僕と最強幼女と狂った世界

土佐 牛乳

決着とケチャップ 15



「ほう、大技勝負ときたか、ワシも大技を出すとしよう」


 彼がそう言い終わると、スタフェリアは、両手を編むようにして両手を伸ばした状態から、胸の前に持ってくる。ゆっくり、何かを溜め込むかのようにその手を移動させると、彼女の周りから、可視化ができるほどの黄色に淡く光る霊気が、纏うようにして集まっていた。それは霊気ではなく、ファントマ―が能力による大技を放つ際に、空間ごと圧縮されていくため、冷気が集まっているように見えていたのだ。
  スタフェリア・アブソリュータ・ウロボロウスは、常世にして、全ての森羅万象の真理、循環性、永続性、始原性、無限性、完全性。全てを兼ね備えた存在である。その者は、異端の属性にして、ドラゴンの属性を兼ね備えた存在である。
  今は新たなる刺客によって、この世界に新たな秩序ができているが、しかしながら、彼女のそのすべてを司る前にしては、彼女の苦ではなかった。
  この世界を象徴していると言っても過言ではない、そんな彼女に挑む相手、彼の名は、一二ひとふ 突吉とつきちである。十二支族、十二番目にして、闘神と呼ばれている男である。前世界で彼女を倒したことのある彼は、そのやり直す前の世界で一つやってみたいことがあった。それが、スタフェリアの必殺技を自身の必殺技とでどちらが上なのか試してみたかったのだ。彼女はあまりに強すぎるため、自身の騙しで彼女を最果ての地の底へと追い詰めた。彼自身は、彼女と戦ってどこまで戦えるのか、彼女と過ごしていく時間でそんなことを考えていたのである。だから今の願ったような彼女と向かい合って、お互いの力で全力を出し切っていることに喜びがあった。何度か自分の娘に邪魔をされたが、しかし、そんな娘が傷つくことよりも、彼女と戦うことがやっぱり諦めきれなかったのである。今の運がいいような状況で、真っ向勝負ができる状況で引き下がるわけには、過去の願望が、かなった今日、やるしか能がない彼であった。
  彼女の空間がねじ切れるような動作に、彼は答えるようにして、自らの必殺技の準備へと入った。彼はこのような場面に、アドレナリンが爆発的に脳内に散布していたのである。たとえこの身がどうなってもよかった。この状況が堪らなかった。
  全てが、彼女と戦うようにして仕組まれたような世界。そんな狂った世界などどうでもよかった。たしかに一度は彼女がこんな仕打ちがあるのはおかしいという自覚が芽生えていた昔、しかし徐々に彼女が強いというそれだけで挑みたくなるような不思議な感覚が、前の彼女と共に過ごした世界の記憶からしっかりとあった。
  誰も彼もが、見たいものを見るべくして、背伸びをするように、彼もまた、彼女の強さをこの身で確かめてみたかった。という気持ちが彼の中にあった。しかし建前は、彼女が指定された南極の区域、以外のところへ移動すると、龍脈、そして霊脈が、乱れ全てのバランスが狂うのである。それが彼女を倒せなくても、南極へ追いやるのが彼の使命であったのだ。そんな使命などほおっておいて、彼は彼女と戦いたかった。
  それが叶った状況が目の前に広がっていたのである。

 彼女は、スタフェリアは第二形態の、背中から悪魔のような黒いうろこと漆黒のマントのような羽翼が生えていた。まるでそれに装飾をするかのように、白のまだらな模様のようなものが、トラの模様のように、まだらに広がっていた。
 それらも、空間をねじ込むようにして、手の方へとその捻じ曲げ集めた。凄まじいエネルギーが圧縮されているのか、彼女周りからはプラズマが、映像の効果のようにあった。
  彼女の右頬に、ビリリと電流が走って、彼女はさらに威力を高めるために、両手は、拳の武器をはめていたが、それが食いつくように彼女の両手を竜の腕へと変化させた。祖龍たる両手は、周り全てのエネルギーを食いつかさんと、空間を集めていた。それに限界はなく、一つ触れたところ、それは全てを吸い込む、”空間のブラックホール”となり、元素分解をしてその物体は消滅する。その技の名は、終焉の夜明けである。
  彼女は、地球を潰せるほどのものを作れるが、しかしそれにはとんでもない量の時間が必要である。しかし、小さくても効果は絶大である。わずか三十秒足らずの、生成であったが対人としての大きさはこれでよかった。
  胸の前で握っていた両手を前に突き出すと、そのイカれた物体をブッ放つ準備ができたスタフェリアであった。これで発動すればこの攻撃は、彼女の現象改変能力を応用して、絶対に当たるようにその弾の軌道を変えるのである。まさに名の通りの必殺技であった。

 対して、彼の大技は、全てを叩き壊す技として呼ばれていた、闘神の星砕きブレイクハンマーであった。文字通り全てを突き破るその必殺技は、幾度となく、その技で戦場を渡り歩いてきた彼専用のものである。壊せないものはない、この技で関係すらも叩き壊したことのある彼の技は、地上で大きな割れ目を作ったことがあった。
  ぶっとんでいる威力は、全力を出すとこの地球すらも壊すことのできる破壊力がある。そんな技で彼女の終焉の夜明けを粉砕したいと彼は願っていたのであった。
  それは闘神たる所以である、狂気なまでの闘争心に他ならなかった。
  彼は手の前で、余った力を全て使い果たし、ハンマーを生成させた。そして足を大きく開いて、重心は普段の腰の高さよりも半分ほど落とし、とんでもないほどの力を貯めていた。まるでイノシシが突進をするときのような力のためとなっており、異界の力使いが、全てを破壊つくさんと構えているようであった。轟轟たる構えには、空間が振動を起こしている。彼もまた霊気を操れるすべはないが、その圧縮された、究極属性の力特有の、太い筆でオーラが絵描いているようになっていた。構えだけでも、誰もが逃げ出しそうな確かなる、破壊、その二文字があった。

 この必殺技の勝負は一瞬である。同時に技が放たれるのは前提として、もし仮に、何か邪魔があったとしてもその邪魔は、邪魔ではなく、なかったものになってしまうだろう。十二支族が戦うのは、稀なことではある。だからこそその力で環境に与える影響は計り知れないものがある。しかし両者はそんなことはお構いなしであった。












「僕と最強幼女と狂った世界」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「その他」の人気作品

コメント

コメントを書く