僕と最強幼女と狂った世界

土佐 牛乳

拭えるわけがないが決意してみる



 一メートルはあるかという草の波を、ただ真っすぐに、昨日の道を確かめるようにして、だんだんと、神社の鳥居が五〇メートル先に見える位置まで、来ることができた。

  草は、石敷きの間からも、生えておりまさに、浦島太郎のような気分が、個々の場所だけでまるで未来に来てしまったという現象そのものが、存在してしまった蚊のようでもある。手の付けられていたない敷居は、つるで石像部分を覆い隠しており、草の敷居と言われても納得してしまうくらいである。手の付けられていないというわけでもない。この前の戦闘のがれきの破片たちが、いまだに直ってはいなかったからである。

  しかしながら、こうも草が生い茂っているのはなぜだろうと、僕は考えた。時間が進んでいるからか、それともそういう類の力がここら一帯に張り巡らされてしまったのか?

 その答えは、こいつが知っていた。

「やあ夜久くん、こんなところで会うとは奇遇だね」

 鳥居の上に要するに僕の上直情に立っていたのは、相座時之氏守刄だった、
  彼は、口にお札のようなものを咥えていて、片足だけで立っていた。
  まるで彼の周りだけ、二〇センチほどの空間は、何かの影響されていないのか、草が彼の周りに円形状の見えない壁があるようにして、伸びてはいなかった。

「君もこれを使うといい」

 マジシャンがトランプを投げるようにして、何かの紙を僕の方へと投げた。
  真下にいた俺は、すぐにキャッチをして質問をする。

「これはいったい何に使うんですか?」

「口にくわえるだけでいいよ。気を付けないと君も歳をとっちゃうよ?」

「(何を言ってるんだこいつは……)わかりました」

 疑ってはいたが、彼の言われるがままに、言う通りに、くちびるでこの紙を咥えた。何も起こるこてゃなく、ただ、加えているままの状態で、鳥居の上まで登った。

「スタフェリアを見ていませんか?」

 僕は登りながらスタフェリアの行方を彼に聞くことにした。

「静かに、ほら見てごらん」

 そこに広がっていたのは、スタフェリアと、一人の男が戦っている神社の敷居内で会った。二人は遠くからでは捉えることができないような速さで、戦闘を行っている。それ自他はいいとして、まるでこことあちらは別次元のようでもあり、別世界、異世界に来てしまったのではないかというほど、非日常、つまり言ってしまえば、あまりにも風変わりな神社の変貌に、僕はただ驚くしかなかったのである。それは何百年も、誰も手が付けられていないようでもあり、要するに、ここの空間が、先ほどの推測通りに、時間だけが、足速く僕たちだけを置いて、進んでしまっていた。それはどうしようもないことと、頭の片隅でも入れて、彼女の今までいきさつを彼、相座時之氏守刄に聞くことにした。彼は戦いを取り仕切る者だと、自ら言っていたはずなので、僕にとっては、こいつはただの傍観者と言う認識でもある。

「ここら一帯が、どんな力でこうなったかは、粗方予想はつきました。ここまでのあらすじを教えてください」

「彼女がここにたまたま通りかかって、彼もまたここをたまたま通りかかった」ただそれだけのことさと彼は、そう呟いた。「君も、たまたま通りかかって、彼女から”力”を貰った。ただ”それだけ”のことであり、ようするにこれらの戦闘も、”それだけ”のことだよ」彼はさも当たり前のように、それも滝から流れ落ちる水のように、それもさあさあと降っている雨のように、それも天才が孤独を愛するように、それも平平凡凡と、それも簡単に、それもどんな拘りもなく、恬淡として、超然として、淡々と答えた。

「意味が解りませんよ」

「分かるわけが無いさ」だって運命ルールだものと彼はそう答えた。

「……」

 僕は黙ることにした。そして、彼女が、僕の役目。つまりは僕が決闘をするという役割を奪ったことに僕は腹を立てた。いやこれはただの八つ当たりである。しかしなが僕は、これらのことを分かっているにもかかわらず、頭の中では理解しているのにも関わらず、腹の中で自分のしていることがどんなに卑怯であるか、腹どこのむかむかの体の調子て分かっているにも関わらず、八つ当たりをやめなかった。なんて傲慢な人間なんだろうかと僕は自分を客観視して、そして彼女を憎んだ。

「ふんッ。君、本当は何も思っていないだろう。人間のフリをするなよ”バケモノ”」

 蔑むように彼はそう僕に言い捨てた。
 彼の言っていることが理解できなかった。

「……彼女はもうすぐ死ぬだろう。そして君の契約もなかったことになる。そして、君は晴れて自由の身だ」

 彼の言っていることが理解できなかった。

「もとから、いや彼女がジークフリードが来ると気づいていた時から、死ぬとわかっていたんだろう」

 彼の言っていることが理解できなかった。

「なんて君は、なんて馬鹿で愚かで救えない存在なんだい?」

 魔が差したどころか、自分のやっていることに僕は驚いていた。それは気づけば彼の首襟をつかんでいたのだ。そしてその怪力で鳥居から落とそうとする。

「ほら、鬼のように狂喜乱舞、しかしながら、君の中身はそこの壊れたツボのように空っぽだ。ようするに君は虚勢だけで、僕を掴んでいる」

 沈黙が、僕と彼の中で流れた。僕はただ頭が真っ白になりながら、理性だけで彼を掴んでいた。つまるところ、それは正解であった。

「……僕はどうすればいいんだ」

 すりきれるような絞りだしたかのような声で僕は彼に聞いた。もとから何もないような人間なので、絞るもクソもありはしない。だけれど、僕はそうやっているようにやっていた。

「フフッ! 面白い。ヒッヒッヒッヒッヒッヒッ!」

 彼は空中でぶらぶらになっているにも関わらず、僕を見て笑っていた。

「甘ったれるな畜生がァ! 自分で考えて行動しろ!」

 激怒。
 それは至極全うで、しかしながら、それは僕にとっては大正解でもあり、それもまた全てを見透かしたように、それは、僕のこの状況下ではかなりの図星であり、僕にとっては聞くに堪えないものであり、そして、それはぐさりと、僕の空っぽの心にささりもしない答えであった。

「まあ行動をしなけらば一生後悔するよ、いや後悔すらする心が無いか。こりゃ傑作だ」





 ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは。

 彼は腹を抱えるようにして僕を笑っていた。
  彼を殺すべきかと考えていたが、その長い笑い声で頭が冷え、それを鳥居の上に置いた。

「どこにいくんだい?」

「スタフェリアを救いにですよ、それ以外に何かありますか?」

「ひゅーかっくいい! まさに狂言鬼、全てが模範行動!」

 僕はできるだけ考えないようにして、しかしながら、天野路夜久あまのじゃくでもある僕は、寸分でイラつきながらも、彼女のもとへと向かった。結末なんて変えられるんだと僕はそう信じているし、いつもそうして変える存在に、物語の主人公にあこがれて生きてきた。




それが僕であり、そして僕であった.

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