僕と最強幼女と狂った世界
絶対的天秤にて
「ちょっくら、本気のこの余の力を見せなければならんとはのう……」
後方からの噴き出た血で、背景は火山の噴火のようである。腕は胸辺りで組み、歳端行かぬ幼女のような体形をしておりながらも、凄まじい存在感で、誰もが頼れるといった感想が生まれるほどに、それは、偉大であり、大きくもあり、毅然とあり、威風堂々であり、赫々たる存在感を解き放ち、まさに全てを統治する一つの力、生命体を垣間見るような凄まじい登場であった。
「夜久よ、お前はここで見ておれい、体力回復をするのじゃぞ」
と、言い彼女は、とある方向を眺めると、ニヤリと口を動かせたと同時に鼻で笑った。彼女が初めて名前を言ってくれたこがうれしくなりつつ、夜久はその言葉で、彼女がしっかりとこの世界にいることに感動が体中から安心感として脱力した。そしてその言葉に疑問が浮かぶと、夜久は質問を投げかける。
「な、スタフェリア! いきなり何を言っているんだ!」
「そのままの意味じゃよ、心配かけてすまんのう夜久。ワシはこの通り大丈夫じゃ」
唖然として、地面に膝を付けている夜久を、上から目を合わせるだけで包み込むようにして、最小限の動きで、顎をあげながら横目でそうやさしく呟いた。そして顔の目の前まで手を持ってくると、数回ほど手のひらを握ったのを確認し、彼女は神祖の集団をしっかりとギラリとして肉眼で一人づつ認識する。
  離れた場所、神社の鳥居の上にて。
「そうかまさかそんなことができるだなんて、とんだ認識不足だった。まさに不覚だッァ!! これは赤点に匹敵する壮大な見落としだ。まさかこのような展開になるとはッ!!」
鳥居の上、一人その男が頭を掻き驚いた顔でありながら、その光景に声のトーンがあがっていた。
「この女の子は、”無”なる彼を、『天野路夜久』を、初回にて食べていた。要するに無の取得は、すでに、とうに、いつの間に済ませていたのだ。無を取得。それすなわち、”存在そのものを消す”という彼らの効果は受けず、”無 ”からの再生もまた、可能となったのだ。まったくこれだからこの僕の”役”はやめられない」もしくは、”夜久”を眺めている(観察)はやめられないね。と彼は言った。自身はその言葉遊びにうまいと思っているのか、はたまたこの光景が面白いと思っているのか、口から白い歯が見えた。
すぐさま、彼女彼らの場所へ移動すべきだと考えた相座時之氏守刄は、軽快な動きで鳥居の上から飛び降り、草木を空中をジャンプするように越えた。
場面を戻し、神社前スタフェリア。
「ハアッ!」
また掛け声とともに一人と、頭を粉砕させその力は、存分に今までとは違うと夜久はそう彼女から見て取れた。彼は、彼女の言うとおりに今は、体力回復に全てを使っていた。
アメリアを囲むようにして、四人の黒尽くめは陣形を取った。
「四人とて貴様に勝つ算段はある!」
四方から同時に発せられた勝利宣言のようなものを彼女は、聞き流しまた一人正面に立つ男にターゲットを振り絞り、クラウチングスタートのような移動をして、距離を縮めた。
「たかが、四人じゃろう!!」
目にもとまらぬ無数のパンチが、彼女の両手から放てられた。それを反応した後方の三人は同時に、ピストルを構えて放ち、そしてスタフェリアの正面に立っていた男は、ヘイトを上手く集めるようにして、彼女との距離、そしてパンチを躱す。
「貴様の行動はすべて読み切っているッ!」
いい終わると同時に後方からの銃による爆音がスタフェリアの耳から入ってきた。
  後方からの攻撃に気づいたスタフェリアは、すぐさま『輪廻する世界』の力の一つ、『逆転する事象』を発動して、その攻撃を全て跳ね返し、神祖達は、跳ね返された弾に反応処理速度が肉体の限界を超えていたため、後方の三人は見事なまでにおでこの中央辺りに当たり同時に消滅。
「馬鹿な、反射速度まで自由自在に操れるとはッ!」
神祖は、偽神祖とは違い肉体のある程度の強化はされているため、弾を跳ね返す予測までは出来上がって、次の動作までのプログラムができていたものの、速度までがここまで早いとはさすがの彼たちも、反応ができなかったのだ。それは、彼女が新しく肉体を現改させていたため、通常の『輪廻する世界』は強化されていたのである。
まさに計算狂い。狂いに狂って、それは大きく空振り。サングラスの上からでも大量の汗で、焦りがわかるその神祖の顔は、後悔と絶望で埋め尽くされていた。
「チェックメイトじゃ。いくら計算高くても、しっかりと調べることができたなら、この余に勝つ算段はあったじゃろうて……」スタフェリアは今までに開いてしまったその距離を全速力で詰め、こう言った。
「まあその計算つくされた上にいるのも、最強にして、最凶にして最恐にして、最恐の、このスタフェリア・アブソリュータ・ウロボロウスじゃがな」スタフェリアは大きく、その拳を振りかぶり、その小さな体は全てを潰さんが如く覇気を放っていた。腕からは全てを統べる竜のオーラが纏っており、見る者すべての行動を文字通り”統べる”すなわち、体の自由を無くすことができるのであった。それもまた『輪廻する世界』の力の一つ、『翼祖竜の眼光』である。
「おのれえええええええええ、バケモノめがああああああああああ!!」
絶叫。
足と地上に針金が通っているように、その男は体が動けずじまいであった。
  その刹那、腕を振り下ろすそのタイムラグのような時間の中で、双方の間から何かが、出現。いやそれは突如として、その空間に割り込んできた。
「やあ、諸君」
パァアン! とそのスタフェリアの力を無理矢理解いたような音、そしてスタフェリアの凄まじい筋力をその片手で受け止めていたのは……
「どうだい?調子は?」
相座時之氏守刄であった。
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