僕と最強幼女と狂った世界

土佐 牛乳

決着とケチャップ 14

 二人は再度、同じような構図で見合わせた。互いの連れは力尽き、また彼女彼らも、体は疲労に襲われていた。
  空は、いつのまにやら、青黒の空から、淡いオレンジ色とかき合わさったような色をしている。かすかに地面はみえるようになっていた。
  そして、気温はその日の最低温度なのか、冬のようにお互いの吐く息は白い吐息であった。春であるにもかかわらず、この時間の温度はかなり低いものとなっている。
  わずかにできた霜が、薄暗い夜空を反射して、まるで幻想の世界を演出していた。

 数秒、彼らは沈黙。

「貴様との過去を決別させるためにも、行くぞッ!!」

 先に口と行動を実行したのは、スタフェリアであった。
 昔、彼を気に入っていた時期があったスタフェリア。それは彼女の過去であり、そして覆しようのない、前世界の記憶であり、それが彼女であり、彼がスタフェリアをそうさせたのであった。そして何かを変えるためにと裏切られた過去のことには、当時は凄まじい激情を胸に募らせていた。しかし今はどうでもよかった。それは”今”の世界の記憶ではないとともに、現在は夜久のことを気に入っているからであった。今度こそ邪魔は入らない。だからこそ、この少しだけできたしこりのようなものを、目の前の男と戦ってきれいさっぱりに抜き出してやろうという魂胆であり、遠い過去への決別であった。
 まるで凄まじい刃のように彼女は、その身を彼へと、移動させる。
  鋭いまでの攻撃、つまりは、その剣筋のようなキックを男は、右手一本で防いだ。まるで縦のようなその豪腕は全くとダメージを受けていないように傷一つすらつくことはなかった。スタフェリアは、その防御力に怯むことなく、次の攻撃を仕掛けた。
  その腕に、休む暇を与えないように、今度は、右手によるパンチを繰り出した。
 ダンッ!! 肉と肉が当たったとは思えないような、凄まじい音が彼と彼女の間から生まれた。
  ここに来て互いの武器を使わずに、格闘戦を行っているのは、互いに同時にして消耗しているというのもあるわけである。スタフェリアは、華憐との戦闘で貯蓄をとどめの大技を使うために隠している。そして彼が、武器を使わない理由は、そのスタフェリアの大技を相殺させるためにも、ここで使うのはダメであると判断してのことだった。
  スタフェリアの、十二神具は創生を司る力を持つ、それに対抗するためにも彼は、全力の力を以てして、対抗しなければならなかったのだ。

 肉弾戦は、スタフェリアには負い目があった。体格差が全くと違うということと、彼はスタフェリアよりも、攻撃性は同じでも、耐久力はずば抜けており、並々ならぬ攻撃が当たらない限り、その男の体を壊すことはかなわないのである。それが彼の力であった。
  二度、三度スタフェリアは、彼になんども肉弾戦による攻撃を仕掛けるも、全くと埒が明くことはなく、少しずつ、段々と、彼女が追い詰められているという現実があった。
  彼女の特殊能力は、彼には、要するに混沌派生の究極の属性には、彼女の唯の力は全くと通用がしないからである。それはこの世界のルールと同時に、覆しようのないものであった。彼もまた、大きな力を使えるが、彼女には効果がないものであった。
  まるで、互いに肉弾戦を強いられているように、その能力はお互いに絡み合っていなかった。まるで今の彼ら彼女らのように、かけがえのないものができた者と、大切な家族ができた者、互いに違うものを見つけたように。

「言っておくがスタフェリア、ワシは負けんぞッ!!」

 瞬時に一蹴り。地上を蹴って、彼女の目の前へと移動した男。

「早く死んで、お前はお肉になるのじゃッ!!」

 スタフェリアも負けじと声を張り上げて、彼に反応するように地面を取んだ。

 状況は、俄然として男の方へと振り向いていた。なんどもスタフェリアは応戦するが、圧倒的な受け流しと、巧みな戦闘技術、そして冷淡な攻撃。破壊を目論むような容姿からは想像ができないほどのカウンター攻撃に、スタフェリアは食らいついていく。
  スタフェリアはこの不毛な状況を覆すには、どうにかして、この取り留めのないカウンターを避けて、一つ、いや何度も再起不能になりそうな一撃を食らわせて、とどめに彼女が隠し持っていた必殺技を当てる以外に、この状況を覆す方法はなかったのだ。
  どうしようもない現実のように、彼はまたその手を緩ませることはなかった。それがどうしようもない現実なのは、彼女がいままでどれほどの屍を踏みつけてその上に立っているのかのように、それらを噛みしめるように、彼は休むことはなかった。
  祖龍たるゆえにこのような、現実と向き合うこととなってしまったのだが、しかしながら、彼女は彼女だからこそ、この道を歩んできたのだと、改めて理解した。
  それが誰のためだったのか、なぜこうなってしまったのか、それは全ては、彼女が彼女たるゆえにこのようなことになっているのだと、わかっている分かっているつもりだ。
  肉体は普通の女の子を求めている。それがこの体で受肉した結果、始末、結末だったのは、どうしようのないことであった、
  だから今は、夜久のために戦おう。

 スタフェリアは、この状況を、まったくと買わないような状況を変えるためにも、十二神具を使うことを決めた。状況が変わらないのなら、一撃を以てして壊すまでである。
  スタフェリアは、その手に力を込めた。そしてその手のひらから這い出るように、腕にまとってきたのは、彼女の第三世界十二神具、『原初終焉リバースの拳』。すべてを変えるにして、全てに調和をする、祖龍たる彼女の一つの武器、それは拳に、龍の装飾をした、拳型の武器である。白と、黒を折り合わせたような、一つの鉄製による模様。二次元創世をつかさどった、彼女だけが唯一使うことのできる武器であった。
  誰もがこの世界での役割があるように、彼女にもかつては役割があった、しかし二度にわたり彼女は、その役割を放棄した。そして彼女は世界の最果てへと一人の男の裏切りによって最果てまで追い詰められることとなった、それが彼女の過去であった。

「ほう、大技勝負ときたか、ワシも大技を出すとしよう」



























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