ただの世界最強の村人と双子の弟子
第0話の17 瀕死の来訪者
===ユウキ視点========================
早朝、俺が眠い意識をスッキリさせるために丘を登って村を一望していた時、村の近くにある森から1人の女性が出て来た。
俺は警戒して村から見える位置まで"転移"すると、その女性とはあのいけ好かない王女だった。
「お、おい!どうした!?」
俺は過去にあった事なんて、全て忘れて彼女の下へ走った。
王女は、ふらふらと今すぐにでも倒れそうな足取りでこっちへと歩いて来ている。
着ている赤のドレスは、下の方にあるフリフリが無かったら分からなかったほど破れまくり、泥や一部血も付いていた。
足は片方だけしか泥だらけのヒールを履いておらず、履いてない方の足は泥の隙間から血が見えた。
「……はぁ…はぁ、ユ…ウキ……」
王女はそれだけ言って、糸が切れたように倒れそうになるが、間一髪のところで彼女を抱き止める。
意識は無く、息は荒々しくはあるがしっかりとしているので、疲れて気絶しているだけだろう。
俺は取り敢えず、彼女の腕を肩に回して軽く立たせた後、家に"転移"した………。
「……よいしょ」
俺は彼女を俺のベットに寝転がした後、身体中に付いている泥や土、血を"アイテムボックス"から出した洗面器や"ウォーター"を使ってベットが濡れないように慎重に洗い流し、次に傷のある所を"ヒール"や"ハイヒール"で治していく。
流石にドレスを剥いで身体を見るつもりは無かったので、腕や足といった剥き出しになっているところを治していく。
腕には剣などでつけられた斬り傷や火傷、足には尖った石が少し刺さってしまっていたり、顔には殴られた跡のような打撲痕があった。
一応、ドレス下以外の治療は完了した。後はティフィラを呼んでーー
「……ユウキ、何してるの?」
ここ数年で聞き慣れた声が、俺の背後から聞こえた。その声は疑いをかけているようで、力強くて無感情な声だった。
「言っとくが、お前の考えている事じゃないからな。ちょうど良かった、今からお前を呼んでーー」
「ま、まさかっ!3ーー」
「こいつの!治療を!してもらおうと!思ってたんだ!!」
ティフィラが言ってはいけないような事を言おうとしていたので、俺は強めに大きな声で言った。
ティフィラは若干驚きつつも、俺を通り過ぎて王女の方へ行き、王女を見る。
「……別に治療をしなくて良さそうに見えるんだけど」
「俺があらかた治療は済ませたんだが、ドレス下は流石に俺が見るわけにはいかないと思ってな」
「あ、そういう事」とティフィラは手をパンと叩いて納得したように言った。
そして、「失礼します~」の後に衣服を破る音が聞こえた事から、なんか気楽そうにドレスを剥いだらしいんだが、後ろを見ていた俺は、その後にティフィラの呻く声が聞こえた。
「どうした?」
俺は背中越しに尋ねる。だけど、返事が無い。
「おーい?」
俺はもう一度尋ねたが、またも返事が無い。
俺は少しイラついてしまい、振り返ってティフィラを俺の方へ向かせた。
「……え?」
振り向かせたティフィラの顔は、悲しみに満ちて、目から大量の涙を流していた。
そして、俺の顔を見た瞬間、俺に抱きついて押し殺すように泣き出した。
「……おい、どうしたんだよ?一体何……が……」
俺はティフィラの頭を撫でながら、王女の身体を軽く見た。
声が詰まった。何を言ったら良いのか分からなくなった。
彼女の胴体には標準程度だったが、女性として魅力的な胸が有った筈だ。
だが、今の彼女にはそれが無く、代わりに胸の辺りに肉を切った時のような断面とそこから流れたであろう、血がべたりと付いて乾いてしまっていた。
あのドレスは元から赤色では無く、血によって染まった赤だったんだ…。
………守姫、無くなった部位を補修する魔法はあるか?
