BLOOD HERO'S

ノベルバユーザー177222

episode6 #6「元西城城潜入作戦」

 『こちらパンサー、侵入成功』

 1人の女が一階の窓から城内に侵入すると続くように2人の女が侵入してきた。

 『こちらも侵入成功。問題なし』

 3人共周囲を警戒し問題がない事を確認すると足早とその場から離れ別々に動き出した。

 SSIUである彼女達の足音は宙に浮いているのではないかと思う程静かだった。それはS・S・I・Uで訓練を受けた賜物であった。

 『こちらフォックス。3階に着いたわ。このまま3階の調査に入る』

 『こちらキャット。オーケー。私は2階を調査中』

 『こちらパンサー。じゃあ私は1階を調査しておくわ』

 SSIUの一員は全員、脳内にマイクロチップが埋め込まれている。そのチップには見たものを一定時間ごとに画像化しその画像を政府が管理している端末に送る機能があるだけでなく、付近の仲間と喋らずに会話が成立する機能も備えている。念をメールを送るように伝達させるような感じだ。

 ---3人が城内の調査を開始して数分、物音ひとつしない城内はもぬけの殻のように感じた。

 『こちらパンサー。2人共、状況は?』

 『こちらフォックス。異常なし。っていうか人ひとり見当たらないわね』

 『こちらキャット。こっちも1人も見てないわ』

 『了解。こちらも同じよ』

 (おかしい。警備どころか人ひとりもいないなんて。じゃあ消息を絶った人達はどこにいったの?)

 パンサーは仲間と連絡を取り合ってみるが城内には人影が見当たらず不信感を抱くパンサー。

 『2人共、一度合流しましょうか』

 『了解』 『了解です』

 不信感を抱くパンサーは仲間と一度合流することにした。2人は特に異論を唱えることはなく同じタイミングで返事を返してきた。

 「……ん?」

 パンサーは2人に指示を出した後、微かに物音がするのを聞き思わず声が漏れてしまっていた。

 (近くか?)

 パンサーはこれ以上声が漏れないように口をつぐみ気配を消し辺りを警戒し始めた。そして物音がした方へと慎重に歩いて行った。

 『こちらキャット。パンサー、どうかしたのか?』

 すると突然、キャットからの連絡が脳内に伝達されてきた。パンサーはそれを聞き後ろを振り返ってみるとそこには先程まで2階を調査していたキャットが1階に降りてきていた。キャットは何処かに歩いている姿を目撃していたようだ。

 『ちょっとその辺を見てくるだけよ。キャットはそこでフォックスと合流してて』

 パンサーは適当に指示を出し再び歩みを進めて行った。パンサーは年齢も経験もSSIUの中では年長者な為、実質リーダー的存在であった。その為、キャットはパンサーの指示を素直に聞き入れその場で待機しフォックスとの合流を待つのだった。

 「………」

 歩みを進めながら聴覚に意識を集中させるパンサー。まだ微かに聞こえてくる音を追いかけていた。

 (!?ここか?)

 すると微かに聞こえてきていた音がハッキリと聞こえてくるようになった。音なる方を向くと1階の奥にある部屋から聞こえてきていた。

 パンサーはすぐさまその部屋の扉にピッタリと背中を密着させた。扉越しに聞こえてくる人の鼾のような音が聞こえてきた。

 (間違いない。この部屋に誰かいる!)

 そう確信を持ったパンサーは部屋の中に踏み入れる決意を決めた。ドアノブに手をかけ音の鳴らないようにゆっくりと回していく。回し終えると背中と扉が一体化しているかのように同時に動かしていく。

 「………」

 ゆっくりと扉を開けていくと部屋の内部が露わになっていく。橙色に光るシャンデリア、天然木を使用された両袖机と本棚、、アルダー無垢材を使用されたすのこベッド、そしてそのベットに熟睡している白凪の姿があった。

 (1人?他にはいないの?)

