偽善な僕の明るい世界救済計画
7話 反攻作戦準備
再生された大地にずらりと戦士たちが並んでいた。
まさかの勝利宣言に地上へと退避していた部隊は狂乱にも似た歓喜と、大いなる疑問を感じていた。
もちろん勝利は嬉しい、だが、あの状況下から勝利などつかめるはずもなかった。
「たった一人の参戦が、今回の戦いに勝利をもたらした!」
すべての戦士が演説をするバハムリッドに集中している。
「その英雄を紹介しよう……ラインハルト殿だ!!」
壇上に上がってくる人物に全員の目線が集中する。
ラインハルトはバハムリッドとオリエンテスに頼み(?)込まれ、まず、何故残している? と疑問を呈したくなる頭髪と、もうちょっとちゃんとしろ! と言いたくなる髭を丁寧に剃り落とした。
ラインハルト自身、それらが必要と感じないので、何か言いたそうにしている二人の態度から察して自分から丁寧に剃り落としている。
これだけで、全体的な容姿は改善する。
スキンヘッドの中年太りの目がキラキラしたおっさん。
白銀の鎧姿で、まぁまぁ見れる姿に変わった。
やはり容姿というものは、出来る選択肢の中で出来る限り無理をしない、そして清潔感がある方がいいと言うことがはっきりと分かる。
禿げているのなら、無理に隠さずいっそ刈り込んで短くして、髭などの不潔な要素は排除する。
太っているなら太っているなりにむしろ威厳を感じさせるようなデザインの見た目にすればいい。
みっともない中途半端な隠し方が一番いけない。
「皆さん、過分な紹介恐縮であります。
私の名はラインハルト、魔王軍の一方的な蹂躙にこの美しい世界が汚されるのを私は望まない。
今こそ、皆さんと共に、魔王軍に犯行の楔を打ち込もうじゃありませんか!」
ちょっとあっけにとられている前列ではなくよく見えていない後列から熱狂の波が戦士たちの間に広がっていく。
なんにせよ、この人物が現れた事によって奇跡が起きたことは間違いない。
興奮の足踏みと、ラインハルト!! という声が大地を揺らす。
「私の召喚した友人たちが、今は魔物を押さえ込んでいる」
ラインハルトの発言に場の戦士たちは騒然となる。
あの魔物を押さえ込む存在を召喚できるということがピンとこない。
「こちらを見て欲しい」
ラインハルトは水晶玉のようなものを取り出すと空中に巨大な映像を浮かび上がらせる。
まるで突然そこに戦場が広がったようで取り乱す人もいたが、それが精細な戦場の映像だとわかると感嘆の声が広がる。
その映像は圧巻だった。
白銀の戦士たちが、グラン軍の歴戦の戦士たちが必死に倒してきた魔物を、まるで赤子をひねるように次から次へと撃破していくのだ。
一糸乱れぬ動きで隊列を組み、効率的に、迅速に、苛烈に敵を責め立てる姿にその場にいた戦士たちは興奮を押さえられない。足踏みによる地鳴りが先程よりも激しく地面を揺らしている。
しばらくすると特に立派な鎧に身を包む騎士が映像に現れる。
「我ガ友ラインハルトノ頼ミニヨリ、コノ身ヲトシテ戦線ハ維持シヨウ。
誇リ高キ戦士タチヨ、シバシノ休息ト、反撃ノ準備ヲ!」
会場の興奮は絶頂に達する。
機械化生物のようだが、明らかに高度な装備に身を包む歴戦の騎士達に、今までの長年の忍耐を解き放たれた人々は、中には抱き合い涙を流す者まで居る。
再び先頭に戻る騎士の姿を皆尊敬の念で見送る。
画像はそこで途切れる。
「ご覧のように、ラインハルト殿の友人が寝る間も惜しんで、まぁ彼らに食事も睡眠も必要ないそうなのだが、戦線を維持してくれている。
この間に、まずは君たちの休息だ。
その後、皆の装備の一新。
しかる後に反攻作戦を執り行う!
