ただの世界最強の村人と双子の弟子
第97話 リルの覚醒
===リル視点========================
「よくも!良い素材を逃してくれたな!ユウキっ!!」
怒りにより禍々しい存在を強くしながらお師匠の言う破壊神が私達のところに近づいてくる。
お師匠は冷や汗を流しながら、破壊神といきなり来た男を交互に見ながら技姫さんを構えている。
…………私も心ではお師匠と背中を合わせて戦いと思っているっ!けど、体が動かない!震えが止まらない!『共神化』を維持出来ているのが不思議なくらい…………私の体は戦闘は無意味だと訴えている。
「早く行けっ!」
『……………っ!!ならっ!お師匠も一緒にーー』
(ガキィィィン!!)
私は立ち上がってお師匠の手を掴もうと手を伸ばそうとした時、私の顔に当たるギリギリのところで剣と剣がぶつかり合った。
「………何故阻む?」
「お前こそ、いきなり仕掛けやがって……!」
私は自然に尻餅をついていた。そして、そこから見えたのは、剣では無く、爪を立てていた化け物のような男とその爪を間一髪のところで防いでいてくれていたお師匠が居た。
「……戦場に戦意なき者は要らぬ。戦う意思の無い奴は戦場ではゴミ以下だ!だからさっさと退場願おうと思ったまで。目障りなの、ただピーピー泣く子供は。まあ、そんな奴をいたぶるのは好きだが」
『……………。……私は………』
この大男の言う通り、私はここでは足手まとい。それは私が一番理解してる。……そんな私はお師匠を心配する事もしてはいけないの?私は……………
「確かに、戦場において戦う意思すら無い者は淘汰される」
…………ああ、やっぱりお師匠もーー
「だが、それは大人の場合だ。こいつは子供だ。なら、大人である俺はピーピー泣くこいつを護る必要があるんだよ!」
「ぐぅっ!」
お師匠はそう言い終わるのと同時に大男の横腹を蹴った。普通の蹴りに見えたけど、『殲滅武術』を使ったのか、とてつもない爆風と一緒に大男もぶっ飛んだ。
「…………今は逃げろ。それがお前のすべき事だ」
『…………、うぅあっ、わた……私は……!』
私は必死にお師匠に手を伸ばす。けど、全く届かない。立ち上がれば済む距離なのに、体は立ち上がらない。この距離はまるで、私とお師匠の間にある決して埋められない差のようで………
「ユウキィィィっ!!」
大気を震わすほどの甲高い声の叫び声に、反射的に耳を手で塞ぎ、目を瞑る。
声が止んだようで、さっきまで手をも震わす感覚が無い。恐る恐る手を耳から離し、目を開けるとそこにはお師匠の姿がなかった。
『………え?……一体何処に……』
(ドゴォーンッ!!)
右から岩が砕ける音がして、そこを見てみると、小さな岩の瓦礫の中から打撲の痕だらけのお師匠が現れた。お師匠は私を見ず、真っ直ぐ正面を見つめている。
左を向くとそこには倒れている破壊神が居た。左にも岩があった筈なのに、破片すら見つからない。何かをしたんだろうけど、私にはサッパリ分からない。
「チィ、防いだか」
「…………お前に拳が当たる直前、腹に凄まじい風圧が来た。やっぱり、ユウキは"特異点"と呼ばれる事はある。……鬱陶しいんだよ!ユウキィィィ!!」
「情緒不安定すぎだろ……」
お師匠はそう言いつつ、技姫さんを構え、目の前の破壊神と何処かへ飛んで行った大男の両方を警戒している。
お師匠の事しか見えていない破壊神と邪魔者を排除するかのように私を殺そうとする大男。
…………私が逃げれば良い。お師匠もそうしろって言ってるし、ここに私が居ても邪魔なだけ。……そう、お師匠のため。……お師匠のために逃げるの。……それならきっとーー
(逃げるの?)
急に頭に響いた穏やかな女性の声。そんな不思議な事が起きているのに自然と受け入れている自分がいる。
『逃げるんじゃない、私はお師匠の指示通りに!』
(死ぬわよ、あなたのお師匠さん)
『…………っ!!』
さっき、自分を説得……暗示する時に必死に触れないようにしていた事を突きつけられ、さっきまで無くなっていた不安が押し寄せて来た。
『………うぅぅぅっ、なら、どうすれば良いの、どうすれば!!』
(簡単だよ、あなたが戦えば良い)
『……え……?』
私が?あんな化け物相手に?お師匠も限界な状態で?………無理に決まってるっ!殺される!2人一緒に!そんなの!そんなのーー
(シャキッとしなさい!!)
『うっ!!』
突然の怒声が頭に響き、酷い頭痛が起きる。
(………あなたのお師匠さんは絶望してる?)
