episode6 #15「疑問と確信」

 「くっ！どうすりゃいいんだ！？」

 炎美は吐き捨てるように言い放った。圧倒的な手数に防戦一方の炎美と涼子。敵の攻撃を回避するのが手一杯で能力を発動する暇さえ与えられなかった。

 (このままだと力尽きて私達の方が負ける。何とかこの状況を打破しないと)

 涼子はこの状況を打破しようと必死に頭をフル稼働させるが敵の攻撃を回避しながらとなると集中して考える暇がない。

 (とりあえず一旦距離を置きたいなあ)

 「炎美君！」

 「ん？！」

 涼子はとにかく指道達との距離を置こうと少し離れた場所にいた炎美を呼んだ。呼ばれた炎美は涼子の方を向くと涼子は人差し指を後ろに向け退がるように合図を送った。炎美は合図を理解すると小さく頷きタイミングを見計らっていた。

 「そこだ！？」

 「ッ！？」

 炎美は1人の執事が殴りかかってきたところをうまく避け殴りかかってきた腕をそのまま掴まえた。

 「うおりゃあー！？」

 「グワァッ！？」

 炎美は執事の腕を掴んだまま身体を半回転させその遠心力を使い男を投げ飛ばした。すると投げ飛ばした先にいた敵を4、5人巻き添いにした。

 (よし今だ！)

 炎美は倒れていく敵を確認すると他の敵が追撃してくる前に急いで後退して行った。それとほぼ同時に涼子も何とか後退することが出来、2人は生い茂った木々を上手く掻い潜りながら指道達との距離を離していった。

 「指道執事長、後を追いますか？」

 「そうですね、一度体制を整えてから行きましょう。今度は先程よりも厳しくなるかもしれません。皆、気を引き締めていきますよ」

 1人のメイドが指道に指示を仰ぐと指道は炎美達が能力で応戦してくる事を想定し一度体制を立て直すことにした。

 ---「ハア…ハア…」

 敵を振り切った炎美達は一旦足を止め息を整えていた。

 「ハア…ハア…追いかけて来てはいないみたいだね」

 涼子は息を整えながら後ろを振り返ると追ってが来る様子には見受けられなかった。

 (だけど体制を整えてまた来るかもしれない。その間にあの猛攻を食い止める方法を考えないと)

 しかし涼子は次の攻撃に備え指道達の攻略方を思案を巡らしていた。状況は依然と変わらず指道達の能力さえ把握出来ていない。

 「………」

 「…涼子ちゃん？」

 涼子は自らの知識と経験を活かし思案に集中していた。その集中力は炎美が呼びかけても聞こえていない程だった。

 敵は約20人、能力は全員身体能力強化…

 「ん？全員？…そうか！」

 涼子はふと１つの疑問が生まれた。それと同時に涼子の中で確信も生まれた。

 「炎美君。あの人達の能力、分かったかもしれない！」