ただの世界最強の村人と双子の弟子
第85話 追撃者
===オリナ視点========================
「……………………う…」
うめき声が聞こえたから振り返ると、気を失っていたエルフが目を覚まして立ち上がっておった。
「おお、起きたか」
「…………あれ?あの男は?」
「……あやつならあそこじゃ」
辺りを見渡して奴を探しているので、ちょっと周りから見えにくい、岩の影を指差す。そこに奴を移動させたからの。
「……………この傷は……」
エルフは、眉間から後頭部までしっかりと綺麗に貫通している傷を見て、驚きと喜びが混ざったかのような表情になる。
「………知っておるのか?言っておくが、魔法では無さそうな傷じゃぞ?」
「………この傷はユウキがたまに使っていた『銃』と呼ばれる武器による傷よ」
「……っ!本当か!?」
「………ええ、本当よ!」
一瞬、信じられんかったが、エルフの自信満々な表情を見て、嬉しくなる。
……………そうか!ご主人が妾達を助けてくれおったのか!
「………………ご主人は強化した視界でも見えなかったという事は、かなり遠くから攻撃したという事か……!そのような武器を所持しているとはな………」
「…………?何か言った?」
「いや!何でもない!取り敢えず、妾達は皆が無事起きた後にご主人が居そうな所に向かうで良いのだな?」
「ええ!勿論よ!!」
そう言うと、エルフは皆に"ハイヒール"をかけていく。そんなに待てんのか?と思うたが、妾もいち早く会いに行きたいから止めはしなかった。
「…………あなた方がユウキ殿のお仲間ですか?」
「「…………っ!?」」
いきなり頭上から聞こえた声に驚き、エルフと背中合わせになって頭上を睨む。そこには《インフェルノドラゴン》と《ブラストドラゴン》、《グランドドラゴン》が一体、二体、二体と妾達の上空にホバリングしておった。
「……身構える必要はありません。私達はユウキ殿にあなた方をお守りするよう言われてきた者です」
《ブラストドラゴン》二体の内の一体が妾とエルフの前で人間の姿で降りてきて話しかけてきおった。
深緑色の鱗を体のあちこちに残し、肩まである鱗と同じような尻尾があり、深緑の髪を肩まで伸ばして、深緑の目で見てくる男か女かも分からない目の前の人は、真っ直ぐな目で見つめてくる。
「…………それじゃあ、あなた達が本当にユウキに頼まれたか確かめても良い?」
「ええ、勿論」
エルフがこの状況で目の前の人に話しかける。こういう事が出来ない妾はまだまだじゃと思う。
「……ユウキの特徴は?」
「黒髮黒目の青年だが、何処か子供らしさが残っている人です」
「……ユウキは何族?」
「人族ですが、正直、種族を超えた何かをお持ちしていそうと思ってしまう謎の人です」
「……ユウキはたらし?」
「ええ、たらしです」
「…………あなたを信じるわ」
「ええ!?」
なんか同じ苦労をし合った者同士のように握手を交わす光景を見て、頭が痛うなる。じゃが……………
「そう思われてもしかないの……」
一年余りしかあやつを知らないが、あれはどう見ても女性に好かれそうな奴じゃ。
「え?あなたは女性なの?」
「ええ、人間のように胸はありません。私達の子供は卵から産まれた時点で普通に肉を食べますから…」
「………ユウキと男女の関係に成りたいと思ってる人は?」
「…………女性陣のほぼ半分と、男性の中でも片手で数えられる程………」
「…………………男からも人気なのね」
「ええ、まあユウキ殿が《バハムート》様の遊び相手という事もありますが、やっぱり先代魔神を討った事が大きいかと」
何やらご主人の事で話が盛り上がっておるが、無視してある方向、魔素で感覚を広げていたから感じ取れた方向を見る。視力の問題で全く何が起きておるのか分からんが、何とも言えない禍々しい力を感じる。………身の毛がよだつと言うより心臓が邪気だけで潰されそうな感覚。
「……あそこで誰か戦っておるのか?」
戦っているとしたらそれはリルかご主人の二択じゃが、どっちにしよ相手はただ者では無さそうじゃぞ。………妾達の力では足手まといどころかその場に居られん程の。
「あぁぁ?あいつが中々帰って来ねえから見に来たらどうなってやがる?」
またまたいきなり感じた魔力と声の方向を見ると、巨大な斧を背負った柄の悪そうな男と背中から10本の腕を生やしたジジイがおった。
「……………そいつらが目的の奴で、お前は誰だぁ?体に何やら竜の鱗らしきものが付いているが………」
「…………気にするな。…ゴホッ、ゴホッ、ゴホッ。我らの姿を見た者は皆殺し。それが我らの掟……」
「……まあ、そうだな。一々殺す奴の事なんかぁ聞く必要ねぇよなぁ!」
とても元神とは思えない言動じゃが、体から出ている魔力や殺気は紛れもなく、神と言えるもの。
