僕と最強幼女と狂った世界
一つの決着
夜久は何度も何度も、それはざあざあと降り注ぐ雨のように、重ね重ね重圧なるパンチを打ちはなっていた。回数は全くと分からずじまいな、無数のパンチを両腕を防ぐようにしてタスクは後ろに移動して威力を軽減しながら防ぐが、全くと止むことのない、梅雨の雨のような攻撃をただただこらえにこらえていた。
  腕は相手からの攻撃を後ろに移動することによって、威力を縮小しているが、それにあまり意味はなく、掠るだけでもかなりの威力を誇る攻撃に、どうすることも出来ない。
  夜久は次第に体力が尽きつつも、絶えずその連打を止めるという発想は浮かばなかった。彼を倒して、彼女の援護をするために、早くこの前の敵を倒さなければと、攻撃の中ただ冷静に考えていた。
  タスクの顔面を防いでいた腕は、とうにボロボロとなり、血は滲み、夜久の両手は地に染めた拳となっていた。まさに鬼のような振る舞いにタスクはその冷静な顔のギャップで驚きつつも、激痛をひたすら耐えていた。
  ここで終わるわけにはいかない、しかし一歩出れば彼のとんでもない威力の一撃が、自身の肉体を豆腐のように粉砕するだろうと考えるタスク。
  一方的な攻撃の中、夜久は無心で一撃一撃と食らわせれば確実に彼が壊れるだろうと確信した。それは彼のまっかな腕から白い腱のようなものが見えていたからだ。
そして痛みのせいなのか、段々とタスクの行動が鈍くなっていると気づいた夜久は、ふさがれた腕ごと、胸に大きな一撃を食らわせようと、大きく振りかぶった。
  その刹那。
  タスクは、左肩から倒れ込むようにして夜久の方へと、体を倒し始めていた。勝利を確信した夜久は、小指から人差し指にかけて力を入れていった拳を、タスクに叩き込むようにしてブッ放った。夜久の体からねじれるように、放たれた手は、真空ウェーブのような空気を捻じる現象が起こった。あまりにも早いパンチにそうなっていたのだ。
  タスクは、それを狙っていたと倒れ込む動作を夜久が、拳を振り切ったと同時にカクッと早くしていた。当たる位置を胸ではなく、肩にずらそうと考えてのことだった。なぜそのような行動に出たのか、それは後になって知ることになるだろう。
  夜久は、相手が動いていても何降りかまわず肩へと攻撃を当てていた。狙っていたところとは違っていたが、まあいいと当たる直前で考え、その倒れ込んできた体を衝突するトラックのように押し返した。
  タスクの体は、肩関節の腕に出ているところに当たった。しかしながら、夜久の攻撃は普通のパンチの威力ではないため、肩の関節はものすごい速さで、引きちぎられるように、まるで畜産生物の雑な解体作業をしているような肩になり、そんな肉と骨の物体は、それは枝を折って引きちぎられたかのように、体と一緒くたに飛んでいった。
  先に腕は、地面に転がって、本体は左回転で回るスケーターのように駒となって吹っ飛んで、勢いが無くなった頃には、地面に鉛筆のように転がっていった。
  バタ、バタッ。と回転し終わって、タスクの体が仰向けになったとき、殴った腕を降ろした一人の鬼はこう言った。
「君の負けだよ」
非常で無常に、無関心に冷たく、ただ一つの同情もなく、まるで当たり前だったかのように、天野路夜久が天邪鬼であるように、この心がスタフェリア以外には無関心のように、この存在がスタフェリアにしか向かないように、この存在がスタフェリアのためであるとと思っているかのように、いままでのその存在が、心が、ありようが空っぽだったように、それは淡々と、手もなく、訳なく、軽々に、難なく、苦も無く、安々と、むざむざと、すんなりと、事もなく、そう言ってのけた。
  目の前の敗者は意識が戻ったのか、思い出したかのように口から血を吐いた。
  ゆらゆらと揺られながらもボロボロの右手を使って、ゆらゆらと頼りが無さろうに上体を起こそうとしている。人の字の支えの棒を無くしたような男であった。
  それを見ていた鬼はとどめを刺そうと、その男のところへと歩いていく。鬼の心には目の前の男には同情の一つは全くと無かった。なぜなら彼の心は空っぽであったからだ。
  それは、全だけに全てを捧げている空白の人物である。
  いやただの鬼畜であった。
一歩一歩と近づいてくる、一人の男をタスクはここまでダメージが食らうのかと考えていた。それは体の節々が戦えないと命令を送っていたからであった。別に目の前の化け物におびえているわけではない。戦える気持ちは確かにあった。しかしながら体は全くということが聞かなかったのだった。
  それでもダメージを受けすぎからか、指先の感覚が無い右手で立ち上がろうとしていた。徐々に体が動いたころには、目の前の化け物は歩を進めている。前のめりに体を倒して、地面をはいずり進んだ。この状況を覆すただ一つの武器が3メートル先に転がっているからだ。
  予想よりもはるかにあるダメージに理不尽な感情が駆け巡る。決意する前のパンチは手加減をしていたからだろう、目の前の化け物の本当の力を知らなかった。ジャブでさえ攻撃を受け流して力を探っていたため、本当の威力は全くと違うものなのだ。なんでこうも簡単なことに気づかなかったのだろうと、彼はそう後悔していた。
  それでも、確かに彼の目の前の、希望を取るべく体全体を引き吊りながら移動した。いつか言っていた、這いずりながらでも進むと言っている彼。それに彼は思い出して口元が緩む。そして段々と目的であり、希望でもあるただ一つのモノが届く範囲まで移動していた。
  そして数十センチといったところまで進んできたころ。
  それは虫を見るようにしてタスクの顔を見ていた。
それに気づいたのだろう彼は、残りの力を絞るようにしてウジ虫のような移動を早めいていた。それを夜久はただ見ている。
「ここで…… 終わるわけには行かねえんだよぉおおおおおお!!」
彼が、タスクという存在が掴んでいた、手に持っていた、夜久に向けていたものは、銃であった。彼がここまでして隙を見せて、大きなダメージを負ってまで手に取ったものは銃であったのだ。
  それに夜久は何かを思うわけがなかった。
  彼が言葉を発し終わったと同時に、彼の頭を卵を殴り潰すようにして、粉砕させた。スイカに強い衝撃を与えたように中身の物体が、ぷしゃーとまるで噴き出るようにして白く赤い物体と、ぶよぶよしたピンク色の物体が夜久の顔に掛かった。それでも彼が復活してしまいぞうだと念には念を入れて、何度も、ぴゅうぴゅうと音が鳴るまで殴り続けた。
  そしてあっさりと倒してしまった余韻も感じさせずに、次はスタフェリアのためにと彼女が戦っている場所へと向かった。
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