『…………………え?』
声に言われ、頭を上げてお師匠を見る。いつの間にか戦いが再び始まっていて、お師匠は大男の鋭い爪の連撃と破壊神の1発1発が重そうな拳を何とかさばいていた。体のあちこちに切り傷や打撲痕があっても、絶え間なく致命傷を避けている。そして、その顔は苦痛に歪んでいても、目はしっかりと戦意を灯していた。
『うーん、それより俺は自分が死ぬ事より、他の奴が死ぬ事が怖いな。俺は自分が死ぬ事によって、他の奴が死んで欲しくない。だから………………戦う。例え勝ち目が無くても、不恰好でも、俺は戦う』
『あ、あぁぁ………!』
お師匠が言っていたお師匠の戦う意味。……初めて『共神化』した時にも思い出していた事。あの時も絶望的な状況だった。けど、あの時の私は絶望なんかしてなかった!!
(さあ、行きなさい。私が与えた力はそんな柔なものじゃないから)
『……………"神格の限界を超える"………』
最後のところは自分でもなんて言ったか分からないけど、言い終えた瞬間、身体中から神気が湧き出てくるのを感じる。
『…………これなら戦えるっ!』
私は勢いよく、未だ攻撃をさばき続けているお師匠のところへ向かった………。
『お師匠!!』
「なっ!?」「ぐおっ!!?」「ぐっ!」
私は大男を頭から蹴り飛ばし、そのまま破壊神には神気を纏った脚で回し蹴りを打ち込み、吹っ飛ばした。それを見て、お師匠はかなり驚いていた。
『私、戦えます!』
「……………はあ、お前って奴は化け物じみているな………」
『はいっ!だって、お師匠の弟子なんですもん!!』
「………もうそれでいいや………」
お師匠は呆れそうにしながらも、私をしっかり戦力として数えているようで、私に破壊神を任せ、お師匠は大男の方に体勢を向けていた。
「多分、お前の今の急激な強化は時間制限があるはずだ」
『はい、それは体感的に分かります』
「だから、速攻で決めるぞ。出し惜しみは無しだ。相手が本気になる前に倒せ!!」
『…………はいっ!!』
私を頼っている事に感激して、一瞬返事が遅れたけど、右手に合体済みの『ソウルウェポン』を出して元気良く返事する。
お師匠と背中合わせで立っていると、いきなり私達を囲むように風が巻き上がるけど、魔力がお師匠のものだったから、お師匠の仕業なんだろう。
風が止み、チラッと後ろを見ると、お師匠は6つの鉄球を浮かべ、ゴーグルのようなものを装着していた。これがお師匠の本気なんだろう。
「さあ、行くぞ!!」
『はいっ!お師匠!!!』
===============================
投稿が遅れたのはスルーしていただけると助かります………。
さて、この章も終盤になって来ました。恐らく、この章の次か次の次かで最終章になると思います。………多分。
「よくも!良い素材を逃してくれたな!ユウキっ!!」
怒りにより禍々しい存在を強くしながらお師匠の言う破壊神が私達のところに近づいてくる。
お師匠は冷や汗を流しながら、破壊神といきなり来た男を交互に見ながら技姫さんを構えている。
…………私も心ではお師匠と背中を合わせて戦いと思っているっ!けど、体が動かない!震えが止まらない!『共神化』を維持出来ているのが不思議なくらい…………私の体は戦闘は無意味だと訴えている。
「早く行けっ!」
『……………っ!!ならっ!お師匠も一緒にーー』
(ガキィィィン!!)
私は立ち上がってお師匠の手を掴もうと手を伸ばそうとした時、私の顔に当たるギリギリのところで剣と剣がぶつかり合った。
「………何故阻む?」
「お前こそ、いきなり仕掛けやがって……!」
私は自然に尻餅をついていた。そして、そこから見えたのは、剣では無く、爪を立てていた化け物のような男とその爪を間一髪のところで防いでいてくれていたお師匠が居た。
「……戦場に戦意なき者は要らぬ。戦う意思の無い奴は戦場ではゴミ以下だ!だからさっさと退場願おうと思ったまで。目障りなの、ただピーピー泣く子供は。まあ、そんな奴をいたぶるのは好きだが」
『……………。……私は………』
この大男の言う通り、私はここでは足手まとい。それは私が一番理解してる。……そんな私はお師匠を心配する事もしてはいけないの?私は……………
「確かに、戦場において戦う意思すら無い者は淘汰される」
…………ああ、やっぱりお師匠もーー
「だが、それは大人の場合だ。こいつは子供だ。なら、大人である俺はピーピー泣くこいつを護る必要があるんだよ!」
「ぐぅっ!」
お師匠はそう言い終わるのと同時に大男の横腹を蹴った。普通の蹴りに見えたけど、『殲滅武術』を使ったのか、とてつもない爆風と一緒に大男もぶっ飛んだ。
「…………今は逃げろ。それがお前のすべき事だ」
『…………、うぅあっ、わた……私は……!』
私は必死にお師匠に手を伸ばす。けど、全く届かない。立ち上がれば済む距離なのに、体は立ち上がらない。この距離はまるで、私とお師匠の間にある決して埋められない差のようで………
「ユウキィィィっ!!」
大気を震わすほどの甲高い声の叫び声に、反射的に耳を手で塞ぎ、目を瞑る。
声が止んだようで、さっきまで手をも震わす感覚が無い。恐る恐る手を耳から離し、目を開けるとそこにはお師匠の姿がなかった。
『………え?……一体何処に……』
(ドゴォーンッ!!)
