ただの世界最強の村人と双子の弟子
第84話 オリナの本気
===オリナ視点========================
「貴様………っ!!」
妾は猛スピードで、胸を貫かれて地面に倒れそうになる二人を擦り抜け様に受け取る。二人は持ち前の生命力で息はしておるが、意識は無い。恐らく、傷の修復を最優先しておるのじゃろう。
「…………………何だそれは?」
前を通り過ぎた妾を向きながら、青年は興奮を抑えているかのように、目をキラキラさせながら妾の全身を見ておる。
今の妾の姿は、攻武との修行で身に付けた姿。戦闘がそれほど上手くない妾は、ご主人のキツイ修行や、一方的な守姫のいじめにも耐え抜いたが、それでもリリやルルには遠く及ばず、足手まといでしか無かった。
じゃから、攻武との修行で魔素を取り込んで体を強く変える方法を身に付けた。
今の妾は頭から中心に向かう曲線のような臙脂色の高さが20cmくらいのツノが左右から生えており、体は元の筋肉が無さそうな体から筋肉が浮かぶくらい屈強な体になり、真っ黒な布が妾の恥部を隠し、手の爪が指くらいまで伸びて、頭まで届く尻尾が生えておる。
この姿は魔法中心の元の体から肉体での戦闘に寄せた体になっており、実力はあの時点で攻武が本気になるほどあるが、こやつに勝てるかどうかは分からん。じゃが、ここで逃げ出すほど、妾は臆病ではない!!
『その形態は保って10分程度だ。それが切れたらお前は確実に負ける。気をつけろ』
攻武に言われた制限時間は、未だ伸ばせてないが、気にした事ではないわ!!
「いくぞ!魔の神の恐怖を見せてやるわっ!!」
「…………へぇ。君が魔神だったのか」
奴は一斉に危険極まりない光の筋を妾に一直線に放って来るが、その動きはとても遅く、容易く躱せる。
「……………」
妾は光の筋を躱しながら両手に魔素を固めて作った真っ黒な片手剣を持って、奴に斬りかかる。
「はあぁっ!!」
「…………おっと」
両手から振り下ろした剣を飛び退いて躱し、光の筋を一旦消滅させてから奴の体から光の筋を発生させて妾に一斉に放つ。
「"魔素障壁"」
それを固めた魔素の壁で防ぐ。じゃが、そんな物であの光の筋は耐え切れず、霧散するが、"ライトニング"を足に纏ってスピードを上げて妾が奴の背後に回り込むには充分過ぎる時間稼ぎじゃった。
「くらえっ!!」
「ぐっ!ううぅぅっ!!」
背中に縦の中々深い斬り傷を受けた奴はそのまま地面に倒れるが、前転をして体勢を立て直して妾と距離を取りつつ、向かい合う。その顔は先程までの余裕の表情では無く、汗を滲ませながらこちらを睨むその顔は人より上に立つ神とは違っとった。
「…………これは、是非、データ……、として、残して、おきますよ………」
「……残せたらの!!」
今の良い流れを決して逃す訳にはいかん!
