僕と最強幼女と狂った世界
決着とケチャップ 10
状況。
一目とさ馴れた場所に、彼女たちの戦いは終わったようであった。まるで荒らしが過ぎ去ったかのように、いままでの爆音は全くというほど無くなっていた。
  僕の家は、だいたい二百畳ほどのおおきさであり、建物があったとしてもある程度の運動はできるほどである。もともとは誰かが住んでいたが放棄されていた民家を、たまたま僕が不動産屋で見つけたのである。それを期に昔の家を、逃げるように去った。僕以外が誰も帰らない家である。両親は死んでしまい、ましてや兄弟すらもいない僕は、この家に来てからは、そこそこ快適な暮らしはできていた。まああの時の家と同じような大きな家ではあるけれど、なんだか不思議とここにいると落ち着く。しかしそんな家は、度重なるバケモノ達の戦闘によって更地へと変貌していた。まあ守刄が直してくれと言っていたのでまあいいや。それよりも、この前の敵を倒すことを考えるとしよう。
  俄然と、平然と、唖然と、漠然と、塊然と、卒然と、暗然と、躍然と、彼は立っていた、
  誰がどうとでもなく、誰がこうとでもなく、誰がああとでもなく、彼はそれは、立ちはだかる運命のように立っていた。倒せないという運命を見せているかのようである。
  そんなものは否定しなければ僕は、スタフェリアとは一緒にいることができない。それは自分でもよくわかっていた。このままでは駄目であると。それが言わずと知れて分かっていた。だけど僕はアニメの主人公のように突然と、能力が覚醒するようなことはない。たしかにそんな人柄でもなく、そんな役柄でもなく、そんな役割でもなく、そんな主人公のような人間ではなく、そんな才能を持っているような人間でもなく、そんなこの状況を覆すような能力を持っているだなんて、そんなことはない。
  どうすることも出来ない状況それがこの状況といっていることも僕にはわかる。ここでスタフェリアの力は借りたくない。これは僕の勝負だ。勝って見せなければならない。誰かのためでもなく自分のためにやらなければならないことだ。彼女のとなりにいるためにも。だからとして僕は、ここばかりは、この場面ばかりはアニメの主人公にならなければならないのだ。
  僕がやらなけければならない。こう考えるとプレッシャーに押しつぶされてしまいそうになった。ここはゆっくりと息を吐いてやれるのだということを自分に言い聞かせて、自信すらもやれるという感覚に意識改革させなければならない。できたら僕は、今一度このようなダメージを受けているにも関わらず、また勝ちへの執念がふつふつと燃えあがるだろう。まるで車に燃料をいれているように、僕は少しだけ目を瞑って、目を開けた。
  瞬間的な黙想であった。だけれど今の僕にはこの行動にある程度の、考えるだけの余裕を生み出すことができた。そして突拍子もなく、偉人は常識を破るという簡単なことを思いついた。
  ここでの常識、つまりは僕は彼よりも圧倒的に、力の差がある。もちろんそれは肉体的なダメージも合わせていっている。その差を利用すること……
  常識をひっくり返せ、常識をひっくり返せ、常識をひっくり返せ、常識をひっくり返せ、常識をひっくり返せ。僕は幾度となく心の中で唱えながら、ここで僕にできることを考え始めた。彼は武器を持っている。まるで人間の常識を超えたような重さ、そして大きさと、デザイン、異色さ。誰もが持てないような重さの武器であることはわかった。
  どうにかして、僕と同じ状況まで、奴の力を下げるか、僕以下にしてから僕は彼と戦わないと、全くとこのままでは水中で息をするかのように無理である。
  どうすることも出来ないということは、つまりは、ここまで彼らの戦いというものをひっくり返すということは、まず僕の装備品からして、無理な話である。
  僕の身なりの状況は、寝間着の格好そのままだ。あのまま、僕は戦いを始めていたのであった。それは突然の来訪であったため、このような恰好になってしまったのは、僕としては、とてもじゃないけどあんまりいいことではない。お気に入りの勝負パンツも、少しだけ、股間の上あたりが破れているのだ。まるで浮浪者であるというよりも、家が壊れてしまったため、本格的に浮浪者になった。ホームレス中学生ならぬ、ホームレス高校生である。いやいやこんなところでふざけている場合ではない。
考えてはみたが、答えは思い付かなかった。つまりはこの状況は全くと言っていいほど、僕にはどうすることもできないのであった。ならば答えは簡単でもあった、つまりはまた彼に対して、先ほどと同じような取っ組み合いを始めるべきなのである。
  アリが像に挑むようなものであった。でも…… やるしかない。
「行きますよおっさん…… 準備はいいですか?」
僕は何かを見据えるようにして、彼の顔をしっかりと肉眼に映した。
「ほう、何か策があるようだな」
こちらを見るとニヤリと僕の顔を見る。イノシシの顔をしているのに表情豊かである。
この状況下で、僕は、不思議なことに自身に満ち溢れたような、妙な、まるで薬をキメてハイに気分が上昇したように、僕はやる気に満ち溢れた。
  昔から、変なところで、やる気になる少年だった。ある日は、テストの終わった日に勉強をしようとやる気になったり、学校で居眠りを教師に逆らってやってみたり(ちなみにそのあと教室を追い出された)、多分普通の人からしたら、僕はおかしな人なんだろうと、思われてしまうのかもしれない。だけれどそれが僕であった。
ひとたび、大きな夜のひんやりとした春風が、僕らを包んで、足速く僕らから去っていった。まるで何かを洗うようにして、その風は通り過ぎていったのである。
  肌寒くもあり、僕の破れた服の間から、少しだけ温まった体を冷やすと、スーッと抜けていく。戦いという運動をしている僕からしたらこの風は気持ちいいものであった。
  彼もまた、トサカのような顔の中心に生えている髪の毛のようなものが揺れる。
今度こそ、彼に指摘されないような攻撃を、恥じない攻撃をやってやる。片手を失ったところでなんだというのだろうか。こんなところで弱気になってはだめだ。
スタフェリアといるためにも、僕はこの猪を狩る
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