(…残念ながらありません。"エクストラヒール"でも恐らくその断面を覆う事しか出来ないかと)
俺は無言で守姫を取り出し、守姫を彼女に近づけて守姫に"エクストラヒール"をやってもらう。
すると、断面の隅にあった皮が徐々に中央へ広がっていく。およそ10分程度でまるで傷が無かったように皮が断面を覆った。だが、そこに女性らしさも無く、男にすらある乳首すら無い。マネキンのようになってしまった。
「……取り敢えず、起きるのを待つか」
(……コクッ)
ティフィラは俺に抱きついたまま、頷いたので、ティフィラが邪魔になっているのでゆっくりと歩く。
それから王女が目を覚ましたのは次の日だった………。
「……っ!!……はぁ、はぁ」
俺が部屋にある椅子にもたれて読書をしていたら、彼女は突然悪夢から目が覚めたように目覚めた。
「……お、やっと起きたか。王女さんよ」
俺は努めていつもの調子で話しかけた。
王女は俺を見ると、すぐさまベットから降りて俺に抱きついて来た。
「はぁ、はぁ、はぁ」と息を荒くして、怖い夢を見た時の子供のような顔が見える。
俺はティフィラの時のように、頭を撫でたりして落ち着かせたりしない。ただゆっくりと王女を引き剥がして聞いた。
「何があった?」
王女は急に息を荒くして、頭を抱える。よっぽど怖い目に遭ったみたいだ。
俺はもう一度、ゆっくりと聞いた。
「何があった?」
今度は勢い良く顔を上げて、俺の顔を凝視してくる。その時の彼女の目は懇願している目だった。助けを求める目だった。だから、俺は言った。
「俺が何とかしてやる。だから、教えてくれ。お前の身に何が遭った?」
彼女は震える唇で一言ずつ、ゆっくりとだが確実に、彼女の身に、宮殿内に起きた事を教えてくれた。
とっても胸糞悪い、思わず殺意が芽生えそうな話。
全てを言い終える頃には、膝もガクガクで意識が何とか保っているという状態だったので、彼女をお姫様抱っこのかたちで抱き上げてベットに寝かしつけた。
王女はすぐに眠った。
俺は横目で確認した後、部屋を出た。出た先のダイニングには、不安そうに俺を見つめるティフィラが、俺の正面に立っていた。
「悪いが、ちょっと用事を済ましてくる」
俺はそれだけ言って出て行こうとしたが、彼女の呼び止める声が聞こえて振り返る。
「……私も一緒にーー」
「駄目だ。俺1人で行く」
ついて来ようとしていたティフィラに強めに言い捨て、「すぐに戻る」とだけ言って家を出た。
そしてすぐさま"転移"を使い、石レンガ造りの宮殿内の外側の赤いカーペットが敷かれている廊下に侵入した。
「………さーて、どうしてやるか」
俺は"探知"であらかたの敵の位置を把握すると、敵のいる部屋へと向かう。
宮殿内は、俺が初めて侵入した頃に比べ、静かで、誰一人として人を見かけない代わりに、そこらに転がっている死体は見える。
俺は堪らなくなって走り出す。人が集中している王の間へと。
豪勢で巨大な両扉を蹴飛ばし、片方の扉が中に派手な音を立てて跳ねる。
「……よぉ、初めましてだな。同郷者よ」
俺の目の前にいるのは、5人。その全員が日本人だった………。
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今回、ちょっとグロいかなと思い、表現を控えめにしました。
早朝、俺が眠い意識をスッキリさせるために丘を登って村を一望していた時、村の近くにある森から1人の女性が出て来た。
俺は警戒して村から見える位置まで"転移"すると、その女性とはあのいけ好かない王女だった。
「お、おい!どうした!?」
俺は過去にあった事なんて、全て忘れて彼女の下へ走った。
王女は、ふらふらと今すぐにでも倒れそうな足取りでこっちへと歩いて来ている。
着ている赤のドレスは、下の方にあるフリフリが無かったら分からなかったほど破れまくり、泥や一部血も付いていた。
足は片方だけしか泥だらけのヒールを履いておらず、履いてない方の足は泥の隙間から血が見えた。
「……はぁ…はぁ、ユ…ウキ……」
王女はそれだけ言って、糸が切れたように倒れそうになるが、間一髪のところで彼女を抱き止める。
意識は無く、息は荒々しくはあるがしっかりとしているので、疲れて気絶しているだけだろう。
俺は取り敢えず、彼女の腕を肩に回して軽く立たせた後、家に"転移"した………。
「……よいしょ」
俺は彼女を俺のベットに寝転がした後、身体中に付いている泥や土、血を"アイテムボックス"から出した洗面器や"ウォーター"を使ってベットが濡れないように慎重に洗い流し、次に傷のある所を"ヒール"や"ハイヒール"で治していく。
流石にドレスを剥いで身体を見るつもりは無かったので、腕や足といった剥き出しになっているところを治していく。
腕には剣などでつけられた斬り傷や火傷、足には尖った石が少し刺さってしまっていたり、顔には殴られた跡のような打撲痕があった。
一応、ドレス下以外の治療は完了した。後はティフィラを呼んでーー
「……ユウキ、何してるの?」
ここ数年で聞き慣れた声が、俺の背後から聞こえた。その声は疑いをかけているようで、力強くて無感情な声だった。
「言っとくが、お前の考えている事じゃないからな。ちょうど良かった、今からお前を呼んでーー」
「ま、まさかっ!3ーー」
「こいつの!治療を!してもらおうと!思ってたんだ!!」
ティフィラが言ってはいけないような事を言おうとしていたので、俺は強めに大きな声で言った。
ティフィラは若干驚きつつも、俺を通り過ぎて王女の方へ行き、王女を見る。
「……別に治療をしなくて良さそうに見えるんだけど」
「俺があらかた治療は済ませたんだが、ドレス下は流石に俺が見るわけにはいかないと思ってな」
「あ、そういう事」とティフィラは手をパンと叩いて納得したように言った。
そして、「失礼します~」の後に衣服を破る音が聞こえた事から、なんか気楽そうにドレスを剥いだらしいんだが、後ろを見ていた俺は、その後にティフィラの呻く声が聞こえた。
「どうした?」
俺は背中越しに尋ねる。だけど、返事が無い。
「おーい?」
俺はもう一度尋ねたが、またも返事が無い。
俺は少しイラついてしまい、振り返ってティフィラを俺の方へ向かせた。
「……え?」
振り向かせたティフィラの顔は、悲しみに満ちて、目から大量の涙を流していた。
そして、俺の顔を見た瞬間、俺に抱きついて押し殺すように泣き出した。
「……おい、どうしたんだよ?一体何……が……」
俺はティフィラの頭を撫でながら、王女の身体を軽く見た。
声が詰まった。何を言ったら良いのか分からなくなった。
彼女の胴体には標準程度だったが、女性として魅力的な胸が有った筈だ。
だが、今の彼女にはそれが無く、代わりに胸の辺りに肉を切った時のような断面とそこから流れたであろう、血がべたりと付いて乾いてしまっていた。
あのドレスは元から赤色では無く、血によって染まった赤だったんだ…。
………守姫、無くなった部位を補修する魔法はあるか?