「……そうか。貴様らがこの《デットラス》を荒らす不届き者か!?」
そして、竜の特徴を持った女性も、殺気と竜として相応しい程の魔力を放出させ、飛んでいる竜達もそれぞれ人の姿になって降りて来て、同様にあの神達を睨みつける。
《インフェルノドラゴン》は《ブラストドラゴン》の赤バージョンで、《グランドドラゴン》は濃い茶色バージョンだ。
《インフェルノドラゴン》や《ブラストドラゴン》、《グランドドラゴン》は属性竜の中でも最上位に位置する竜で、その実力は街どこか国を簡単に滅ぼせる程。
かつて、どこかの国に《インフェルノドラゴン》が現れた時、その国はなす術なく滅ぼされたが、その国は周りの国から嫌われていた国じゃった事から、知性がかなり高い竜と言われておったが、さっきまでエルフと普通に話していた事からも明らかじゃろう。
そして、《インフェルノドラゴン》達は土地を守る為なら平気で国を滅ぼす程の容赦の無さでも知られておる。先程出た国は、まさに腐った国に土地を駄目にされないようにした《インフェルノドラゴン》の気持ちの現れじゃろう。
きっと、そんな竜達に勝てるのはギリギリ妾達か、リル、ご主人ぐらいじゃろう。冒険者では、討伐記録が無い事からSSSランク冒険者でも無理なんじゃろう。
じゃが、妾達の目の前に居るのはSSSランク冒険者なんぞ軽く超えておる『神の強欲』の構成員。
「……………良いですか、出し惜しみは無しです。連中はかなりの強者だと思ってください」
「…………ええ。それは身で感じています」
エルフと竜達が会話をしているのを聞きながら、妾はあの形態の準備をする。…………はっきり言って、1日に二度の変化は初めで、どうなるか分からんが、しなかったらただ殺されるだけじゃ。
「へぇ~~。俺らと戦おうってか!?まあ確かにあんたらが倒した『研神』は俺らより強えぇ。だが、今のあんたらに負ける程、俺らは弱くねぇんでねぇ!!」
柄の悪い男は軽々と巨大な斧を振り回しながらこっちへゆっくりと近づいて来る。ちょっと距離を離した隣には、背中から生えた手を気持ち悪くバキバキと鳴らしながら、こっちに歩いて来るジジイ。
二人から滲み出る魔力は確かに奴より弱いが、油断ならない魔力量には違いない。
…………全く、ご主人の下に行くのには骨が折れるの。
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「……………………う…」
うめき声が聞こえたから振り返ると、気を失っていたエルフが目を覚まして立ち上がっておった。
「おお、起きたか」
「…………あれ?あの男は?」
「……あやつならあそこじゃ」
辺りを見渡して奴を探しているので、ちょっと周りから見えにくい、岩の影を指差す。そこに奴を移動させたからの。
「……………この傷は……」
エルフは、眉間から後頭部までしっかりと綺麗に貫通している傷を見て、驚きと喜びが混ざったかのような表情になる。
「………知っておるのか?言っておくが、魔法では無さそうな傷じゃぞ?」
「………この傷はユウキがたまに使っていた『銃』と呼ばれる武器による傷よ」
「……っ!本当か!?」
「………ええ、本当よ!」
一瞬、信じられんかったが、エルフの自信満々な表情を見て、嬉しくなる。
……………そうか!ご主人が妾達を助けてくれおったのか!
「………………ご主人は強化した視界でも見えなかったという事は、かなり遠くから攻撃したという事か……!そのような武器を所持しているとはな………」
「…………?何か言った?」
「いや!何でもない!取り敢えず、妾達は皆が無事起きた後にご主人が居そうな所に向かうで良いのだな?」
「ええ!勿論よ!!」
そう言うと、エルフは皆に"ハイヒール"をかけていく。そんなに待てんのか?と思うたが、妾もいち早く会いに行きたいから止めはしなかった。
「…………あなた方がユウキ殿のお仲間ですか?」
「「…………っ!?」」
いきなり頭上から聞こえた声に驚き、エルフと背中合わせになって頭上を睨む。そこには《インフェルノドラゴン》と《ブラストドラゴン》、《グランドドラゴン》が一体、二体、二体と妾達の上空にホバリングしておった。
「……身構える必要はありません。私達はユウキ殿にあなた方をお守りするよう言われてきた者です」
《ブラストドラゴン》二体の内の一体が妾とエルフの前で人間の姿で降りてきて話しかけてきおった。
深緑色の鱗を体のあちこちに残し、肩まである鱗と同じような尻尾があり、深緑の髪を肩まで伸ばして、深緑の目で見てくる男か女かも分からない目の前の人は、真っ直ぐな目で見つめてくる。
「…………それじゃあ、あなた達が本当にユウキに頼まれたか確かめても良い?」
「ええ、勿論」
