ただの世界最強の村人と双子の弟子
第59話 アイとティフィラさん
===ルル視点========================
「私はアンデットになった影響で『昇華』を全力じゃなかったら常に使えるようになり、並外れた力とアンデット特有の超回復、食事や休息が必要としない体をフルに使ってお姉ちゃんを探し続けました」
多分、私も姉さんがいなくなったらそうすると思う。アンデットにもなると思う。
アンデットになるには、そういった儀式をするか強い後悔や憎しみなどこの世に未練を残しているかのどちらか。一度なったら元に戻れないし、どんなに弱い光属性魔法でも致命傷になりかねない事になる。けど、私もそんなリスクを負ってでも姉さんのためにアンデットになると思う。
「そして、漸く見つけた時、お姉ちゃんは変わっていた。優しかった筈のお姉ちゃんは感情を失くしてただの人形のようになっていた!私の事も忘れ!ユウキ、ユウキと呟きながら武闘大会に出ていたお姉ちゃんを見て、ユウキが私からお姉ちゃんを奪ったんだと思ってしまったんです!!勿論!研究者が一番悪いのは分かってた!けど、その研究者はいない!この怒りをぶつける相手が!ユウキの他にいなかったんです!!!」
アイは最後辺りで泣き始めた。自分が間違っていると分かっていたのにそれを間違いとは思っていなかった事を情けなく思っているのかも知れない。
泣き崩れ、両手で顔を覆い隠して泣くアイの側にティフィラさんは立ち、右手を思いっきりアイのほお辺りをぶった。アイはそのままぶたれた勢いのまま、右肩を下にして倒れる。両手で顔を覆い隠していたのに、関係無く振るった手はアイに確かなダメージを与えたみたいで、アイの左ほっぺは赤くなっている。けど、アイは体を起こそうとせず、ただ涙を流しているだけでピクリとも動こうとしない。
そんな様子にティフィラさんは痺れを切らしたのか、アイの胸倉を左手で掴んで体を起こさせ、また、ぶつ。今度は胸倉を掴まれているから倒れる事が出来ず、そのまま左ほっぺをぶたれたままの状態になる。
また同じところをぶつティフィラさんとそれを抵抗せずに受けるアイ。
(ビシッ!バシッ!バチン!)
ほっぺをぶたれる音が鳴り続け、アイは血を口から流し始めた。
アンデットでも血はあるが、その血は栄養分も何も無い。アンデットにはそもそも血は必要としないから、ただある液体という感じだが、姉さんはそれを見ていられなかったようで、血が付き始めていたティフィラさんの右手を掴む。
「やり過ぎです!いくら、相手が悪いからといって、何でもやっていい訳じゃないんですよ!?」
姉さんの制止の声で、漸く、ティフィラさんは胸倉を掴んでいた手を強引に払い、アイは投げ出される。
「大丈夫!?」
「…………………平気です」
アイの言った通り、10秒も経てば何事もなかったように綺麗なほっぺに戻る。
「…………ユウキとイアの出会いを教えてあげるわ。その時、私もクソ野郎も居たから知ってるの」
ティフィラさんは淡々と話し始めた。それをエルガさんは何も言わず、黙って聞いている。私も姉さんもアイも静かに聞く事にした。
「………私達はある日、私達の脱走を知った研究者に狙われた。当然、返り討ちにしたけど、ユウキは何人か生き残らせて、他にも誰かに実験をさせているのかを聞き出した。それがイアよ」
「……………!!」
アイは目を見開き、もうお師匠様が何をやってくれたのかを察したようで、さらに涙を流し始めた。
「ユウキは行ったことの無い所に"転移"を使ってまでイアを助けに行った。見事、救出でき、その時泊まっていた宿でイアが目覚めるのを待ったわ。でも、イアは1週間経っても目覚めない。不思議に思ったユウキは、イアがいた実験所にまた行って資料を探したら、イアは記憶の全消去をされていた事が分かったの」
行ったことの無い場所に転移するのは自殺行為に等しい。なぜなら、行ったことのない場所をまず、どうやって特定するのか?他人から聞いた情報などで知ってもそれをしっかりその人が見た光景と同じようにイメージし、座標を特定しなければならない。失敗すれば、海の中や地面の中に体がバラバラに転移する可能性が高い。だからこそ、転移は行ったことのあるところでしか使えないのが常識だ。
「そこで、ユウキは資料に書かれていた"イアは完全服従出来る兵器"という記述を見て、「俺がマスターだ」と言ったらあっさり目を覚ましたわ。まるで、魔導具を起動させた時のように」
アイはさっきから嗚咽が出るほど泣き続けている。体は震え、手を弱々しく地面に叩きつけながらなお泣き続けている。
「それからユウキはイアに感情が芽生えるように色んな事をさせて、つきっきりで面倒を見ていたわ。まるで、兄と妹のように………。けど、ユウキはある日、姿を消した。イアに通信石を渡すように伝え、イアには武闘大会などに出て金をしっかり稼いで人間らしい生活をするように命令もしてね」
