僕と最強幼女と狂った世界
ぱいせんにちじょう5
「ご飯できたよ!」
一二先輩の声が炊事場から聞こえてきた。居間に微量ながらに匂って来るのは、マーボー豆腐の唐辛子と甘辛い匂いであった。
  このまま座って待っているのは、他人の家に入り込んで座っているのも気が気では無くなってしまうので、僕はできた料理を居間に持ってこようと、ふすまを越えた台所へと腰をあげた。
「座っててもいいんだよ」と先輩のおばあちゃんは言っていたが、そういうわけにもいかない。と考えつつも、先輩のエプロン姿も見て見たかったのだ。
居間と大所を仕切っている臥間のカーテンを抜けて、台所を一望した。十分に掃除の手が行き届いているほど綺麗なキッチンであり、彼女は僕の右の近くにあった冷蔵庫から何かを取り出そうと、中を物色していた。
「先輩、できたものを持っていきますね」
いいよと返事をしながら、ドアでお尻をふりふりと漁っている先輩を横目に、彼女の後ろにあった机にある食品たちを居間へと運んでいく。
  先輩は中学の頃に来ていただろう皆木中のジャージを着ていた。少しサイズに合わないのかダボダボしてるが、お尻を突き出すようにしているため、エプロンと合わさってベリーグットな、肉付きの良いふっくらとした体つきであることが、この弾力性がありそうな腰回りからわかる。そしてエプロンは、先輩の高校生と中学生の成長期のあどけない、あまずっぱいあの体の形を一心に纏っていたため、僕はちょっとばかりか、凝視してなんとも僕はこのような趣味があったんだなと、自分を客観視しながらなんとも言えない気分になりながら、マーボー豆腐を居間へと運んでいった。
先輩はエプロンが似合うなとそんなことを思いながら、ちゃぶ台にマーボー豆腐を置いて、そして台所へ帰ってくる頃には彼女は、冷蔵庫と炊事場の真ん中にある炊飯器から、ご飯を注いでいた。その横から見える姿は、どこからか彼女から、あどけない(この表現は失礼だな)姿から母性を感じさせるような印象があった。なんともとんでもない自身の性癖を発見したような気持でいっぱいになりながら、彼女はその横顔を見せて、一つご飯をいれると、手に付いたご飯粒をペロリと彼女は舐めるように拝借して、そして僕に気が付いた。
「ごめんね、せっかくごちそうさせようと思ったのに運ばせちゃったりして」
彼女は小さく会釈して、そう言った。先輩の口元にご飯粒が付いているのを確認した。
「先輩、ほらここに」あらまお茶目さんだなと思いつつ、僕は彼女のほっぺたの下あたりについている、ご飯粒を僕の顔を使って指をさした。
「やっくん、とってくれるぅ?」
彼女は僕の方へと顔を近づけて、ご飯粒のついた反対側のほっぺたを近づけた。
「わかりました」と言われるがままに彼女のほっぺたに付いたご飯粒を取って食べる。
「反対側だったねぇ」と彼女は笑い、僕もまた一緒に笑った。
小話も終わった後で僕は先ほどの会話の続きをした。
「いえいえ、僕は他人の家でふん反り返ることができないんですよ」
小物ですからね、と僕は小さく笑って、彼女が入れていくごはん茶碗を両手に抱えて持っていく。彼女は味噌汁を一つづつ持っていくようだ。
  僕は一通り終わったと確認して、彼女がお茶をいれている急須を持ってきたところで、ちゃぶ台の席へと座った。おばあちゃんは、いまだテレビに夢中になってガハハと笑っていた。そして先輩がおばあちゃんの目の前へお茶の入れた茶碗を持ってくると、「やっくん、ありがとね」と言って、彼女は、足先を立てている膝をついた正座をしながら、僕の分のお茶をいれた。
「沖縄のほうじ茶って言うんだけれどすっごい美味しいお茶なんだよ」と彼女は僕の方へとお茶を置いて、そう言い終わると、エプロンを脱いで席に着いた。
「たしかに、スッキリとした変わった匂いのお茶ですね」一つ匂いを嗅いだ後に僕は、そんな感想を呟いて、一口飲んだ。若干苦みの無いミカンの皮を薄めたような味わいに感動して、一息ついたところで、三人は合唱した。
「先輩ごちそうさまでした。料理おいしかったです」
春の夜。風が鳴りつつ温度は少しばかり肌寒い。辺りは、薄暗い雰囲気からは見違えるように、漆黒の世界となっており、これから夜の世界が始まるんだと、知らしめるようにそれぞれの民家はホタルの光りのようにポツポツと家の照明から光りがあった。食事を終えた俺は、先輩の家を出た後、玄関の前で彼女と駄弁っていたのであった。
「ありがとう、いつものように簡単な料理だったけれど気に入ってくれたみたい」
彼女は、店のドアから身を出してそう答えている。
「いえいえ、なかなか凝っていておいしかったです。今度レシピとか教えてください」
「ふふ、あれはね、市販で売っている元を使っているだけだよ」
「そうなんですか! でもほんとうに店にある本格的なマーボー豆腐の味でしたよ」
「もういやだ! そんなに褒めないでよ」
彼女は冗談に反応するようにしていた。いや本当に美味しかったのにな。
「そういえばところてん!」
「そういえばそうでしたね」
彼女は思い出したかのように、ところてんを僕にあげる約束を思い付いていた。
  そして慌てたように後ろに広がっている商店コーナーを一望して、段ボールが引き締められている奥の方へと歩みを進めて、一つほど、ほどよい大きさの段ボールを抱きかかえて持ってきた。彼女はバレー部に所属していたため、筋肉はスタフェリアと契約をしていた時の僕よりもあるんだろうなと予測してみる。
  ん? スタフェリア!? まて、彼女の食事の用意を忘れていた……
  うおおおおおおおお(モ〇スト)ではなく、うわあああああああああああああああ。どのような言い訳をしようかと考えながら彼女が持ってくるのを手伝うためにも、彼女のもとへと駆けて行った。ああ畜生、この時間つまりは午後八時、もう三十分ほどしたら彼女の寝る時間でもある。だいたい戦闘が無い場合の夜は寝ているのだ。
「先輩、早く帰らなぇればならない用事を思い出したので、今回はこのあたりで」
彼女がうんとこしょ、うんとこしょと持ってこようとしているところまで走ると、一言言って彼女の持っているところてんが入った段ボールを片手で抱えた。
「あ、ああわかった。って! やっくん力持ちだね」
彼女が僕の力に驚いているのも、僕にとっては、彼女のスタフェリアの怒りの優先度が勝っていたため、ここで頭をひょいっとすぐに浅く卸して、すぐさま商店のドアを出た。
  ダッシュで近くにあった販売機間まで走ると、後ろから「またきてもいいからねえ!!」と彼女が叫んでいるのが聞こえた。
「はーい、本当にありがとうございましたぁ!!」
後ろを向いてペコリを頭を下げた。先輩とおばあちゃんが、健気に手を振っていたのが見えたので、僕も同じように返して、自宅へと駆けだした。
  あー食事代浮いたな。
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