 パンサーは警戒しながらもゆっくりと部屋の中へと入って行った。無論、白凪の事や透斎達の事は何も聞かされていない。

 『こちらキャット。パンサー、今フォックスと合流したわ。そっちはどお?』

 部屋の中に入るとキャットからの通信が入ってきた。

 『こちらパンサー。男を1人発見したわ。ぐっすり眠っているようだけど』

 『ホント!?』

 パンサーが白凪がいる事を伝えるとキャットから驚きの声があがった。城内のあちこちを探してようやく見つけたからだろう。

 『なら私達もそっちに行くね』

 『了解。でも警戒だけは怠らないでね』

 そして3人はとりあえず部屋に合流する事にした。キャット達はパンサーの忠告通り辺りを警戒しながら部屋へと向かって行った。

 (さて、とりあえず私は…)

 その間パンサーは白凪の顔をチップに記録するべく白凪に近づいて行った。

 (こんな広い城をたった一人で?相当な能力者なのかしら?)

 足音を立てずにゆっくりと近づきながらパンサーは様々な疑問を巡らせていた。

 (にしても無防備過ぎるというかトラップの1つぐらいあっても…ッ!?)

 そして1つの疑問を感じた時、背筋がゾッと凍りつくのを感じた。

 今まで何故こんな単純な事に気づけなかったのかと自分自身の怠慢さに譴責けんせきするパンサー。

 城内を調査していた時にはトラップらしきものは見つからなかった。そのせいか完全に油断しきっていたようだ。

 「………」

 パンサーは恐る恐る部屋の周りを見渡す。今何が起こってもおかしくないと畏怖の念を抱いていた。

 「……?」

 しかし幾ら待っても何も起こる様子は無かった。部屋の構造も変わった形跡は見当たらない。

 「ッ!?」

 パンサーは少しばかり安堵の表情を浮かべ再び白凪の顔を拝見しようとしたその時、更なる恐怖を感じた。

 「招かれざる客か」

 先程まで死んだように眠りについていた白凪が目を覚まし仰向けの状態のままパンサーを睨みつけていた。

 (ヤバイッ!?)

 その瞬間、パンサーは腰に帯刀していた全長30センチほどのダガーを手に取った。

 「2人共、逃げてーー!!」

 「!?」

 2人がパンサーの入って行った部屋の前まで来ていた時、大声で警告するパンサーの声が聞こえてきた。耳をつんざくような声で一瞬、身体が硬直状態になった。

 「パンサー!?」

 人は来るなと言われると気になって反対の行動をとってしまう生物だ。硬直状態が解かれると急いで2人は部屋の中に駆け込んで行った。

 「ッ!?」

 部屋の中に入った2人の表情は一気に青ざめていくのを感じた。2人の視線にはベットで上体を起こした白凪と腹部に5、6本の剣で串刺しにされたパンサーの姿があった。

 黒のキャットスーツを着たパンサーの腹部は鮮血の色に染まっていた。

 「あっ…あああ…」

 パンサーはダガーを持った腕を振り上げたまま瞳孔を大きく開かせ嗚咽するような声をあげた。

 「うああああーーーーー!!」

 「キャット!?ダメ!!」

 その時、キャットはパンサーの姿を見て乱心したのか金切り声をあげ腰に帯刀したダガーを手に取り白凪に襲いかかるように飛びかかっていった。

 フォックスはそれを見て慌てて止めに入ろうとするが時は既に遅く止めに入ろうとしていた時には既にキャットは白凪に向けてダガーを振り下ろしていた。

 「オーバー・リプエーティング!」

 「ッ!?」

 それに対し白凪はぼそりと何か呟いた。その瞬間、がら空きだった筈の手のひらに何処からともなくと剣が現れた。そしてその剣を掴みそのまま前に突き出してきた。

 突き出した先には襲いかかろうとするキャットがいた。無論回避することは叶わず自ら飛び込むような形で胸の方から突き刺さっていった。

 「…ぁぁぁぁ…」

 突き刺さった剣は内臓ごと背中を突き破っていった。突き刺された箇所からは鮮血が勢いよく血飛沫をあげる。

 キャットは先程までとは違い弱々しい声を漏らしパンサーと同様に瞳孔を大きく開かせていた。

 「あ、ああ…」

 キャットの血飛沫を顔面に受け顔の半分を赤く染めたフォックスは顔面蒼白になりながら股間から生暖かい液体を零していた。あまりのショックで身震いを起こし思考が完全に停止していた。