「…………ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい………」
アイは地面におでこを擦り付けながら、謝り続けた。姉の恩人であるお師匠様を憎んでいた事を。
「そんな謝罪は本人の前でしてくれる?それより、イアは今、どこにいるの?」
本当にどうでも良さそうに切り捨て、相手を無視して質問するティフィラさん。
「…………分かりません。再会した時に私の知っているお姉ちゃんじゃないと分かった瞬間、逃げ出してしまいましたから」
血が滴る顔を上げて、申し訳なさそうに答えるアイにティフィラさんはため息をつく。
「取り敢えず、今日は宿に戻らない?もう、予選終わってるし、本選は明日からだから」
エルガさんに言われて周りを見渡してみたら、申し訳なさそうにこちらを見る職員しかいなかった………。
「はぁ、どうして事情聴取されないといけないの?」
「いや、はたから見たら、いたいけな少女に4人がかりで虐めているように見えますからね!?」
職員に2時間も事情聴取をされ、全員精神的に疲れ、ゆっくりと宿へと向かう。アイも勿論、連れて来ている。まだまだ聞きたい事は山ほどあるからだ。
「「「ただいま~~」」」
「お、帰ったか」
いつも通り、オリナが出迎えてくれる。アイはオリナを見て、凄く驚いているけど、気にせず部屋で寝転ぶ。
「あ、あなた!!魔族!?」
「お、おいっ!こやつは何者じゃ!?」
変に警戒しあっている2人を放って、同じく寝転んでいる姉さんにゴロゴロと転がりながら近づき、約束した事をやってもらう。
「…………姉さん、膝枕」
「あ………。うん、分かったよ」
姉さんも疲れている筈なのに、快く膝枕をしてくれる。ああ………!最高………!
あ、意識が遠くなってきた。このまま、姉さんの顔を下から眺めようと思ったけど、このまま寝た方が撫でて貰えたりするかも知れないし、釣られて寝てくれたら、起きた時に寝顔を見れるかも知れない。……なるべく、姉さんが寝ている時に起きますように!と願いながら、意識を手放した…………。
===シャルティ視点=======================
「…………あの二回戦に出ていた子供2人は…………」
「ええ、恐らくリリ・ギティールとルル・ギティールね。向こうは全く覚えていなかったみたいだけど」
あの双子にあったのは、あの双子がまだ1歳くらいの時だった筈。それなら、覚えていなくてもおかしくはないわ。
けど、気になるのは…………
「もし、そうだとしたら、どうやってあの惨状から生き延びたんでしょうか?」
「さあ?もしかしたら、とんでもない人に助けられたのかも知れないわね」
===============================
久しぶりにリリとルルの家名が出ましたね
「私はアンデットになった影響で『昇華』を全力じゃなかったら常に使えるようになり、並外れた力とアンデット特有の超回復、食事や休息が必要としない体をフルに使ってお姉ちゃんを探し続けました」
多分、私も姉さんがいなくなったらそうすると思う。アンデットにもなると思う。
アンデットになるには、そういった儀式をするか強い後悔や憎しみなどこの世に未練を残しているかのどちらか。一度なったら元に戻れないし、どんなに弱い光属性魔法でも致命傷になりかねない事になる。けど、私もそんなリスクを負ってでも姉さんのためにアンデットになると思う。
「そして、漸く見つけた時、お姉ちゃんは変わっていた。優しかった筈のお姉ちゃんは感情を失くしてただの人形のようになっていた!私の事も忘れ!ユウキ、ユウキと呟きながら武闘大会に出ていたお姉ちゃんを見て、ユウキが私からお姉ちゃんを奪ったんだと思ってしまったんです!!勿論!研究者が一番悪いのは分かってた!けど、その研究者はいない!この怒りをぶつける相手が!ユウキの他にいなかったんです!!!」
アイは最後辺りで泣き始めた。自分が間違っていると分かっていたのにそれを間違いとは思っていなかった事を情けなく思っているのかも知れない。
泣き崩れ、両手で顔を覆い隠して泣くアイの側にティフィラさんは立ち、右手を思いっきりアイのほお辺りをぶった。アイはそのままぶたれた勢いのまま、右肩を下にして倒れる。両手で顔を覆い隠していたのに、関係無く振るった手はアイに確かなダメージを与えたみたいで、アイの左ほっぺは赤くなっている。けど、アイは体を起こそうとせず、ただ涙を流しているだけでピクリとも動こうとしない。
そんな様子にティフィラさんは痺れを切らしたのか、アイの胸倉を左手で掴んで体を起こさせ、また、ぶつ。今度は胸倉を掴まれているから倒れる事が出来ず、そのまま左ほっぺをぶたれたままの状態になる。
また同じところをぶつティフィラさんとそれを抵抗せずに受けるアイ。
(ビシッ!バシッ!バチン!)
