ただの世界最強の村人と双子の弟子

ヒロ

第99話 リルvs破壊神



===リル視点========================

「おい、魔神。ここで戦いにくいから、場所を移すぞ」
『え?魔神………?』

 お師匠が軽く大男に言ったけど、魔神って事はつまり、この大男はオリナって事………?

「はっ。まあ良いだろう。良かろう。構わん。どうせ結果は変わらないんだからな」

 私の心境とは関係なしにお師匠は飛び出し、大男も翼を生やして飛んで行ってしまった。

 正直、お師匠の方へ振り向きたくなったけど、今は破壊神の相手をするのが最優先事項だから、私は破壊神を見据えて自身の『ソウルウェポン』を握り締める。

「……ユウキを殺すチャンスが無くなったのは残念だが………、こっちはこっちでしなくてはならなかったからな」

 破壊神はそう言うと、舌で自身の唇を舐め回し、右手をこちらに向けて私のほうへ歩き始めた。

『ここは牽制を……!』(ドクンッ!)

 破壊神への牽制に、『ソウルウェポン』に魔力を送ろうとした瞬間、頭が裂けそうな痛みが頭を襲い、『ソウルウェポン』を落とす事はしなかったものの、『ソウルウェポン』に魔力を流す事を中断してしまった。

 そして次に襲ったのは無数の自分の声。

(ねぇ?戦うの?負けるよ?死ぬよ?死んじゃうよ?嫌だよね?死にたくないよね?なら、逃げようよ。それとも、お師匠にすがる?)

 お師匠にすがるという声が聞こえた時、僅かに心が負けそうになったけど、それを押し殺して頭を振るう。けど、声は止まない。

(いいじゃん、まだ私は子供なんだよ?お師匠に比べたら、圧倒的に経験が無いんだよ?逃げちゃおうよ。助けてもらいに行こうよ)
『………………黙って………』

 私はか細く呟きながら、再び『ソウルウェポン』に魔力を送り、能力で増幅させ、破壊神を見据える。
 
 酷い頭痛と声は明らかに破壊神の仕業だ。それを証明するかのように、破壊神の顔は気味が悪いほど嫌に歪んでいても、喜びが見て取れた。

(辛い事は嫌。苦しい事は嫌。痛い事は嫌。怪我をするのは嫌。血を出すのは嫌。逃げたい。関わりたくない。痛い思いをしたくない。死にたくない)
『…………黙ってよ………!』

 私は今にも叫びたくなるのを抑え込み、『ソウルウェポン』を中段に構える。狙うは胴体。あわよくば真っ二つに……!

(お父さん。お母さん)
『……!?』

 剣先が一瞬、揺れる。それをすぐさま直し、タイミングを伺う。

(帰りたい。あの家に。家族で仲良く暮らしていたかった。何事も起きず、武業専門校に行って、冒険者になって、人並みの恋をして、普通に家庭を築きたかった)

 剣先が、意識がふらついているのが分かる。紛れもなく、声が呟いた事は本心だからだ。ここに来て、弱くなっている自分が居る。必死に乗り越えた恐怖を振り返ってしまう。それだけは………!

(あの男さえ居なければ……!私は!魔王に攻め込まれた後でも、やり直しが効いたのに!!)
『……………ふっ……』

 私は思わず笑みがこぼれる。何もおかしくなった訳じゃない。ただ、おかしいと思っただけ。だって、面白い冗談は笑うものでしょ?

「………もう堕ちたか。案外あっけなーー」
『"滅却衝"!!』

 お師匠が使っていた、高密度な魔力の塊をぶつける技をぶっつけ本番で使ってみた。

「なっ!?」(ドゴォーン!!)