妾は奴めがけて魔素で作った槍を投擲し、その後、再びふた振りの片手剣を持って駆け出す。
奴は投擲された槍を光の筋で貫通させて、妾を貫かんとする。
今まさにぶつかるその寸前で、妾と光の筋との間に魔素で作った鏡を出し、向かってくる光の筋と鏡で反射した光の筋で相殺させる。ぶつかり合った光の筋は濁った白い煙を出す。その中に迷いなく入り込み、両手に持った剣をクロスさせて煙から出る。
光の筋で妾を殺せたと思い込んでいた奴は、急いで光の筋を出そうとするが、もう遅い。
「見よう見まねの"双剣滅却衝"!!!」
「ぐぅぅぅあぁぁぁぁっ!!!」
妾が初めてこの形態になった時、攻武との戦いで受けた技。擬似的な技だと言っていたけど、かなりの威力があったから真似したかった技。
魔素で作った剣から魔素の斬撃へと変換して放つクロスとなった魔素の斬撃は、奴の体に深い傷を作るだけに留まらず、そのまま吹っ飛んで小さな山にぶつかり、その山は崩れて奴は埋まった。ここの山は火山地帯なだけあって岩だけの山じゃから、さぞかし痛いじゃろうが、助けはせん。
「はぁ、はぁ、はぁ」(シュ~~~~)
丁度、制限時間が来て、体から魔素が抜けて弱っていくのを感じる。あの形態は無理矢理妾の体を作り変えるから、動けるようになるまで3分かかるし、『魔素支配』も使えん。そして、3分経っても戦えるようになるまで10分はかかってしまうから、今のこの時間が最も危険なのじゃ。
「…………………………ふふ」(ガラガラ)
「………っ!?」
奴の笑い声が微かに聞こえ、崩れた山を見ると、積み重なった岩が徐々に盛り上がっている。戦闘体勢を取りたいが、今は指一つ動かせん。
(バコン!!)「…………………ふぅ。中々危なかったですよ」
大きな音を立てて盛り上がっていた岩が吹き飛んだかと思いきや、背後から声が聞こえる。首をバキバキと鳴らしながらこちらを見つめるような視線を感じるが、妾は振り返る事すら出来ん。
「…………あれ?なんか元の姿に戻ってる?………まあ、持って帰って調べれば分かるか」
奴は妾の首を掴んで持ち上げ、歩き出す。首が苦しいし、抵抗したいが、声も出せん。くそっ!あそこまでしても妾は弱者なのか!?
「…………………ん?」
(ドゴォーン!)
聞いた事も無い爆発音が聞こえたかと思いきや、首を掴んでいた手に力が抜けたようで、妾は地面に落ちる。幸いな事に仰向けに倒れたので、奴を見てみると、奴の眉間に指の太さ分の穴が空いていて、そこから血が出ておった。
(バタン)
そのまま うつ伏せに妾の隣に倒れた奴はそれから指一つ動かさず、血を流して倒れたままじゃった………。
===ユウキ時点========================
「ふぅ、これで大丈夫だな」
俺はスコープからオリナを掴んでいた男の生死を確認してから目を離す。
(お見事でした)
いやいや、技姫のおかげだよ。
俺は後何10cmかあったら俺の背丈と同じぐらいの長さになるスナイパーライフルを元の日本刀の姿に戻しながら周りを見渡す。
ここ辺りは攻め込まれて無いけど、少し離れた所では並々ならぬ魔力の反応や、禍々しい気配などが感じられる。
これは早く向かった方が良い。
「じゃあ、お願いする」
「相分かった。皆の者!今こそ竜の民の力を見せつけようぞ!!」
「「「「「「「「「おおぉぉぉぉ!!!」」」」」」」」」
隣に居た竜族の長の息子、ドラコに声をかける。それだけで察したドラコは40人程の体の至る所に竜の鱗や人型に合わせた尻尾がある竜族に語りかける。ドラコは人望があるから皆、竜に戻りながら雄叫びを上げる。
「………我らはユウキの仲間を守るだけで良い!良いが、ユウキの仲間に仇なす者はただ者ではない!!人間がそんな連中と戦っているのに竜の民の力を振るわなくて良いと思うか!!?」