右から岩が砕ける音がして、そこを見てみると、小さな岩の瓦礫の中から打撲の痕だらけのお師匠が現れた。お師匠は私を見ず、真っ直ぐ正面を見つめている。
左を向くとそこには倒れている破壊神が居た。左にも岩があった筈なのに、破片すら見つからない。何かをしたんだろうけど、私にはサッパリ分からない。
「チィ、防いだか」
「…………お前に拳が当たる直前、腹に凄まじい風圧が来た。やっぱり、ユウキは"特異点"と呼ばれる事はある。……鬱陶しいんだよ!ユウキィィィ!!」
「情緒不安定すぎだろ……」
お師匠はそう言いつつ、技姫さんを構え、目の前の破壊神と何処かへ飛んで行った大男の両方を警戒している。
お師匠の事しか見えていない破壊神と邪魔者を排除するかのように私を殺そうとする大男。
…………私が逃げれば良い。お師匠もそうしろって言ってるし、ここに私が居ても邪魔なだけ。……そう、お師匠のため。……お師匠のために逃げるの。……それならきっとーー
(逃げるの?)
急に頭に響いた穏やかな女性の声。そんな不思議な事が起きているのに自然と受け入れている自分がいる。
『逃げるんじゃない、私はお師匠の指示通りに!』
(死ぬわよ、あなたのお師匠さん)
『…………っ!!』
さっき、自分を説得……暗示する時に必死に触れないようにしていた事を突きつけられ、さっきまで無くなっていた不安が押し寄せて来た。
『………うぅぅぅっ、なら、どうすれば良いの、どうすれば!!』
(簡単だよ、あなたが戦えば良い)
『……え……?』
私が?あんな化け物相手に?お師匠も限界な状態で?………無理に決まってるっ!殺される!2人一緒に!そんなの!そんなのーー
(シャキッとしなさい!!)
『うっ!!』
突然の怒声が頭に響き、酷い頭痛が起きる。
(………あなたのお師匠さんは絶望してる?)
『…………………え?』
声に言われ、頭を上げてお師匠を見る。いつの間にか戦いが再び始まっていて、お師匠は大男の鋭い爪の連撃と破壊神の1発1発が重そうな拳を何とかさばいていた。体のあちこちに切り傷や打撲痕があっても、絶え間なく致命傷を避けている。そして、その顔は苦痛に歪んでいても、目はしっかりと戦意を灯していた。
『うーん、それより俺は自分が死ぬ事より、他の奴が死ぬ事が怖いな。俺は自分が死ぬ事によって、他の奴が死んで欲しくない。だから………………戦う。例え勝ち目が無くても、不恰好でも、俺は戦う』
『あ、あぁぁ………!』
お師匠が言っていたお師匠の戦う意味。……初めて『共神化』した時にも思い出していた事。あの時も絶望的な状況だった。けど、あの時の私は絶望なんかしてなかった!!
(さあ、行きなさい。私が与えた力はそんな柔なものじゃないから)
『……………"神格の限界を超える"………』
最後のところは自分でもなんて言ったか分からないけど、言い終えた瞬間、身体中から神気が湧き出てくるのを感じる。
『…………これなら戦えるっ!』
私は勢いよく、未だ攻撃をさばき続けているお師匠のところへ向かった………。
『お師匠!!』
「なっ!?」「ぐおっ!!?」「ぐっ!」
私は大男を頭から蹴り飛ばし、そのまま破壊神には神気を纏った脚で回し蹴りを打ち込み、吹っ飛ばした。それを見て、お師匠はかなり驚いていた。
『私、戦えます!』
「……………はあ、お前って奴は化け物じみているな………」
『はいっ!だって、お師匠の弟子なんですもん!!』
「………もうそれでいいや………」
お師匠は呆れそうにしながらも、私をしっかり戦力として数えているようで、私に破壊神を任せ、お師匠は大男の方に体勢を向けていた。
「多分、お前の今の急激な強化は時間制限があるはずだ」
『はい、それは体感的に分かります』
「だから、速攻で決めるぞ。出し惜しみは無しだ。相手が本気になる前に倒せ!!」
『…………はいっ!!』
私を頼っている事に感激して、一瞬返事が遅れたけど、右手に合体済みの『ソウルウェポン』を出して元気良く返事する。
お師匠と背中合わせで立っていると、いきなり私達を囲むように風が巻き上がるけど、魔力がお師匠のものだったから、お師匠の仕業なんだろう。
風が止み、チラッと後ろを見ると、お師匠は6つの鉄球を浮かべ、ゴーグルのようなものを装着していた。これがお師匠の本気なんだろう。
「さあ、行くぞ!!」
『はいっ!お師匠!!!』
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