僕と最強幼女と狂った世界
決着とケチャップ 9
体の損害の理解が始まったと同時に、僕はなされるがままに衝撃全てを左ひじだけで受けた。まるでハンモックをぶっ壊したように僕の体は、芯ごといとも簡単に飛ばされた。
  空中、綺麗なくの字になったかと思えば、すぐさま体は地面にずるずると引きずられたように後ろへと引っ張られた。まるで手元に帰ってこなかったブーメランのように地面を5メートルほど同じ体勢で滑り、陸上部がよく使うような、線目印のように僕の体で描かれていた。
  まるで一つの整備された道ができたように、きれいな僕の体ほどある大きな線であった。ここに僕の家のリビングがあったかと思うと、僕らの戦いがどれほどまでの破壊力を伴っているのかわかる。僕は左のわき腹を右手で抱えながらゆっくりと起き上がった。そして前文のような感想が思い付いたと同時に、僕の体がどれほどまでにダメージがあったのかそれが痛みとなってわかるほどであった。いいや痛みで思い知らされた。
  左手全体から劈くような激痛が走ってきたと同時に、わき腹に近い、折れた肋骨が動くと同時にお互いに突き刺さっているかのようなギリギリとした痛み、そして衝撃が頭にまで食らってしまったかのような、まるで車酔いに似た感覚効果と、血の全てをシャッフルされて体中に血液の凝縮体が移動している不快感、そして平衡感覚の狂いから生じる、大きく揺れて波の上に立っているかのようなエフェクトがかかっている。
  痛みのおかげなのか元のようには少しずつなっている。しかし気付けるような痛みではあるが、遅れてきたヒーローのような衝撃的な痛みであるため、また立ちくらみの類であるかのようなグラグラとした感覚がまた戻ってきた。
しかしここで倒れ込んでしまったら僕は死んでしまうだろう。僕は痛みに悶えながらも体をゆっくりと、亀のように体を起こしあげて、立ち上がった。舐めているのかつぎに攻撃をしなかったのはどう考えても彼が甘ったれであると僕はそう考えた。
「私の攻撃は一撃必殺の攻撃でな…… 起き上がる根性は評価しよう。しかしよ貴様、鬼であるにも関わらずその醜態はなんなのだ? 貴様はあまりにも弱すぎる」
そんな僕を見て、まるで拍子抜けであると言わんばかりの彼の物言い。それが彼の僕に対する評価であった。たしかに僕の左腕はもう、動くことはなく、だらだらと無駄な血が流れている。この力の違いというものは決定的な差であった。あまりにも呆気に取られてしまうほどに、展開が突然と地の底へと落ちてしまったみたいに、その差は短絡的であった。
  だけど僕はこの状況を変えることができると信じていた。それは強さが”決定的”であったからだ。ただそれだけであり、ただそれだけでもあったのだ。
  だからせめてものでも言い返してみる。
「鬼鬼って、確かに僕は天邪鬼ですよ。独白と実際に考えていることといつもの行動が、全くと違う人間なんですから、まるで僕のようなアニメのヒロインがいればとってもかわいいんでしょうけどね」
僕は彼の言葉を痛みに耐えていたため、余裕のないような返しになっていた。
「そうか…… では華憐の心の痛みのためにも、お前をいたぶることを考えていたのだが、そんな暇すらを与えずして貴様を倒してやろう」
ガンアクションのようにそのハンマーを体全体を使って、まるで自分の手足のように振り回すと、ハンマーの先を向けるようにして、僕を指した。
  あれほど柄が大きいにも関わらずまるで、軽い物体を持っているかのようなそんな有様を、彼の豪腕凄さを改めて見た。僕が持つことはできないだろうというくらいにそのハンマーは大きく、そしてとんでもないような衝撃であったことはこの身で受けて知っている。
  
状況というもはすこぶる僕の方が悪い方向へと傾いていた。それは僕の左腕が完全に使い物にならないような有様であったからだった。痛みというものは僕にとってはすぐになれるものであると、この状況を体感して改めてそう感じている。その干物の前の状態のような左腕を僕は肩の方から肉を潰して止血をした。上手く血が止まってしまったため、僕にとってはとてもいい治療法だとアニメを見ていてよかったとそんな感想が生まれた。
  それを不思議そうに見ていた彼は、僕の奇行に驚きながら関心をする。
「そのような止血をするとは、スタフェリアが一目置く存在というのはわかった」
何か解けないような問題を解いた、爽快な顔と声になりながら、僕の状況を見た。
  そしてそれと同時に一つの戦いが、終わったようであった。
  スタフェリアと華憐の戦いが終わったのである。彼女と意識をリンクしていたためスタフェリアが無事なことに僕は一安心をした。そして目の前に立っている男の顔は少しだけ歪んでいた。
  
「決着が着いたようだぜ、イノシシのおっさん」
僕はできるだけ彼にダメージがあると悟られないように、できる限りの演技で僕はそう言った。スタフェリアが倒したというのなら僕はこいつを倒さなければならない。
  ここで彼女の手を借りるのはナンセンスであると僕はそう考えている。だけれど僕にはかなわない相手だろうということもなんとなくだけれどわかっている。
  だから僕は、出来る限りに彼にダメージを負わせなければならない。
  片手を失っている僕にとっては、コロンブスの卵ではあるのだけれど、ここまでならやるしかないのだ。この僕と彼が組みあっていた時間で、スタフェリアが勝負を決めていたことに、僕は心の中で彼女が誇らしいと思った。そりゃあ相手が彼女にとってはそこそこの相手だったとしてもだ。いいやこの怪力男の子供がそこそこなわけが無いと僕はそう考えている。血筋は争えないようにとんでもなく強い人間なのは僕でもわかる。
  だって時折、すごい音が僕の戦闘の合間に聞こえてきたのだ。だから僕には彼女がどれだけの力を使って戦っているのか、だいたいがわかった。つまりはそこそこの力だろうと予測する。彼女が本気を出せばものの数時間で世界を亡ぼせる存在だと僕はわかる。特別そんな彼女を見たわけではない。ましてやパラレルワールドでの彼女の活躍を見ているわけでもない、そして昔の彼女を見ているわけでもなかった。
  それは感覚的にわかっていた。まるで彼女がここまですごい強いように。
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