BLOOD HERO'S

ノベルバユーザー177222

episode6 #11「お見舞い」

 ---「も〜、局長ってば、ビックリさせるんだから〜」

 「はは…」

 涼子は廊下を歩きながら頰を膨らませ悔しそうにしていた。それを見た炎美は苦笑するしかなかった。

 志村の話では昨日、パトロール中の柑菜が2人組の能力者を発見した事に始まった。

 1人は水を操りもう1人は風を操る能力者だったそうだ。2人は路地裏で1人の男性に能力を使い脅して金を巻きていた最中だった。

 それを偶然目撃した柑菜はすぐに確保しようとした。それに気づいた2人は攻撃しながら逃走を図った。

 柑菜は応戦しながら追走するが柑菜の鬼蜂では全てを打ち消すことが出来ずダメージはないものの水を被り風を受け、それを何度も繰り返していた。

 結果的に捕まえる事は出来たそうだがその時の柑菜の服や髪は半乾き状態。社に帰って来た時には身震いしながら帰って来たそうだ。

 ---「まあそれだけで済んで良かったじゃん」

 「…そうだね」

 炎美が宥めるように話しかけると涼子は少しホッとした表情になった。炎美の言う通り怪我はなかった為1、2日安静にしていれば大丈夫だろうとのことだった。

 それでも心配になった2人は白凪達の所に向かう前に柑菜のお見舞いに行く事にした。

 そして5分も経たないうちに柑菜の部屋の前まで来ていた。

 「柑菜〜?!入るよ〜?!」

 涼子は部屋の扉を軽く2、3回ノックする。ノックをし終えると返事を待たずに扉を開け中に入って行き炎美もそのあとについて行った。

 室内は薄暗く豆電球の微かな橙色の明かりだけが点いていた。炎美の部屋より少し広めで未だに殺風景な炎美の部屋とは違い一通りの家具やインテリア雑貨等が飾られていた。

 「柑菜〜?具合大丈…」

 涼子と炎美は柑菜が寝ているベットに歩み寄り涼子が声をかけた時、ある事に2人は気付いてしまった。

 暑かったからだろうか毛布も被らずパジャマのボタンを全開まで開けブラも着けずに眠りこけている柑菜のあられもない姿があった。

 よく見ると床には昨日今日身に付けていたであろう服や下着が散乱していた。その光景を見た炎美は戸惑いながら棒立ち状態だった。

 「も〜柑菜ってば、余計風邪悪化するよ?」

 「ん、んん…」

 炎美が戸惑っている中涼子は母親のように注意しながらパジャマのボタンを閉めていた。その時の柑菜はまだ少し寝ぼけていたようだった。

 しかし段々と意識がはっきりしてくると2人の存在に気がついた。

 「ッ?!」

 炎美の姿を捉えた途端、ふと記憶が蘇り自分があられもない姿で寝ていた事を思い出した。

 「ちょっ、なんでアンタここにいんのよ?!ていうかみ、み、見たでしょう?!」

 「み、みてないみてない」

 柑菜がもの凄い剣幕で問いかけてくると炎美は言葉通りの棒読みで返した。

 「悪いのは柑菜の方だよ。あんな格好で寝たりするから」

 だが涼子が炎美をフォローしてくれた。

 「それは暑かったから…」

 「あれじゃあ余計風邪悪化させちゃうよ」

 「うっ…」

 涼子の正論に柑菜は何も言い返せなくなり泣きべそをかいていた。

 (母親と娘だな…)

 炎美はその光景を見てふとそう思った。柑菜が年頃の娘で涼子が面倒見のいい母親のように見えたからだ。

 「それよりも薬買ってきたからちゃんと飲んでね」

 「あっ、うんありかどう」

 そんなやりとりの後、本題に戻ろうと涼子は手に持っていたコンビニ袋を柑菜に渡した。中には風邪薬の他、水とスポーツ飲料、ゼリーやプリン等病人に必須なものが入っていた。涼子が渡された袋を受け取り柑菜は呆けたような声で礼を言った。

 「炎美君ねー、柑菜の事心配してたんだよ」

 「えっ?」

 柑菜が袋の中を確認している最中、涼子は柑菜の耳元でそう囁いてきた。それを聞いて一瞬驚く声が出てしまった。

 「実はね様子見に行こうって言ったの炎美君からなんだよ」

 「そ、そうなの?」

 涼子の話しに顔を火照らせながら涼子に小声で聞き返す柑菜。涼子は笑顔で「うん」と返した。

 「………」

 柑菜は炎美を見て更に顔が火照り出した。自分の事を心配してくれている炎美に恍惚こうこつしていた。

 「それじゃあ私達そろそろ行かなきゃ」

 「あっうん」

 柑菜の表情を微笑ましく見ながら別れを告げ部屋を後にしようとした。柑菜はまた呆けたような返事を返し。涼子達が部屋から出て行く所を見届けていた。

 「じ、じゃあお大事に」

 「あっ…」

 炎美は気まずそうな表情で柑菜に別れを告げると涼子の後を追うように部屋を出ようとした。その時、柑菜は何か言いたげそうに戸惑っていた。

 「あ、ありかどう…」

 「えっ?」

 柑菜は恥ずかしそうに小声で炎美に対する感謝の言葉を述べた。しかし炎美は聞き取れず柑菜の方に振り返るが柑菜はそっぽを向いてそれ以上何も言ってこなかった。

 それが気になりながらも部屋を後にした炎美と涼子は白凪達が居る西城城へと向かって行くのだった。

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