覇王の息子 異世界を馳せる
遡る事、半年
 半年前、数々の苦難を乗り越え曹丕たちは都である『エルドレラ』に到着した。
『エルドレラ』
古今東西の建物を―——否。古今東西の文化を統一性なく、節操なく混ぜたような町並み。
曹丕たちが、初めてこの世界で訪れた村、『ドレッガ村』の住民のように金髪碧眼の人々が多い。
しかし、彼らに交じって、異質な人間が存在している。
彼らは姿かたちが異質なのではない。ごくわずかな立ち振る舞いから、その異質性が見て取れる。
おそらくは彼らも《渡人》なのだろう。
一目見ただけで武に優れた達人だと分かる者もいれば、一見して正体が掴めないような人間もいる。
「この通りを真っ直ぐに進めば、役所があります」
シンは馬車を止めながら、道を説明する。
曹丕と関羽は、言われるがまま役所に向かい、宇喜多とマキビは町をぶらつく。
シンは馬車に残った。
「こ、これは……」
驚きの声を上げたのは曹丕だ。だが、関羽も曹丕の声に同意する。
城と見間違うほど豪華絢爛な建物。まるで古代ギリシャの神殿のように白く神聖さを醸し出している。
「これが役所……で間違いないようですね」
曹丕は、建物の前に掲げられている看板を見ている。
この僅かな期間で文字を覚えられたのか!?
確かに『ドレッガ村』から出発する時に大量の本を詰み込み、文字の学習に勤しんでいたのは知っているが……いくらなんでも、覚えるのが早過ぎる。
そう驚いてみたが、どうやら看板に仕掛けが施しているみたいだ。
この看板の前に立つと、自動的に文字が浮かび上がってくる。
複数の文字が浮かび上がったかと思うと徐々に文字の数が減っていき、文字は草書や楷書と言った関羽にも読める物へ変化していった。
「看板を見た者が読める文字へ変化しているのか」
関羽は、その技術の高さに驚くも、もはや驚く事に慣れてしまっている自分に気づく。
「高い技術力です。これが魔法によるものか、何らかのからくりによるものか、どちらにしても魏に持ち帰りたい技術です」
「ほう……なるほど」と関羽は呟く。
関羽に取って、これらの技術は自分を驚かせるもの。例えるならお化け屋敷のようなもの。
しかし、目の前の少年は、使うための技術として考えている。
その思考に頼もしさを感じながら、関羽は建物の中へ入って行った。
門番……にしては可憐と女性に案内され、部屋で待たされる。
暫くすると男が入室してきた。
「お待たせしました。えっと関羽さん。曹丕さん。で宜しいですかね?」
名前を問われ、二人は頷く。
男は服装は、古代ギリシャ風。
一枚の布を体に巻き付けているような服だ。締め付けるように巻いてるのではなく、実感の余裕を作って、フワリと全体的に広がっている。そして片方の肩を出している。
そんな服装の男だ。
男は、入室してから一度も曹丕たちに目を向けない。
手にした紙を確かめるように見つめている。
そして、おそらくは紙に書かれているであろう言葉を出した。
「それでは、まず―——
この世界について説明を始めましょうか」
そこで一旦、男は顔を上げる。
男の顔は、やせ気味であり、彫りが深い。女にモテそうな男だ。
「その前に自己紹介がまだでしたね。私の名前はユダ。
世界の橋渡し役と言えば良いのでしょうか……『15番目の使徒』という役職の者です」
男の表情は一変して、人懐こい感じになっていた。
『エルドレラ』
古今東西の建物を―——否。古今東西の文化を統一性なく、節操なく混ぜたような町並み。
曹丕たちが、初めてこの世界で訪れた村、『ドレッガ村』の住民のように金髪碧眼の人々が多い。
しかし、彼らに交じって、異質な人間が存在している。
彼らは姿かたちが異質なのではない。ごくわずかな立ち振る舞いから、その異質性が見て取れる。
おそらくは彼らも《渡人》なのだろう。
一目見ただけで武に優れた達人だと分かる者もいれば、一見して正体が掴めないような人間もいる。
「この通りを真っ直ぐに進めば、役所があります」
シンは馬車を止めながら、道を説明する。
曹丕と関羽は、言われるがまま役所に向かい、宇喜多とマキビは町をぶらつく。
シンは馬車に残った。
「こ、これは……」
驚きの声を上げたのは曹丕だ。だが、関羽も曹丕の声に同意する。
城と見間違うほど豪華絢爛な建物。まるで古代ギリシャの神殿のように白く神聖さを醸し出している。
「これが役所……で間違いないようですね」
曹丕は、建物の前に掲げられている看板を見ている。
この僅かな期間で文字を覚えられたのか!?
確かに『ドレッガ村』から出発する時に大量の本を詰み込み、文字の学習に勤しんでいたのは知っているが……いくらなんでも、覚えるのが早過ぎる。
そう驚いてみたが、どうやら看板に仕掛けが施しているみたいだ。
この看板の前に立つと、自動的に文字が浮かび上がってくる。
複数の文字が浮かび上がったかと思うと徐々に文字の数が減っていき、文字は草書や楷書と言った関羽にも読める物へ変化していった。
「看板を見た者が読める文字へ変化しているのか」
関羽は、その技術の高さに驚くも、もはや驚く事に慣れてしまっている自分に気づく。
「高い技術力です。これが魔法によるものか、何らかのからくりによるものか、どちらにしても魏に持ち帰りたい技術です」
「ほう……なるほど」と関羽は呟く。
関羽に取って、これらの技術は自分を驚かせるもの。例えるならお化け屋敷のようなもの。
しかし、目の前の少年は、使うための技術として考えている。
その思考に頼もしさを感じながら、関羽は建物の中へ入って行った。
門番……にしては可憐と女性に案内され、部屋で待たされる。
暫くすると男が入室してきた。
「お待たせしました。えっと関羽さん。曹丕さん。で宜しいですかね?」
名前を問われ、二人は頷く。
男は服装は、古代ギリシャ風。
一枚の布を体に巻き付けているような服だ。締め付けるように巻いてるのではなく、実感の余裕を作って、フワリと全体的に広がっている。そして片方の肩を出している。
そんな服装の男だ。
男は、入室してから一度も曹丕たちに目を向けない。
手にした紙を確かめるように見つめている。
そして、おそらくは紙に書かれているであろう言葉を出した。
「それでは、まず―——
この世界について説明を始めましょうか」
そこで一旦、男は顔を上げる。
男の顔は、やせ気味であり、彫りが深い。女にモテそうな男だ。
「その前に自己紹介がまだでしたね。私の名前はユダ。
世界の橋渡し役と言えば良いのでしょうか……『15番目の使徒』という役職の者です」
男の表情は一変して、人懐こい感じになっていた。
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