 『逃げろ…フォッ…クス…』

 「!?」

 すると聞き覚えのある声が脳内に伝わってきていた。それはパンサーからの通信によるものだった。パンサーの方を見ると腹部を串刺しにされたままその場に死んでいるかのように横たわっていた。

 『フォックス…早く…この事を…あの人に…』

 「…パンサー…」

 パンサーは微かな力を振り絞るが最後まで言い切る前に息を引き取っていった。

 「ごめんなさい」

 しかしパンサーの言葉にふと我に返ったのか踵を返し部屋を出て息苦しさも忘れひたすら駆け出して行く。そして外に出れる場所を血眼になって探していた。

 「ハア…ハア…ハア…」

 気がつけば正面入口まで走って来ていた。扉までは100メートルもない。フォックスはだだっ広い大広間を走り抜けていく。

 走りまくっていたせいか呼吸がかなり乱れていた。その上、汗と股間から放出されたアルカリ性の液体が混じり異臭を放ち嘔吐したくなる程の気持ち悪さが込み上げてくる。

 (あと少し、あと少し!)

 だがそんな気持ちを払拭するように自分を鼓舞するフォックス。外に出て森の中に逃げ込めれば簡単には見つけられない。

 「ゔっ!?」

 扉の前まで辿り着き扉を開けようとしたその時、フォックスの脹脛ふくらはぎに剣が突き刺さった。激痛のあまり腕の力が抜け扉の取っ手から手が離れその場にうずくまった。

 「ここまでみたいだな」

 「ッ!?」

 うずくまりなりながら悶え苦しんでいると白凪の声と足音がゆっくりと近づいてきていた。

 「お願い、やめて…」

 フォックスは弱々しい声で懇願を試みた。彼女の頭はもうどんな手を使ってでも逃げる事で一杯一杯だった。

 「悔しくはないのか?」

 「えっ?」

 そんな中白凪から突拍子もない問いかけを受けフォックスは面を食らった。

 「2人が目の前で殺されてお前はその2人に対して何も思わないのか?」

 「それは…」

 更なる問いかけに答えるのを暫し悩んでいた。

 「悔しいに決まってるじゃない!」

 すると意を決したのか大声をあげ答えるフォックス。

 「2人共、優しくて強くて綺麗で尊敬してる。だから物凄く悔しいよ!でも、2人に比べて私なんかまだまだ。そんな私が2人を殺した貴方に勝てる訳が無い。だから逃げるしか無いじゃない!」

 フォックスの言葉には怒りと悔しさの感情が入り混じっていた。それを白凪は黙って聞いていた。

 「そうか」

 「えっ?」

 すると白凪はフォックスの脹脛に突き刺さった剣を引っ込めた。意外の行動に呆気を取られるフォックス。

 (ひょっとして私の気持ちが伝わったの?)

 そんな事を思いつつフォックスは足を引きずりながら再び扉に手をかけようとした。

 「だが」

 「!?」

 扉に手をかけようとしたその時、白凪の冷たい声が聞こえて恐る恐る後ろを振り返ろうとした瞬間、白凪の剣がフォックスの喉元に突き刺さった。悲鳴をあげる間もなくフォックスは力尽きた。

 「逃しはしないよ。3人あの世で仲良くしてな」

 白凪は吐き捨てるように言うがフォックスにはもうその言葉は届いてはいなかった。

 「仙!?」

 「ん?」

 フォックスの手が扉から離れ落ちたタイミングで外から扉が開かれた。その先には散歩から帰って来た渚達の姿があった。

 「うわっ!何だこりゃあ!?」

 「仙、大丈夫か!?」

 「仙!?」

 3人共フォックスの死体やら返り血を浴びた白凪の姿を見て慌しくなった。

 「仙、大丈夫?」

 渚は一目散に白凪に駆け寄って来た。渚の頭の中は白凪の事でいっぱいなようだ。

 「ああ、問題ない」

 心配する渚達を見て何を思ったのか軽く鼻で笑いながら返事を返した。

 ---その後、白凪は3人に事情を説明し殺された3人の遺体は山奥に埋葬されるのだった。

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