ほっぺをぶたれる音が鳴り続け、アイは血を口から流し始めた。
アンデットでも血はあるが、その血は栄養分も何も無い。アンデットにはそもそも血は必要としないから、ただある液体という感じだが、姉さんはそれを見ていられなかったようで、血が付き始めていたティフィラさんの右手を掴む。
「やり過ぎです!いくら、相手が悪いからといって、何でもやっていい訳じゃないんですよ!?」
姉さんの制止の声で、漸く、ティフィラさんは胸倉を掴んでいた手を強引に払い、アイは投げ出される。
「大丈夫!?」
「…………………平気です」
アイの言った通り、10秒も経てば何事もなかったように綺麗なほっぺに戻る。
「…………ユウキとイアの出会いを教えてあげるわ。その時、私もクソ野郎も居たから知ってるの」
ティフィラさんは淡々と話し始めた。それをエルガさんは何も言わず、黙って聞いている。私も姉さんもアイも静かに聞く事にした。
「………私達はある日、私達の脱走を知った研究者に狙われた。当然、返り討ちにしたけど、ユウキは何人か生き残らせて、他にも誰かに実験をさせているのかを聞き出した。それがイアよ」
「……………!!」
アイは目を見開き、もうお師匠様が何をやってくれたのかを察したようで、さらに涙を流し始めた。
「ユウキは行ったことの無い所に"転移"を使ってまでイアを助けに行った。見事、救出でき、その時泊まっていた宿でイアが目覚めるのを待ったわ。でも、イアは1週間経っても目覚めない。不思議に思ったユウキは、イアがいた実験所にまた行って資料を探したら、イアは記憶の全消去をされていた事が分かったの」
行ったことの無い場所に転移するのは自殺行為に等しい。なぜなら、行ったことのない場所をまず、どうやって特定するのか?他人から聞いた情報などで知ってもそれをしっかりその人が見た光景と同じようにイメージし、座標を特定しなければならない。失敗すれば、海の中や地面の中に体がバラバラに転移する可能性が高い。だからこそ、転移は行ったことのあるところでしか使えないのが常識だ。
「そこで、ユウキは資料に書かれていた"イアは完全服従出来る兵器"という記述を見て、「俺がマスターだ」と言ったらあっさり目を覚ましたわ。まるで、魔導具を起動させた時のように」
アイはさっきから嗚咽が出るほど泣き続けている。体は震え、手を弱々しく地面に叩きつけながらなお泣き続けている。
「それからユウキはイアに感情が芽生えるように色んな事をさせて、つきっきりで面倒を見ていたわ。まるで、兄と妹のように………。けど、ユウキはある日、姿を消した。イアに通信石を渡すように伝え、イアには武闘大会などに出て金をしっかり稼いで人間らしい生活をするように命令もしてね」
「…………ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい………」
アイは地面におでこを擦り付けながら、謝り続けた。姉の恩人であるお師匠様を憎んでいた事を。
「そんな謝罪は本人の前でしてくれる?それより、イアは今、どこにいるの?」
本当にどうでも良さそうに切り捨て、相手を無視して質問するティフィラさん。
「…………分かりません。再会した時に私の知っているお姉ちゃんじゃないと分かった瞬間、逃げ出してしまいましたから」
血が滴る顔を上げて、申し訳なさそうに答えるアイにティフィラさんはため息をつく。
「取り敢えず、今日は宿に戻らない?もう、予選終わってるし、本選は明日からだから」
エルガさんに言われて周りを見渡してみたら、申し訳なさそうにこちらを見る職員しかいなかった………。
「はぁ、どうして事情聴取されないといけないの?」
「いや、はたから見たら、いたいけな少女に4人がかりで虐めているように見えますからね!?」
職員に2時間も事情聴取をされ、全員精神的に疲れ、ゆっくりと宿へと向かう。アイも勿論、連れて来ている。まだまだ聞きたい事は山ほどあるからだ。
「「「ただいま~~」」」
「お、帰ったか」
いつも通り、オリナが出迎えてくれる。アイはオリナを見て、凄く驚いているけど、気にせず部屋で寝転ぶ。
「あ、あなた!!魔族!?」
「お、おいっ!こやつは何者じゃ!?」
変に警戒しあっている2人を放って、同じく寝転んでいる姉さんにゴロゴロと転がりながら近づき、約束した事をやってもらう。
「…………姉さん、膝枕」
「あ………。うん、分かったよ」
姉さんも疲れている筈なのに、快く膝枕をしてくれる。ああ………!最高………!
あ、意識が遠くなってきた。このまま、姉さんの顔を下から眺めようと思ったけど、このまま寝た方が撫でて貰えたりするかも知れないし、釣られて寝てくれたら、起きた時に寝顔を見れるかも知れない。……なるべく、姉さんが寝ている時に起きますように!と願いながら、意識を手放した…………。
===シャルティ視点=======================
「…………あの二回戦に出ていた子供2人は…………」
「ええ、恐らくリリ・ギティールとルル・ギティールね。向こうは全く覚えていなかったみたいだけど」
あの双子にあったのは、あの双子がまだ1歳くらいの時だった筈。それなら、覚えていなくてもおかしくはないわ。
けど、気になるのは…………
「もし、そうだとしたら、どうやってあの惨状から生き延びたんでしょうか?」
「さあ?もしかしたら、とんでもない人に助けられたのかも知れないわね」
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久しぶりにリリとルルの家名が出ましたね
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