ただの世界最強の村人と双子の弟子

ヒロ

第47話 聞き込みリリ側

===リリ視点========================

 宿で朝食をとって、今は街の中央に位置する大きな闘技場の前にいます。

「今日から聞き込みですよね?」
「ええ、私とリリが街の北側、クソ野郎エルガとルルが南側。まあ、そんなに広くもないから1日もあれば十分。夕方、ここで集合!」
「「はい!!」」「あの~、僕のご飯は?」

 因みにオリナは宿で待機中です。神々の狙いはオリナですから外に出すのは危険という判断だそうです。一応、ティフィラさんの精霊を150体も置いてきたそうなので大丈夫でしょう。さて、エルガさんの事は置いといて、聞き込み開始です!



「ティフィラさん、どこか優先して行くようなところはありますか?」
「ん~、そうねぇ、まずは街にある冒険者ギルドに向かいましょうか」

 この街にも冒険者ギルドはあります。というか、この街で行われる武闘大会は、北側の冒険者ギルドか南側の街の役所でないと手続き出来ません。どちらも同じ方針だと思うけど、念入りに調べようというティフィラさんの考えです。
 でも、ここの住人は獣人族が多いのが特徴なので、変に絡まれたり、厄介ごとに巻き込まれないといいんですが………


「おうおう!なかなか上玉じゃねぇーか!!」
「俺はどっちにしようかな~~?」
「俺は断然エルフ!それは譲らねぇ!!」

 現在、私達は冒険者ギルドへと向かう途中に3人組の獣人族に絡まれています。右から黄色の体毛のモデル・キャット、茶色の体毛のモデル・バード、黒の体毛のモデル・ホークとなっており、体格はかなり強い人族並ですが、獣人族の中では一般人レベル。それほど差があれば獣人族が人族やエルフ族、ドワーフ族を軽視するのは当然な訳で………。でも、相手が悪かったですね、なにせ、ここにいるのは…………

「退けなさい雑魚ども」
「「「ひっ!!」」」

 ティフィラさんがちょい強めに魔力を解放しました。たったそれだけ、それだけで目の前の男達はガタガタを震えだし、しまいには腰を抜かして涙目に失禁。……男の失禁は誰得なんですか?

「あ、そうだ、雑魚達~?今年の武闘大会はどうなるか知ってない?」

 ティフィラさんは、師匠や私達には優しいのですが、エルガさんや興味のない人達にはとことん毒舌で辛辣で容赦がありません。
 男達はティフィラさんの態度から下手したら殺されると思ったのか、急に正座して涙目ながらも必死に敬語で話し始めました。

「今年の武闘大会は無しになるかもしれませんっ!」
「何せ、《オウガ》と《ブリュンビレ》の事件がありましたからね!」
「しかし、伝統になりつつある武闘大会を開催しようと言う声を多くありです!」

 一人だけおかしな敬語になっていたけど、要するに、武闘大会は中止にするのか開催するのかの2つの意見で分かれているってことでしょ。恐らく、中止の意見が街の代表やら武闘大会の主催者や運営の意見で、開催の意見が住人やら過去参加者や今年参加しようとした人達という事になっていると思うけど………。

「この人らの話はともかく、冒険者ギルドに向かった方がいいと思います」
「ええ、私もそう思うわ」

 ティフィラさんも同じ考えに至ったようで、再び冒険者ギルドへと向かい始めました。それを見て、「「「すみませんでした!!!」」」と言いながら男達は土下座。ティフィラさんはそれを無視して歩みを進めます。………結局、あの男達は見えにくくなったところまで行っても土下座しつづけていました………。



「ここがこの街の冒険者ギルドね」

 あの男達に絡まれた事以外、特に問題なく来れました。
 ここの冒険者ギルドは、街の建物と同じレンガ造りになっており、瓦の屋根とか扉とか窓以外は全てレンガ。建物の屋根付近の中央に一般的な丸みを帯びた円錐型の盾が置かれており、その盾には剣と杖が交差する模様が彫られていた。その盾は冒険者ギルドの象徴として飾られているものです。

「さあ、入るわよ」
「はいっ!」

 大きめの木製の扉を開けて中に入ると、そこには冒険者ギルドに基本的に備え付けられている酒場で飲んでいる人達やクエスト一覧で真剣にクエストを選んでいる人達や受付嬢を口説いてる人達などがいましたが、入ってきて思ったのは獣人族多すぎ!!全体の70%くらいいます。

「あ、いらっしゃいませ。依頼の発注ですか?依頼達成手続きですか?」

 驚いて立ち尽くしていると、近くにいた女性職員が話しかけてきました。質問内容からして、私達が初めてここに来たという事は分かっているみたいですね。ここの冒険者の顔はあらかた覚えているのでしょう。
 
「いえ、私達は武闘大会に参加しようと思ってこの街に来たんですが……」
「あ~~なるほど、そうでしたか……」

 ティフィラさんのさりげない質問に、職員は見るからに戸惑い始め、
「実は、今年の武闘大会は中止か開催かも分からない状態でして………」
「そうですか………」

 職員の申し訳なさそうな返答に、ティフィラさんも肩を落とす。やっぱり、いくら職員といえどこの人は下っ端なのでしょう。あの男達と同じ反応です。正確に知るためにはギルドマスターぐらいじゃないと駄目ですね。
 私はティフィラさんにもっと上の階級の人に聞いて欲しいと頼もうとした時、一人のモデル・チーターの獣人族の男がこっちに近寄って来て、

「おいおい!お前らみたいな弱っちい種族の女があの武闘大会に参加なんて身の程を知れよ!軟弱種族共!!」

 罵声を浴びせてきました。その男の罵声を聞いて、周囲の獣人族も笑い出し、他の種族の人達は唇を噛み締め、悔しそうな顔をして佇んでしまってます。職員も目を逸らして何も干渉してきません。このギルドでは獣人族が支配権を握っているかのように感じます。
 普通の人ならキレたり萎縮したりしますが、私とティフィラさんは…………

「「プッ、アハハハハハハッ!!!」」

 あまりのおかしさに笑ってしまいました。空気を読まないといけないと思ってましたけど、どうにもおかしくて……!

「あ?何笑ってやがる?」
「ぶっ殺されてぇのか!?」
「それとも犯してほしいんか!?あぁぁん!?」

 案の定、周りの獣人族は怒り、私達を囲って睨みつけたり、罵声を浴びせてきたりします。私達の周囲には隙間なく獣人族が三層にもなって徐々に詰め寄ってきますが、私達から見れば…………

「リリ、この人らに身の程、いや、格の差を教えてあげなさい」
「普段はこういった事はしたくないんですが………、この街の獣人族中心となっている現状には少し………苛立っていましたからね!」

 私は10%程の魔力を解放する。解放したからって特に変化は訪れないのが雑魚ですが、私は違いますからね。

「「「「「「「「「……………っ!!!」」」」」」」」」

 近くにいた一層目の人達は気絶。恐らくちょっとした脳のダメージによる手足の痺れとかは残るでしょう。二層目の人達は気絶。これといったダメージはありませんが、起きた後もしばらく意識が不安定になるでしょう。三層目の人達は脳の命令信号の一時停止が起こって体が動かないでしょう。まあ、生命活動を維持するための信号は停止してませんし、何らかのダメージも無いんで一番マシですね。

「これが格の差ですよ?軟弱種族さん?」

 私はきっといい笑顔だったと思います………。

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 少し投稿が遅れてしまい、申し訳ありません!

 






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