色んな種類の竜が集まる光景は流石に壮観で、少し感動するが、ドラコのたきつけを聞いた竜達は、口を空に向けて叫ぶ。
「「「「「「「「「竜の民の力を!竜の民の力を!栄えある友の為に!!」」」」」」」」」
「ならっ!行け!!友の仲間を守る為!竜の民の力を見せつける為!!《デットラス》を荒らした不届き者に制裁を与える為に!!」
ドラコの最後の士気上げを聞いた竜達は何体かに分かれて飛び立った。
「…………すまないな、俺の問題に巻き込ませて」
「……気にするな、《バハムート》様に構ってくれてこちらも感謝しているからな」
「………ありがとう。……悪いけど、もう少し付き合ってくれ」
「……………ふっ、今日は人生の中で最も楽しくなるかもな」
俺とドラコは今いる山の中腹辺りにある洞窟から麓にいる男を見据えた……。
===============================
話の題名に悩む日々が続いています。
「貴様………っ!!」
妾は猛スピードで、胸を貫かれて地面に倒れそうになる二人を擦り抜け様に受け取る。二人は持ち前の生命力で息はしておるが、意識は無い。恐らく、傷の修復を最優先しておるのじゃろう。
「…………………何だそれは?」
前を通り過ぎた妾を向きながら、青年は興奮を抑えているかのように、目をキラキラさせながら妾の全身を見ておる。
今の妾の姿は、攻武との修行で身に付けた姿。戦闘がそれほど上手くない妾は、ご主人のキツイ修行や、一方的な守姫のいじめにも耐え抜いたが、それでもリリやルルには遠く及ばず、足手まといでしか無かった。
じゃから、攻武との修行で魔素を取り込んで体を強く変える方法を身に付けた。
今の妾は頭から中心に向かう曲線のような臙脂色の高さが20cmくらいのツノが左右から生えており、体は元の筋肉が無さそうな体から筋肉が浮かぶくらい屈強な体になり、真っ黒な布が妾の恥部を隠し、手の爪が指くらいまで伸びて、頭まで届く尻尾が生えておる。
この姿は魔法中心の元の体から肉体での戦闘に寄せた体になっており、実力はあの時点で攻武が本気になるほどあるが、こやつに勝てるかどうかは分からん。じゃが、ここで逃げ出すほど、妾は臆病ではない!!
『その形態は保って10分程度だ。それが切れたらお前は確実に負ける。気をつけろ』
攻武に言われた制限時間は、未だ伸ばせてないが、気にした事ではないわ!!
「いくぞ!魔の神の恐怖を見せてやるわっ!!」
「…………へぇ。君が魔神だったのか」
奴は一斉に危険極まりない光の筋を妾に一直線に放って来るが、その動きはとても遅く、容易く躱せる。
「……………」
妾は光の筋を躱しながら両手に魔素を固めて作った真っ黒な片手剣を持って、奴に斬りかかる。
「はあぁっ!!」
「…………おっと」
両手から振り下ろした剣を飛び退いて躱し、光の筋を一旦消滅させてから奴の体から光の筋を発生させて妾に一斉に放つ。
「"魔素障壁"」
それを固めた魔素の壁で防ぐ。じゃが、そんな物であの光の筋は耐え切れず、霧散するが、"ライトニング"を足に纏ってスピードを上げて妾が奴の背後に回り込むには充分過ぎる時間稼ぎじゃった。
「くらえっ!!」
「ぐっ!ううぅぅっ!!」
背中に縦の中々深い斬り傷を受けた奴はそのまま地面に倒れるが、前転をして体勢を立て直して妾と距離を取りつつ、向かい合う。その顔は先程までの余裕の表情では無く、汗を滲ませながらこちらを睨むその顔は人より上に立つ神とは違っとった。
「…………これは、是非、データ……、として、残して、おきますよ………」
「……残せたらの!!」
今の良い流れを決して逃す訳にはいかん!
