僕と最強幼女と狂った世界

土佐 牛乳

束の間のきゅうそく


「ただいま」

 自宅に付いた僕は、ゆっくり居間のドアを開ける。スタフェリアはまだ起きているのか、ドアから部屋のライトが照らしていたため、ごくりと唾を飲み込んでドアを開けた。

「スタフェリアさーん」

 と、小声で部屋を覗くと、ソファーの上で一人の少女が眠っていた。体を横にして服から腹を出して、ちょっとだけ浮き出て見える露骨と、きめ細かなスベスベの肌をした腹部。そして梅の頭のような小ささのおへそ。しかし、そのようなかわいらしい容姿をしているにもかかわらず、口から出ている吐息は、まさにドラゴンのような豪快な音を出していてる。ここだけ除けば完璧なのになあと僕は思っていたのであった。
  近くによって、頭を撫でた。その全てを従えるような色をした銀色の髪は、さらさらと水のように僕の指の間を通り抜けて、さらこの髪の匂いには、どこか遠くの異国の香水の匂いの印象がある、このさわやかな香りが僕とスタフェリアの空間にあった。彼女は風呂に入らなくとも、常に清潔な状態でいることができると言っていた。なんともまあアニメキャラのような便利な能力だなあと彼女を見てそう思った。

「うむう…… くるしゅうない…… くるしゅうn……」

 むにゃむにゃと彼女は鼻を擦ってそんな寝言を言いつつ、仰向けに寝がえりをうった。
  僕はこの光景に、少しだけおかしかったのか、その様子を笑う。
  それから、彼女がいつも寝ている寝室から毛布を一枚持ってきて、彼女に優しくかけてあげた。肌寒い気温なので、彼女が風邪をひかないためにも毛布は必要だと思った。彼女が風邪をひくのかは僕にはわからないけれど、やっぱりほおっておくのも僕にはできない。
  考えてみれば彼女とこの家に暮らしてもう一週間という時間が流れている。たったそれだけの時間が経っているにも関わらず、なんともまあ僕と彼女はこうも慣れっこな関係になってしまっているなと考えるが、やっぱりなぜか彼女と気が合うのかは僕にはわからないけれど、こうもべったりなのは多分気が合うんだろうなとわかる。
  やっぱりどんな相手と一緒にいても、彼女、スタフェリアと一緒にいる方が安心するなと、そう思った。多分、僕が彼女のことが好きなんだからとそう感じているし、やっぱりそうなんだろうなと自らのスタフェリアとの接し方などを鑑みてわかる。
  それから僕は、テレビをつけて、冷蔵庫の中にあるもので簡単に作って彼女の目の前にラップをしておいていた。お腹が空いている彼女が夜中の途中で起きて、寝ている僕にせがまれてもきついものがあるので、しょうがなくも、明日からはちゃんと彼女に料理を作るべきだなと思った。何よりも、この台風のあとのように荒れに荒れた台所が、彼女が料理を頑張ったと推測したからだ。三食分作って、冷蔵庫にでもおいて、レンジのやり方を教えておこう。こうなると彼女の好きな肉を作るべきだなといろいろと忙しくなるな。制服のままでしばらく洗い物をしたり、目の前のぐちゃぐちゃで汚れた皿などを洗った。
  そして風呂に入り一日の汚れを落とすと、上がって彼女の頭の上に腰かけた。
  いびきはなかったもののスースーと鼻息を漏らしており、僕には先ほどのドラゴンのようないびきから小動物に変わっており、印象ががらりと変わっていた。
  こう静かにしている彼女は、年齢相応の品格と容姿で、全く別のキャラクターになるというものだ。なんでこうも黙っていないんだろうと考えるけれど、いやしかし、やっぱり僕はおしゃべりで、横暴な彼女のことが好きなんだなとやっぱりそんな考えがある。
 僕が他人を引っ張るような人間ではないからでもあったり、やっぱり彼女のような芯がしっかりしすぎて芯だけでできたような人間だと、僕のような中身のなく、芯もない人間からすると、彼女のような駒の軸のような人間はやっぱりいい合性ではないのかなとそんなことを考える。合性の問題と言われればそれだけで終わるんだけれど、しかしながらやっぱり僕は、恥ずかしながら彼女と生涯を共にしたいなとそんなことを思っている。
  彼女が生涯このままの姿でも僕は愛せると思った。一緒に入れるだけでも僕は幸せだと思っている。なんだか僕は、とても恥ずかしいことを考えているのかもしれないけれどそれは隠しようもない事実でもあり、今僕の中にあるたった一つの芯でもあった。
  それから僕はいつの間にか、彼女を抱きかかえるように、狭いソファーの中、一緒になって寝ていた。まるで子供を抱きかかえるように、僕は年齢一万二千歳のロリと寝ているという何ともまあ、ラノベ主人公顔負けでもあるようなそんな展開だったけど、そんなことを意識することもなく、僕は彼女と添い遂げるように就寝した。
  今日は疲れた。


 部屋も暗くして、僕も彼女の吐息につられてウトウトとしていたら、彼女の口からポツリとそれは、熟した果実が木から落ちたように彼女は、僕の耳元でそう呟いた。

「寂しかったんじゃぞい……」

 僕は、その言葉で胸がぎゅーっと締め付けるような感覚があった。そして四分の一は彼女がこんなにも寂しがりやなんだと意外な一面を見た驚きがあった。

「ごめんな……」

 僕はゆるく少しだけ彼女に回していた腕を、彼女をしっかりと包み込ませるようにして体全体で抱きしめた。彼女の華奢なすこしだけ細身のある体が、僕の体のあちこちに当たり、だけれど、彼女がそうして欲しいと、察した僕だったので、やったのだった。
  彼女の独特な匂いが、僕の体を動かしたことで布団の中でまとまった空気となって、僕の鼻を刺激して、そして僕はそれらすべてが好きである僕は、彼女とずっと一緒にいたいとそう思えるその瞬間が、確かに、絶対にして、僕中で確固たる決意として芽生えた。

コメント

コメントを書く

「その他」の人気作品

書籍化作品