エルフがこの状況で目の前の人に話しかける。こういう事が出来ない妾はまだまだじゃと思う。
「……ユウキの特徴は?」
「黒髮黒目の青年だが、何処か子供らしさが残っている人です」
「……ユウキは何族?」
「人族ですが、正直、種族を超えた何かをお持ちしていそうと思ってしまう謎の人です」
「……ユウキはたらし?」
「ええ、たらしです」
「…………あなたを信じるわ」
「ええ!?」
なんか同じ苦労をし合った者同士のように握手を交わす光景を見て、頭が痛うなる。じゃが……………
「そう思われてもしかないの……」
一年余りしかあやつを知らないが、あれはどう見ても女性に好かれそうな奴じゃ。
「え?あなたは女性なの?」
「ええ、人間のように胸はありません。私達の子供は卵から産まれた時点で普通に肉を食べますから…」
「………ユウキと男女の関係に成りたいと思ってる人は?」
「…………女性陣のほぼ半分と、男性の中でも片手で数えられる程………」
「…………………男からも人気なのね」
「ええ、まあユウキ殿が《バハムート》様の遊び相手という事もありますが、やっぱり先代魔神を討った事が大きいかと」
何やらご主人の事で話が盛り上がっておるが、無視してある方向、魔素で感覚を広げていたから感じ取れた方向を見る。視力の問題で全く何が起きておるのか分からんが、何とも言えない禍々しい力を感じる。………身の毛がよだつと言うより心臓が邪気だけで潰されそうな感覚。
「……あそこで誰か戦っておるのか?」
戦っているとしたらそれはリルかご主人の二択じゃが、どっちにしよ相手はただ者では無さそうじゃぞ。………妾達の力では足手まといどころかその場に居られん程の。
「あぁぁ?あいつが中々帰って来ねえから見に来たらどうなってやがる?」
またまたいきなり感じた魔力と声の方向を見ると、巨大な斧を背負った柄の悪そうな男と背中から10本の腕を生やしたジジイがおった。
「……………そいつらが目的の奴で、お前は誰だぁ?体に何やら竜の鱗らしきものが付いているが………」
「…………気にするな。…ゴホッ、ゴホッ、ゴホッ。我らの姿を見た者は皆殺し。それが我らの掟……」
「……まあ、そうだな。一々殺す奴の事なんかぁ聞く必要ねぇよなぁ!」
とても元神とは思えない言動じゃが、体から出ている魔力や殺気は紛れもなく、神と言えるもの。
「……そうか。貴様らがこの《デットラス》を荒らす不届き者か!?」
そして、竜の特徴を持った女性も、殺気と竜として相応しい程の魔力を放出させ、飛んでいる竜達もそれぞれ人の姿になって降りて来て、同様にあの神達を睨みつける。
《インフェルノドラゴン》は《ブラストドラゴン》の赤バージョンで、《グランドドラゴン》は濃い茶色バージョンだ。
《インフェルノドラゴン》や《ブラストドラゴン》、《グランドドラゴン》は属性竜の中でも最上位に位置する竜で、その実力は街どこか国を簡単に滅ぼせる程。
かつて、どこかの国に《インフェルノドラゴン》が現れた時、その国はなす術なく滅ぼされたが、その国は周りの国から嫌われていた国じゃった事から、知性がかなり高い竜と言われておったが、さっきまでエルフと普通に話していた事からも明らかじゃろう。
そして、《インフェルノドラゴン》達は土地を守る為なら平気で国を滅ぼす程の容赦の無さでも知られておる。先程出た国は、まさに腐った国に土地を駄目にされないようにした《インフェルノドラゴン》の気持ちの現れじゃろう。
きっと、そんな竜達に勝てるのはギリギリ妾達か、リル、ご主人ぐらいじゃろう。冒険者では、討伐記録が無い事からSSSランク冒険者でも無理なんじゃろう。
じゃが、妾達の目の前に居るのはSSSランク冒険者なんぞ軽く超えておる『神の強欲』の構成員。
「……………良いですか、出し惜しみは無しです。連中はかなりの強者だと思ってください」
「…………ええ。それは身で感じています」
エルフと竜達が会話をしているのを聞きながら、妾はあの形態の準備をする。…………はっきり言って、1日に二度の変化は初めで、どうなるか分からんが、しなかったらただ殺されるだけじゃ。
「へぇ~~。俺らと戦おうってか!?まあ確かにあんたらが倒した『研神』は俺らより強えぇ。だが、今のあんたらに負ける程、俺らは弱くねぇんでねぇ!!」
柄の悪い男は軽々と巨大な斧を振り回しながらこっちへゆっくりと近づいて来る。ちょっと距離を離した隣には、背中から生えた手を気持ち悪くバキバキと鳴らしながら、こっちに歩いて来るジジイ。
二人から滲み出る魔力は確かに奴より弱いが、油断ならない魔力量には違いない。
…………全く、ご主人の下に行くのには骨が折れるの。
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