僕と最強幼女と狂った世界

土佐 牛乳

時代錯誤のおっさん


 家に帰ると言っても、昼飯と晩御飯の買い出しを今週はしてはいなかったので、スタフェリアを家へと一度一緒に帰った。


「スタフェリア、何か食べたいものとかあるか?」

「にくがたべたい!」

 そう言って、彼女はソファーにダイブした。

「いやいや、そうだなせっかく人間界の食事も楽しんでみろよ」

「いつも食べておる犬の方は腹持ちもいいがのう、畜生よそこら辺の首輪がある犬でもいいぞよ」

「おまえ、さすがにお前が人の形をした人外キャラだからって絵柄的にもそれはダメだ」

 愛護団体をさすがに敵には回したくはない。しかし中国は、犬を食っているという文化があるらしい。しかもこいつかわいいから、絶対にそんなことさせるもんか。

「いいじゃろうて、誰も余のことなど気にしとらんわい」

「俺は気にしてるの! とにかく、犬はダメだよ」

「じゃあ、黒毛和牛がいい!」

「高いからだめ」このセレブめ、どこでそんな貧乏民の俺からしたら、手の届きそうではない富豪な単語を覚えたんだ。むかつくやつめ。

「この貧乏人め、なぜお金が無いのじゃ!」

「仕方ないだろう、いとこのおばさんから、一カ月の食事代と、お駄賃を一緒にくれるんだから」毎月5万円だぞ、貰えるだけありがたいぞ。アルバイトできない高校に入っちまったけど、中学からここまでやってきたんだから。

「肉がいい! 肉がいい! 余は肉しか食べんぞ!!」

 と、言いながら手足をバタバタさせるようにして、ソファーに蹴りをいれている。

「わかったわかった、とっておきの唾がダラダラ出るような、いい食材があるんだが……

「唾がだらだら出るような食材じゃと!?」

 目を輝かせるようにして、彼女は俺の顔を見た。

「それ買ってきてやる。だから今日は肉はおやすみだ いいな?]
 魚という、肉界最強の存在をこいつの舌で思い知らさせてやる。

「よかろう! 楽しみにしておるわい」

 なんともルンルンした顔へと変わっていた。



  後、近所のスーパーへと歩いて向かった。家から十分ほど歩いた場所の、スーパーについた俺は、今日の目玉商品である、この目の前の半額の開きサバが売り場全体の箱にまんべんなく並んで売っていたため、俺はこいつが食べたいとサバを購入した。生粋の魚好きである俺は、よく季節外れのサンマなどを食べている。

(特売二九八か…… 国内産だし、なかなかいい)

 開きサバを二つほど買い物籠にいれると、次に、何を買うかとあれやこれやと考えていると、とある人物が目に突然と入った、いやこれはこの格好は、入るべくしてはいる格好であった。それは見かけが二十代前半の男性であり、身長は僕よりも一回りほどおおきい、目安にして一八〇センチはある。目の前に、黒と灰色のハイブリットの色をした袴を着て、胸を大胆に開けてはいるが、体を覆うようにして、白い包帯が巻かれており強靭な肉体のラインを見せていた。腰には半身よりも小さい剣を翳し、しっかりと腰に巻かれているのか、歩いていても、少しだけ揺れているだけであった。そしてその足は、わらの靴紐であり、こちらの方向へ歩いてくる。

  今時、江戸時代のコスプレをしている男性がいるんだなと、そんなことを思いながら、お会計を済まそうとレジへと向かおうとする。すると、

「こんなところで会うとはな…… 狂言鬼よ」

 かすかに目の前にいた男が、俺の横に立っていた。思わずその瞬間移動のようないくら俺の肉体が強化されていても、反応ができないほどのその忍びのような移動に、のけぞるようにして、身構えた。

「だ、だれだお前……」

 数歩、数歩さがり口の中の唾を飲み込んだ。

「いかにも、竜狩りの竜登たつと 大司たいじとは私のこと」

 刀の柄を持つようにして、横目に俺をにらむ。

「竜狩り……?」

 竜…… ま、まさかスタフェリアを!?

 こいつがスタフェリアの言っていた、混沌の人間。その奴の眼光は俺を切り捨てまいと、空気を切るような鋭いものとなっていた。

「この身を持って、奴を倒す存在だ。ドラゴンキラー派閥十三組、ウロボロス討伐班」

 そのナンバー二である、と彼は気づくと耳元でささやいていた。

「そうか…… 一目見てわかった。そりゃそうだスタフェリアも何も感じないわけだ・・・・・・・

 こいつは生身の人間であった。それだからこそ何も属しない、どんな異の力も使わない、混沌の存在である。人間は神様の子供とはよく言ったものだ。

「奴はそのように称していたのだな…… ほう、面白い」

 口を押え、笑みを浮かべる竜登大司。


 お互いが、牽制しあい張り詰めるような沈黙が、この生肉コーナーで流れていた。

「おっさんは何の目的でスタフェリアを?」

「決まっているだろう、私が竜狩りの男だからだ。それ以上でもそれ以下でもない」

 けだるそうに答える姿、当たり前だとも聞き取れるその言葉。

「そうかい、僕はあいつと共に戦うという使命ができたのでね」

「ほう、ガキ如きが…… そうか、ならやれるものならやってみろ」

「いいよ、おっさん、決闘はいつだよ?」

「明日の満月が、空の頂点に差し掛かった頃……」

 横を向けて、俺と対峙していた、恰好は正面へと変わった。

「わかった、竜殺しの力この僕に見せてくださいね」

「フッ、生意気を。狂言鬼よ、その首を洗って待っていろ」

「おっさんこそ、ちきって逃げ出すなよ」


 俺は、口をゆるく上げ、奴をにらんだ。また奴もこちらを怯みなく、噛み殺さんが如く眼光を見せる。互いは、血走るような空気を日常の風景に押し殺し、互いに背中を巡り合わせた。






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