 初めてやった"滅却衝"は上手くいき、砂埃が舞い上がる。
 勿論、神気を帯びているから、神の能力をある程度無視して神を攻撃出来る。

 神気は神の魔力のようなものだから、どんな能力でもある程度張り合う事が出来る手段として、高密度な魔力をぶつける事を神に置き換えただけ。

『…………次は神気で撃つよ』

 砂埃が晴れた先に居たのは、両腕をクロスにして防御の体勢をとっている破壊神だった。クロスした腕の交差してある部分は少しだけ焼けていた。私の"滅却衝"が効いた証拠だ。

「…………舐めるな……!」

 破壊神は明らかに怒っていて、怒声を上げた瞬間、破壊神を中心として、真っ黒な空気としか言いようがない、謎の黒いものが押し寄せて来た。

 私は下がりつつも神気のみの"滅却衝"を撃ち込むけど、黒いものに当たった瞬間、崩れ去ってしまう。

『えっ!?ちょっ!!』

 私は飛び上がり、浮遊して破壊神を見る。破壊神は余裕の表情でこっちを見つめ返してきた後、今度はこっちにあの黒い空気のようなものを向かわせてきた。

 さっきのは単純なる火力不足。なら、超火力で!

 私の周囲に神気を漂わせ、その神気に"身体強化"の要素を入れて、神気の底上げをする。

 そして、『ソウルウェポン』に神気を流し込み、増幅させて、両手で持って掲げる。刀身は真っ白な光を発し、それはまるで、闇を照らす光。

『"クラノロスト"!!』

 私は『ソウルウェポン』を黒い空気のようなものに振り下ろした。その瞬間、"クラノロスト"と黒い空気のようなものがぶつかった。

 まばゆい光を放っていて、視界が白に染まっているけど、『魔導』"透視眼"で衝突部分を見る。

 かなり本気で撃った"クラノロスト"と黒い空気のようなものは拮抗していて、このままじゃ、常時放出出来る破壊神の方が有利だと思っていたけど、どんどん"クラノロスト"が押してきている。

『…………もしかして、神気に"闇を照らす"という要素が………!』

 それに気づいた時には、もの凄い勢いで、"クラノロスト"が地表にぶつかった時だった………。



『…………………………う、うぅぅん……』

 私はどうやら、一瞬意識が飛んでいたようで、地表に倒れ込んでいた。ゆっくりと体を起こし、周りを見渡す。砂埃しか見えないが、"透視眼"を発動して、再度見渡すと、すぐ隣に巨大な穴が出来ていた。

『えぇぇぇ~~』

 間違い無く、私の"クラノロスト"の跡地で、『暴神』の時より明らかに被害が酷くなっていた。

『これで生きていたら、もう知らなーー』
「…………………やりおったな……」

 急に破壊神の声が聞こえ、さっき見渡した時には居なかった筈なのに、どこにと思ったら、巨大な穴から浮き上がって来ていた。

「……貴様の神気は異常だ。それこそ、神王ぐらいだぞ。そこまでの神気の自由度が高いのは……」

 浮き上がって来ていた破壊神は、そこら中が焼けて爛れていた。明らかに満身創痍。これは私の勝ちじゃあーー

『………っ!?』(ゴボォォッ!!)

 突如、吐き気が襲い、座り込んだ瞬間、口から大量の血が溢れ出した。

『………何が……』
「貴様の代償だ」

 破壊神は馬鹿にするかのような目で私を見ながらこちらに近づいて来る。

「あれほどの神気をノーリスクで扱える訳が無いだろう。そんな事が出来たら、それこそ初代神王クラスだ。だが、貴様はあくまで『共神化』でなった一時的な神。そんな器では、時期に………」

 そこまで言って、何を黙っているのかと思ったら、私の体が光り始めた。これは『共神化』が解ける前兆。

『………どう…して……まだ……そんなに…時…間は……!』

 普通に喋ろうとしても、溢れ出る血の所為で上手く喋られない。

 意識もおぼつかない。やばい……!『共神化』が………!!


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 あまり戦闘シーンは長くしないようにしてます。何故なら、文才がありませんから!!
 
 

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