今から72時間総員に休憩を申し渡す!」
バハムリッドの宣言により、今回一番の歓声が洞窟内に響き渡る。
「さて、戦士たちは休息できても、我らにはやることが山積みだ」
バハムリッドが会議の口火を切る。
ラインハルトが加入したことによって、今後の戦略を全員で話し合わないといけない。
各国の王たちと、代表として来ている戦士や後方支援担当などの上部の人員達は早急に計画の練り直しを迫られている。
「まずはラインハルト殿の話を聞こうじゃないか」
バハムリッドの提案に会議に参加するものたちは深々と頷く。
突然現れたこの人物について、まだ深くはしらないのだ。
その話を聞く、このことに異議を唱えるものはいない。
「まずは今までの魔王軍との戦闘において、犠牲になってしまったもの、勇敢に戦い、戦いを退いたものその全てに尊敬と哀悼の意を捧げる。そして、ここまでこの世界を守り維持してくれた皆に感謝を伝える。これは、名を明かすことは出来ぬが、我が主も同じ気持ちだ」
その発言だけでも議会は騒然としてしまう。
戦いの記録を皆見ているが、あれほどの圧倒的な能力を持つ人物の主がいる。
そして、その存在は限りなく神に近いか、神そのものだと考えているからだ。
「あらためて、私の名前はラインハルト。
以前は勇者と呼ばれたこともあるのだが、ゆえあって、このような姿で転生したようだ。
皆も知っているだろうが、敵は魔王軍、魔王というのは私と同じように異次元から来た災害のようなものだ。
魔物たちには限りはない、魔王を倒さなければ、この世界における戦いは終わらない。
我々が、この世界を守るためには魔王を倒す。ただひとつの方法を成し遂げるしか無い!」
見た目は恰幅の良い商人のような服装に身を包む、スキンヘッドのラインハルト。
戦いの時の鎧と違って、太った人間が服装を選ぶときにはいくつかの決まり事を守るといい。
まず、膨張色と呼ばれる色合いだけの構成は避けたほうが無難だ。
もし使用する場合は中央に膨張色を配置して、周囲を収縮色で囲むようにイメージするとデブ散らかした服装にならないで済む。
鮮やかな色を組み込ませて、目線をそこに引っ張るのも有効な手段だ。
ラインハルトはジャケットとズボンは落ち着いた茶色のカラーを用いて外枠をビシっと占めて、内部は清潔感のある白いシャツ、そしてベストには鮮やかな黄色を配置してる。
これから始まる逆転劇への明るい期待感を印象づけるための黄色、それを真っ白なシャツでより強調させ、額縁効果を期待して落ち着いた茶色でまとめる。
大事なことは、何と言っても清潔感。そしてぼんやりとした色を多く使わない。可能なら一番外側は濃い色合いを使う。
デブにはデブの着こなしがある。
ラインハルトの発言に全員が、今までの苦労から攻勢にでられる可能性と、魔王の打破と言う具体的な目標を掲げられ、身体の中に火がついたように感じた。
「まずは強力な敵に対抗するために、皆の装備を一新する。
ドワーフ部隊による鍛冶組織と私も一緒に製造に当たる。
材料も、こちらで準備してある」
ラインハルトはゴロゴロと鉱石をテーブルの上に取り出してみせる。
「……ば、馬鹿な!! ミスリルに金剛鉄に虹色石じゃと!!」
急に大声を上げたのはドワーフの鍛冶部門長のドッコであった。
ドワーフ族でも110歳と高齢ではあるものの、未だに彼を超える鍛冶師はいない。
頑固一徹、寡黙な職人が目の色を変えてラインハルトが取り出した鉱石に釘付けになっている。
「会議は……荒れるな……」
皆の共通した認識を、誰かが呟いた……
まさかの勝利宣言に地上へと退避していた部隊は狂乱にも似た歓喜と、大いなる疑問を感じていた。
もちろん勝利は嬉しい、だが、あの状況下から勝利などつかめるはずもなかった。
「たった一人の参戦が、今回の戦いに勝利をもたらした!」
すべての戦士が演説をするバハムリッドに集中している。
「その英雄を紹介しよう……ラインハルト殿だ!!」
壇上に上がってくる人物に全員の目線が集中する。
ラインハルトはバハムリッドとオリエンテスに頼み(?)込まれ、まず、何故残している? と疑問を呈したくなる頭髪と、もうちょっとちゃんとしろ! と言いたくなる髭を丁寧に剃り落とした。
ラインハルト自身、それらが必要と感じないので、何か言いたそうにしている二人の態度から察して自分から丁寧に剃り落としている。
これだけで、全体的な容姿は改善する。
スキンヘッドの中年太りの目がキラキラしたおっさん。
白銀の鎧姿で、まぁまぁ見れる姿に変わった。
やはり容姿というものは、出来る選択肢の中で出来る限り無理をしない、そして清潔感がある方がいいと言うことがはっきりと分かる。
禿げているのなら、無理に隠さずいっそ刈り込んで短くして、髭などの不潔な要素は排除する。
太っているなら太っているなりにむしろ威厳を感じさせるようなデザインの見た目にすればいい。
みっともない中途半端な隠し方が一番いけない。
「皆さん、過分な紹介恐縮であります。
私の名はラインハルト、魔王軍の一方的な蹂躙にこの美しい世界が汚されるのを私は望まない。
今こそ、皆さんと共に、魔王軍に犯行の楔を打ち込もうじゃありませんか!」
ちょっとあっけにとられている前列ではなくよく見えていない後列から熱狂の波が戦士たちの間に広がっていく。
なんにせよ、この人物が現れた事によって奇跡が起きたことは間違いない。
興奮の足踏みと、ラインハルト!! という声が大地を揺らす。
「私の召喚した友人たちが、今は魔物を押さえ込んでいる」
ラインハルトの発言に場の戦士たちは騒然となる。
あの魔物を押さえ込む存在を召喚できるということがピンとこない。
「こちらを見て欲しい」
ラインハルトは水晶玉のようなものを取り出すと空中に巨大な映像を浮かび上がらせる。
まるで突然そこに戦場が広がったようで取り乱す人もいたが、それが精細な戦場の映像だとわかると感嘆の声が広がる。
その映像は圧巻だった。
白銀の戦士たちが、グラン軍の歴戦の戦士たちが必死に倒してきた魔物を、まるで赤子をひねるように次から次へと撃破していくのだ。
一糸乱れぬ動きで隊列を組み、効率的に、迅速に、苛烈に敵を責め立てる姿にその場にいた戦士たちは興奮を押さえられない。足踏みによる地鳴りが先程よりも激しく地面を揺らしている。
しばらくすると特に立派な鎧に身を包む騎士が映像に現れる。
「我ガ友ラインハルトノ頼ミニヨリ、コノ身ヲトシテ戦線ハ維持シヨウ。
誇リ高キ戦士タチヨ、シバシノ休息ト、反撃ノ準備ヲ!」
会場の興奮は絶頂に達する。
機械化生物のようだが、明らかに高度な装備に身を包む歴戦の騎士達に、今までの長年の忍耐を解き放たれた人々は、中には抱き合い涙を流す者まで居る。
再び先頭に戻る騎士の姿を皆尊敬の念で見送る。
画像はそこで途切れる。
「ご覧のように、ラインハルト殿の友人が寝る間も惜しんで、まぁ彼らに食事も睡眠も必要ないそうなのだが、戦線を維持してくれている。
この間に、まずは君たちの休息だ。
その後、皆の装備の一新。
しかる後に反攻作戦を執り行う!
