ただの世界最強の村人と双子の弟子

ヒロ

第10.5話 魔神、冒険者になる

リリとルルがユウキに一瞬で無力化されていた頃…

===魔神視点=====================

   妾は昨日からところどころで休みながら歩き続け、そして今、山を前に迷っておる…。

   防衛都市《ブリュンビレ》に行くには王都《オウガ》との間にある山をどうにかして通過する必要がある。

   その通過方法は2つ。

   1つ目は山を普通に越えるか…。

   2つ目はその山を貫通している身元が分かる人専用の有料のトンネルを通るか……。

   山越えをしようとなると、昨日言っていた2週間ルートになる。

   というか、昨日まではそのルートしか知らなかったのじゃが、今日初めてここに来て知った。

   というか、風呂に入りたい…。

   もう日は橙色になっておった。

   妾の目の前では、山を通る人が多いのか、小さな村があり、どうやら、通行者の援助活動で村を保っているようじゃ。

   村には旅人や冒険者の為に宿屋や酒場、武器屋、防具屋、道具屋、服屋、身元証明の簡単な方法として小さい《冒険者ギルド》もあった…。

   そうか…、人助けの方法として冒険者になるという選択肢もあるのじゃったな…。

   よし!冒険者になるとしようかの!
   
   前まで敵同士じゃったのは気にしない。

   冒険者なら情報収集もしやすいかも知れんからな。

   早速、《冒険者ギルド》に向かい、ドアのない玄関を通り、人が少ない中、手続きを済ませ、『モリー』という名前で仮登録をする。

   モリーにしたのは単にエルフといえば森なので森を伸ばしただけじゃ。

   《冒険者ギルド》は象徴の剣と杖が交差しており、それが楯の絵となっており、ギルド自体は石造のありがちな建物じゃった。

   受付の奴の名前は忘れたが、妾と似たエルフの女じゃった。
   同族だと、はしゃがれた時は少し申し訳なかった。

   同族を殺しまくっている種族の神だなんて言えるはずもないがの…。

   そして、女が言うには本登録は明後日ある入会試験に合格しなければならぬ。

   それまでに適当にクエストでもこなしながら、対策を立てなければな。

   仮登録のランクはFなので、難易度Fのクエストのみ受けられる。

   難易度Fのクエストが貼ってあるクエストボードを見る。

   取り敢えず、難易度F、ゴブリン5体の討伐を受けた。

   早速、山に向かい、ゴブリンを探した。

   といっても、妾は魔神じゃから、魔物の位置は手に取るようにわかる。

   すぐにゴブリン5体を見つけ、魔素で剣を作り、斬り殺す。魔石と討伐証拠の耳を切り取り、妾が暇つぶしで作った"アイテムボックス"に入れてギルドへと戻る。

   ギルドで、アイテムボックスを使った事は驚かれたのじゃが、すぐに、魔石を買い取ってもらえた。

「買取価格は魔石1個につき、銀貨2枚なので、合計大銀貨1枚と依頼達成報酬の大銀貨1枚合わせて大銀貨2枚になります」

   女はギルドカードに今回の戦績を専用の機械で刻み込み、大銀貨と共に返却してくれた。

   因みに仮登録のギルドカードはFランクギルドカードと同じで、大量生産されている安い鉄が使われておった。

   ランクが上がるとカードの材料が変わるらしいがどうでも良い。

   取り敢えず、今は風呂じゃ!

   妾はギルドオススメの宿屋を訪れた。

   外装はそこまで綺麗ではないが、中々大きく、石柱とレンガと瓦で出来た一般的な宿屋じゃった。

   ここは、冒険者なら安く泊めてくれ、それでいて、質のいい宿屋らしい。

「いらっしゃいませ、お泊まりですか?お食事ですか?」

   中に入ると、茶色の髪を三つ編みにしておろした、30代くらいのそこらにいるような感じの容姿、背丈、胸の女が、要件を聞いてきた。

「私は冒険者です。今回は宿泊にきました。取り敢えず今日の分だけ払います。部屋はありますか?」

   もう慣れてしまったエルフ口調で聞くと、

「はい、ございます。部屋代1銀貨、夕食代3銀貨、朝食代2銀貨、風呂代1銀貨となります」

   ふむ、手持ちは一応、アイテムボックスに大白金貨が数枚あるが、ここは今回の報酬で払うとするかの。

「全部つけてください。大銀貨1枚です」

「かしこまりました。お釣りの銀貨3枚です」

   そう言って、女はお釣りの銀貨3枚と部屋の鍵"18"をくれた。

「夕食は17~2時までに食堂へと向かい、鍵を出してメニューを注文してください。お代わりは無料で、メニューの追加は追加料金となります。お風呂は夕食と同じ時間帯にしか利用出来ません。タオル等は部屋に用意してあります。朝食は4~10時となっています。夕食と同じ方法で注文してください。トイレは部屋に備え付けてあります」

「以上で説明を終わりますが、他に質問はありますか?」

「いえ、ありません。丁寧なご説明、ありがとうございました」

「いえいえ、それでは、お困り事等があれば受付に来てください」

   そう言って、女は受付に戻って行った。
 
「さて、お風呂に入って、ご飯を食べて寝ましょうかね」

   ここは魔神の砦より豪華なところでは無かったが、悪くない……。

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   魔神がユウキ達より先に冒険者での生活を経験した話になりました。
   魔神編はユウキ達と出会うところまでは取り敢えず続けようと思います。

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