(…残念ながらありません。"エクストラヒール"でも恐らくその断面を覆う事しか出来ないかと)
俺は無言で守姫を取り出し、守姫を彼女に近づけて守姫に"エクストラヒール"をやってもらう。
すると、断面の隅にあった皮が徐々に中央へ広がっていく。およそ10分程度でまるで傷が無かったように皮が断面を覆った。だが、そこに女性らしさも無く、男にすらある乳首すら無い。マネキンのようになってしまった。
「……取り敢えず、起きるのを待つか」
(……コクッ)
ティフィラは俺に抱きついたまま、頷いたので、ティフィラが邪魔になっているのでゆっくりと歩く。
それから王女が目を覚ましたのは次の日だった………。
「……っ!!……はぁ、はぁ」
俺が部屋にある椅子にもたれて読書をしていたら、彼女は突然悪夢から目が覚めたように目覚めた。
「……お、やっと起きたか。王女さんよ」
俺は努めていつもの調子で話しかけた。
王女は俺を見ると、すぐさまベットから降りて俺に抱きついて来た。
「はぁ、はぁ、はぁ」と息を荒くして、怖い夢を見た時の子供のような顔が見える。
俺はティフィラの時のように、頭を撫でたりして落ち着かせたりしない。ただゆっくりと王女を引き剥がして聞いた。
「何があった?」
王女は急に息を荒くして、頭を抱える。よっぽど怖い目に遭ったみたいだ。
俺はもう一度、ゆっくりと聞いた。
「何があった?」
今度は勢い良く顔を上げて、俺の顔を凝視してくる。その時の彼女の目は懇願している目だった。助けを求める目だった。だから、俺は言った。
「俺が何とかしてやる。だから、教えてくれ。お前の身に何が遭った?」
彼女は震える唇で一言ずつ、ゆっくりとだが確実に、彼女の身に、宮殿内に起きた事を教えてくれた。
とっても胸糞悪い、思わず殺意が芽生えそうな話。
全てを言い終える頃には、膝もガクガクで意識が何とか保っているという状態だったので、彼女をお姫様抱っこのかたちで抱き上げてベットに寝かしつけた。
王女はすぐに眠った。
俺は横目で確認した後、部屋を出た。出た先のダイニングには、不安そうに俺を見つめるティフィラが、俺の正面に立っていた。
「悪いが、ちょっと用事を済ましてくる」
俺はそれだけ言って出て行こうとしたが、彼女の呼び止める声が聞こえて振り返る。
「……私も一緒にーー」
「駄目だ。俺1人で行く」
ついて来ようとしていたティフィラに強めに言い捨て、「すぐに戻る」とだけ言って家を出た。
そしてすぐさま"転移"を使い、石レンガ造りの宮殿内の外側の赤いカーペットが敷かれている廊下に侵入した。
「………さーて、どうしてやるか」
俺は"探知"であらかたの敵の位置を把握すると、敵のいる部屋へと向かう。
宮殿内は、俺が初めて侵入した頃に比べ、静かで、誰一人として人を見かけない代わりに、そこらに転がっている死体は見える。
俺は堪らなくなって走り出す。人が集中している王の間へと。
豪勢で巨大な両扉を蹴飛ばし、片方の扉が中に派手な音を立てて跳ねる。
「……よぉ、初めましてだな。同郷者よ」
俺の目の前にいるのは、5人。その全員が日本人だった………。
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今回、ちょっとグロいかなと思い、表現を控えめにしました。
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