げて治療中止めてもらったことにお礼を述べる。


「こちらこそ、愚息をよろしくお願いします。それと、アナスタシアさんが来てくれてからは、我が家も華やかでしたから、またいつでも来てください。なんなら、具足の嫁に来てくれても構いませんぞ」
「家の人の馬鹿な発言は聞き流してくれて構いませんわ。アナスタシアさん、よろしくお願いしますね」


マイトの父親が息子の嫁にとアナスタシアに必死にアピールしていると、マイトの母親が無言で金属製のトラベルケースで父親を殴って黙らせ、オホホホと笑いながらマイトのことをお願いする。


「まったく父さんは、最後まで自由なんだから」
「ふふ、湿っぽい別れよりは、こっちのほうがいいと思うわよ。それじゃあ、おじさま、おばさま、落ち着いたらまた訪問させていただきますね」


これがマイト達ダイナー家の日常なのか、マイトは呆れた様子で、アナスタシアは当初は戸惑っていたが、今では慣れて笑ってスルーできるようになった。


「それじゃあ、行ってきます」
「ああ、行ってらっしゃい」


短い別れの挨拶をして、マイトとアナスタシアはシャトルに乗って、O・C・Uと呼ばれるアナスタシアの事務所がある惑星へと旅立った。

          

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