僕と最強幼女と狂った世界
乱入
「こんばんわ、やっくん」
あ、ういっす。夜久は先輩の突然の登場に開いた口がふさがらなかった。
先輩、つまりは一二先輩が彼の後ろに立っていた。その姿は、着物を動きやすいようにスカートにしたものであり、まるで魔法少女と言っても過言ではないくらいに、彼女の姿は優雅で可愛かった。赤の振袖に、中地ははかないような薄い青色であり、帯は紺に近いような黒色であった。そしてショートカットを綺麗に止めているようなかんざしが、銀色白色と、歩くたびにちらちらと動き、きれいな光の反射を見せる。そして、彼女の一番のグットポイントは、白のニーソをしていたところであった。彼女の袖時とは全くないようなそんな綺麗さと名は体を表すような華憐さが、僕の中で湧き上がった。それがどうしようもないくらいに彼女の突然の変貌、そしてここに来ているのが僕にとっては不思議で仕方なかった。
彼女の手に持っているのは輝く石で装飾されている扇である。まるでコスプレをしてこの非日常な一場面に登場したかと思うくらいに彼女の格好は場違いなものであった。
「先輩ッ! なんでこんなところにッ!!」
僕は思い出したかのように彼女に向けて声を張り上げていた。
「それは、戦いが終わった後に(ハート)」
彼女は、僕にウインクと扇と口を合わせて投げキッスするように優雅に返事を返した。まるで先輩の裏の人格を見ているような、見てはいけないものを見ているような気もしているが、しかしながら、彼女の悠々と堂々としている様には、彼女の性格の一場面なのだろうとここは受け入れておいた。口からは視覚で捉えることができるのではないのだろうかというほどかわいらしいハートがでていたのであった。つまりはかわいかった。
「そこの、この余の戦いを邪魔しようなどと、結界士は仕事をしておらんな」
スタフェリアは、相座時之氏守刄のいる場所へと視界を移動させるが、彼は大きなあくびをかいて、彼女が自身を見ていることに気が付くと、両手を横に広げて首をかしげた。
「貴様の相手をするのはこの豚を狩ってからじゃ、おとなしく見ておるがよい」
スタフェリアは、後ろにいる猪男を親指で指して、そしてにらみつけるように先輩に言っていた。緊迫した空気が、辺りに馴染んでいき、数秒の沈黙のあとに大柄の男が発した。
「華憐よ…… なぜお前はここにいるのだ」
その声は何かを知っているが、しかし聞いてはいられないような声音であった。
「それは、私が魔法少女になったからだよ」
彼女は目の前に立っていた男に躊躇もせずそうきっぱりと答えた。
「なぜだ、お母さんの力を継承したんだ…… ワシが戦っている意味がないじゃないか……」男は目の前の現実をあまり受け止めたくはないと、手で両目を隠していた。
その悲しむような姿を見て、先輩――華憐は一歩一歩とそのイノシシのところへと歩いていく。そして手を伸ばしたら届きそうな距離に行くと。
「私はね誰かのためにこの力をもらったわけじゃない自分自身のためなの」
「そうか…… いつ、その力を貰ったんだ?」
「お父さんが出ていった1週間後の、ちょうど先月あたりだよ」
「ワシの……ワシのせいなのか?」
「そんなことないよ、私は自分のためにここに立っているの」
彼女は今にも泣き崩れそうな大柄の男を慰めるわけでもなく、ただありのままの真実を語っている。しかし彼にはあまり聞きたくはなかったことなのかもしれない。
  それはその顔は、悲壮に満ち溢れていたからである。
「あのスタフェリアさん」
「……」
彼女はスタフェリアの名前を知っていたようで、話しかけるのに躊躇はなかったようだった。
「あなたのおかげで、ここら一帯にいた下級の空間憑依生物の出現が減っていました。ここはありがとうと言うべきですね。ありがとうございます」
「異端の王にして、絶対の翼竜には周りにはチリ一つ残らんのよ。貴様、それでさえこの余に喧嘩を売ろうとしておるのか?」
「いいや、戦いや不祥事があるのならそれを止めるのが、魔法少女の務めなんです」
「――ほう、これらの戦いを止めると、その罪は計り知れないものになるということは貴様は承知の上で、この絶対なる余の目の前に立っているということじゃな?」
「はい、その覚悟はありますよ。このままの下級の憑依体がいない状態が続く状態ですと、この地は大変なことになります。そのために私はこうしてここにいるんですから」
彼女は、それは淡々とまるで一二先輩とは思えないような、普段見られない彼女の真っすぐとした、性格の一端を彼女から感じ取っていた。彼女がどれだけの覚悟を持って魔法少女になったのか、夜久には目を見張るような出来事であった。
  しかし、魔法少女というものが、彼には理解ができなかった。彼女が言っていることつまりは下級の怪異を倒して、そして争いや不祥事を防ぐというところまでは理解ができた。しかし彼女が、本当にそういうことをしているという、その突然と事象が召喚されたような、前振りもなく…… いいや彼女のおばあちゃんが何かを知っているかのような口ぶりであったのは僕には思い出して理解ができた。つまりはこれはおばあちゃんは、彼女がそのようなことをしているということを含めて、受け入れられることができるのかと、あの質問で言っているような気がしていた夜久であった。
  ――しかし、僕はスタフェリアが何倍も大事であると、そう思っているよおばあさん。
「一二先輩…… 僕は」
「わかってる、君の言おうとしてることはわかってる」
「僕は、どうなろうとスタフェリアの眷属ですよ」
夜久は押し切るようにして、彼女にその真実に似たそれを言い放った。
「やっくん…… わかってたの。あなたが私のことを見ていないってくらい」
彼女は、押し殺すようないや叫ぶような声を発していた。
「…………」
夜久は何も答えることができずにただ彼女を見ることしかできなかった。
「だからッ! そんな思わせるような行動はしないでほしかったな……」
彼女の表情は見えなかった。しかし彼女がどれだけ悲しくなっていたのか夜久にはわかっているようなフリをした。そして畳みかけるようにしてさらに、「でも私が悪いってことは、わかるの。あなたがその人と一緒にいることができたらいいなって考えて行動していることがわかっていて私は近づいた。それでも…… それでも。私はあなたと話をしてみたかったんだよ」だって同じような遭遇の人には興味が沸くでしょうと彼女は付け加えていた。今も彼女の顔は確認はできない。前髪が彼女の表情を隠していた。そして、
「うれしかったよ、私の家に来てくれて、魔法少女の私に、人なりの青春を味合わせてくれて。私はうれしかった。たとえ私のこと見ていなくってもうれしかったッ!」
だんだんと絞り上げるような声になった。僕は見ていられなかったという表現を使うようにして彼女から目を背けようというフリをしようとして、そしてすこしだけ頭を働かせるフリをして、彼女をしっかりと見るべきだとそういう考えになった。そして彼女を、今にも崩れそうな彼女を見た。いいや何かを決意していた彼女であった。
「私は自分のために、あなたたちを倒したいと思います。私のお父さんの味方につきます」
彼女は、僕をにらんでいた。
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