妾は奴めがけて魔素で作った槍を投擲し、その後、再びふた振りの片手剣を持って駆け出す。
奴は投擲された槍を光の筋で貫通させて、妾を貫かんとする。
今まさにぶつかるその寸前で、妾と光の筋との間に魔素で作った鏡を出し、向かってくる光の筋と鏡で反射した光の筋で相殺させる。ぶつかり合った光の筋は濁った白い煙を出す。その中に迷いなく入り込み、両手に持った剣をクロスさせて煙から出る。
光の筋で妾を殺せたと思い込んでいた奴は、急いで光の筋を出そうとするが、もう遅い。
「見よう見まねの"双剣滅却衝"!!!」
「ぐぅぅぅあぁぁぁぁっ!!!」
妾が初めてこの形態になった時、攻武との戦いで受けた技。擬似的な技だと言っていたけど、かなりの威力があったから真似したかった技。
魔素で作った剣から魔素の斬撃へと変換して放つクロスとなった魔素の斬撃は、奴の体に深い傷を作るだけに留まらず、そのまま吹っ飛んで小さな山にぶつかり、その山は崩れて奴は埋まった。ここの山は火山地帯なだけあって岩だけの山じゃから、さぞかし痛いじゃろうが、助けはせん。
「はぁ、はぁ、はぁ」(シュ~~~~)
丁度、制限時間が来て、体から魔素が抜けて弱っていくのを感じる。あの形態は無理矢理妾の体を作り変えるから、動けるようになるまで3分かかるし、『魔素支配』も使えん。そして、3分経っても戦えるようになるまで10分はかかってしまうから、今のこの時間が最も危険なのじゃ。
「…………………………ふふ」(ガラガラ)
「………っ!?」
奴の笑い声が微かに聞こえ、崩れた山を見ると、積み重なった岩が徐々に盛り上がっている。戦闘体勢を取りたいが、今は指一つ動かせん。
(バコン!!)「…………………ふぅ。中々危なかったですよ」
大きな音を立てて盛り上がっていた岩が吹き飛んだかと思いきや、背後から声が聞こえる。首をバキバキと鳴らしながらこちらを見つめるような視線を感じるが、妾は振り返る事すら出来ん。
「…………あれ?なんか元の姿に戻ってる?………まあ、持って帰って調べれば分かるか」
奴は妾の首を掴んで持ち上げ、歩き出す。首が苦しいし、抵抗したいが、声も出せん。くそっ!あそこまでしても妾は弱者なのか!?
「…………………ん?」
(ドゴォーン!)
聞いた事も無い爆発音が聞こえたかと思いきや、首を掴んでいた手に力が抜けたようで、妾は地面に落ちる。幸いな事に仰向けに倒れたので、奴を見てみると、奴の眉間に指の太さ分の穴が空いていて、そこから血が出ておった。
(バタン)
そのまま うつ伏せに妾の隣に倒れた奴はそれから指一つ動かさず、血を流して倒れたままじゃった………。
===ユウキ時点========================
「ふぅ、これで大丈夫だな」
俺はスコープからオリナを掴んでいた男の生死を確認してから目を離す。
(お見事でした)
いやいや、技姫のおかげだよ。
俺は後何10cmかあったら俺の背丈と同じぐらいの長さになるスナイパーライフルを元の日本刀の姿に戻しながら周りを見渡す。
ここ辺りは攻め込まれて無いけど、少し離れた所では並々ならぬ魔力の反応や、禍々しい気配などが感じられる。
これは早く向かった方が良い。
「じゃあ、お願いする」
「相分かった。皆の者!今こそ竜の民の力を見せつけようぞ!!」
「「「「「「「「「おおぉぉぉぉ!!!」」」」」」」」」
隣に居た竜族の長の息子、ドラコに声をかける。それだけで察したドラコは40人程の体の至る所に竜の鱗や人型に合わせた尻尾がある竜族に語りかける。ドラコは人望があるから皆、竜に戻りながら雄叫びを上げる。
「………我らはユウキの仲間を守るだけで良い!良いが、ユウキの仲間に仇なす者はただ者ではない!!人間がそんな連中と戦っているのに竜の民の力を振るわなくて良いと思うか!!?」
色んな種類の竜が集まる光景は流石に壮観で、少し感動するが、ドラコのたきつけを聞いた竜達は、口を空に向けて叫ぶ。
「「「「「「「「「竜の民の力を!竜の民の力を!栄えある友の為に!!」」」」」」」」」
「ならっ!行け!!友の仲間を守る為!竜の民の力を見せつける為!!《デットラス》を荒らした不届き者に制裁を与える為に!!」
ドラコの最後の士気上げを聞いた竜達は何体かに分かれて飛び立った。
「…………すまないな、俺の問題に巻き込ませて」
「……気にするな、《バハムート》様に構ってくれてこちらも感謝しているからな」
「………ありがとう。……悪いけど、もう少し付き合ってくれ」
「……………ふっ、今日は人生の中で最も楽しくなるかもな」
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