曹丕、外す

　まず、曹丕が最初に行った事。
　櫓やぐら。見張り台が村の入り口付近に２つ立てられた。
　１日という短期間で作らせた、かなり簡易的な櫓だ。
　２人１組。１日３回の交代で、村の周辺を見張らせる。
　夜は村の主要となる道にかがり火を焚かせている。
　これは、戦闘に不慣れな村人たちを少しでも早く、行動を起こさせ、後手に回るのを防ぐための指示である。

　次に村人たちの戦闘訓練。
　これは関羽が主に行っている。
　この村には武器になるようなものはなかった。
　せいぜい、農具や台所用品程度の物しかなかったのだ。
　そこで、関羽は山に登り、森林を伐採。それらの木々を村へと運ばせた。
　村に着くと、それらを村人に研磨させ、数十本の棒を作り、村人に配った。
　関羽は自分の技を棒術へ応用させて、村人へ教えた。
　最も、多くの村人たちの本業を農業であり、それを蔑ろにさせるわけにはいかない。
　それに、今まで武器を持ったことすらない人間に教えるのだ。
　棒術―――というよりも槍の基礎。
　棒を内側に回し、敵の攻撃を払う技。棒を外側に回し払う技。そして、突き
　これら槍の基本三法のみのい反復練習を徹底させる。

　直家は、女や子供達への指示。
　縄はしごを作らせていた。
　山賊が攻めてきたら、すぐ家の屋根へ登り、あらかじめ大量に用意させ石で投石攻撃を行わせるつもりらしい。
　なんでも、彼の時代では種子島という武器があるそうだ。
　平地に土を盛って高所を作り、そこから種子島を撃ち込んで来る。
　そういう戦術を好む相手が、彼の時代ではいたらしく、それを真似してるらしい。

　マキビは、村から離れた場所に緊急の避難場所を作っている。
　もしも、村を捨てなければならなくなった場合、そこが集合場所となる手筈だ。


　さて―――
　これで曹丕たちは村の中枢の深くまで入り込んだ事になるのだが―――
　そこで感じた村人ちの印象は、彼らの予想外のものだった。
　まるで村人たちは―――

　本当に山賊がこの村を襲うと思い込んでいるようだったのだ。