今から72時間総員に休憩を申し渡す!」
バハムリッドの宣言により、今回一番の歓声が洞窟内に響き渡る。
「さて、戦士たちは休息できても、我らにはやることが山積みだ」
バハムリッドが会議の口火を切る。
ラインハルトが加入したことによって、今後の戦略を全員で話し合わないといけない。
各国の王たちと、代表として来ている戦士や後方支援担当などの上部の人員達は早急に計画の練り直しを迫られている。
「まずはラインハルト殿の話を聞こうじゃないか」
バハムリッドの提案に会議に参加するものたちは深々と頷く。
突然現れたこの人物について、まだ深くはしらないのだ。
その話を聞く、このことに異議を唱えるものはいない。
「まずは今までの魔王軍との戦闘において、犠牲になってしまったもの、勇敢に戦い、戦いを退いたものその全てに尊敬と哀悼の意を捧げる。そして、ここまでこの世界を守り維持してくれた皆に感謝を伝える。これは、名を明かすことは出来ぬが、我が主も同じ気持ちだ」
その発言だけでも議会は騒然としてしまう。
戦いの記録を皆見ているが、あれほどの圧倒的な能力を持つ人物の主がいる。
そして、その存在は限りなく神に近いか、神そのものだと考えているからだ。
「あらためて、私の名前はラインハルト。
以前は勇者と呼ばれたこともあるのだが、ゆえあって、このような姿で転生したようだ。
皆も知っているだろうが、敵は魔王軍、魔王というのは私と同じように異次元から来た災害のようなものだ。
魔物たちには限りはない、魔王を倒さなければ、この世界における戦いは終わらない。
我々が、この世界を守るためには魔王を倒す。ただひとつの方法を成し遂げるしか無い!」
見た目は恰幅の良い商人のような服装に身を包む、スキンヘッドのラインハルト。
戦いの時の鎧と違って、太った人間が服装を選ぶときにはいくつかの決まり事を守るといい。
まず、膨張色と呼ばれる色合いだけの構成は避けたほうが無難だ。
もし使用する場合は中央に膨張色を配置して、周囲を収縮色で囲むようにイメージするとデブ散らかした服装にならないで済む。
鮮やかな色を組み込ませて、目線をそこに引っ張るのも有効な手段だ。
ラインハルトはジャケットとズボンは落ち着いた茶色のカラーを用いて外枠をビシっと占めて、内部は清潔感のある白いシャツ、そしてベストには鮮やかな黄色を配置してる。
これから始まる逆転劇への明るい期待感を印象づけるための黄色、それを真っ白なシャツでより強調させ、額縁効果を期待して落ち着いた茶色でまとめる。
大事なことは、何と言っても清潔感。そしてぼんやりとした色を多く使わない。可能なら一番外側は濃い色合いを使う。
デブにはデブの着こなしがある。
ラインハルトの発言に全員が、今までの苦労から攻勢にでられる可能性と、魔王の打破と言う具体的な目標を掲げられ、身体の中に火がついたように感じた。
「まずは強力な敵に対抗するために、皆の装備を一新する。
ドワーフ部隊による鍛冶組織と私も一緒に製造に当たる。
材料も、こちらで準備してある」
ラインハルトはゴロゴロと鉱石をテーブルの上に取り出してみせる。
「……ば、馬鹿な!! ミスリルに金剛鉄に虹色石じゃと!!」
急に大声を上げたのはドワーフの鍛冶部門長のドッコであった。
ドワーフ族でも110歳と高齢ではあるものの、未だに彼を超える鍛冶師はいない。
頑固一徹、寡黙な職人が目の色を変えてラインハルトが取り出した鉱石に釘付けになっている。
「会議は……荒れるな……」
皆の共通した認識を、誰かが呟いた……
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