覇王の息子 異世界を馳せる

チョーカー

VSドラゴン ①

 関羽の頭上よりも高く、振り落とされるはドラゴンの爪。
 その速度、その重量感は人を殺すに十分過ぎる。
 もしも受ければ、その重さに耐え切れず圧死する以外にないだろう。
 ならば!と関羽は青龍偃月刀を振るう。
 ドラゴンの爪を弾くように青龍偃月刀を振るい、爪の軌道を逸らす。
 接触時に鳴り響く甲高い音。
 それは金属音に似ていて、ドラゴンの爪が剣のように殺傷力を帯びた武器に近いと知らせてくる。
 真横に逸れていく爪。その風圧を関羽は浴びる。

 (やはり、直撃すれば死あるのみか……)

 そんな感想も束の間、当たり前だがドラゴンに腕は二本。逸らしたの右腕、次は左腕が振るわれる。
 右腕と違わぬ威力を感じ、それが唸りを上げて襲い掛かってく。
 当たれば死、受けても死、その一撃に前に関羽は、先ほどと同じように左腕を弾いた。
 しかし、先ほどとは違う。すでに振り上げられた右腕が関羽を狙って振り下ろされていたのだ。
 それを関羽が弾く。だが、次に落ちてくるのは左腕。
 それを関羽が弾く。右腕が落ちてくる。それを弾く。
 ドラゴンの連続攻撃ラッシュが関羽を襲う。
 頭上から降り注ぐ攻撃。それは永遠に続く悪夢のようにも見える。
 だが、しかし―――
 爆撃のようにすら見えれるドラゴンの怒涛の攻め。それが関羽に触れることはなかった。
 まるで球。関羽を中心に透明な球が見える。
 その球に触れた瞬間、ドラゴンの爪が大きく弾かれる。
 関羽は、ドラゴンの間合いを見極め、間合いに入った瞬間に追撃しているのだ。
 もはや、ドラゴンの爪が関羽に触れることはない。
 しかし、いくらドラゴンの攻撃を防ぐことができても勝てるわけはない―――否。
 関羽は防いでるだけではなく、攻撃を加えている。
 爪と青龍偃月刀の接触時、爪を弾くと同時にドラゴンの腕に切り付けているのだ。
 だが、鋼鉄に等しいドラゴンの鱗。いくら関羽が切りつけても、傷が入らない。
 動かぬ鉄なら、関羽の技に青龍偃月刀の切れ味が加われば残鉄も可能だろう。
 しかし、高速で動いている標的を正確に切り裂く技は限りなく困難だ。

 (―――これは……千日手か……)

 関羽は状況を膠着状態と把握した。互いに攻撃を仕掛けあっているが、効果はない。
 だが、関羽の予想とは違い、その膠着状態も長くは続かなかった。
 関羽の攻防は青龍偃月刀を振るうことで為し得ている。
 しかし、ドラゴンは違う。ドラゴンの武器は爪だけではない。
 その爪を関羽に叩きつけながら、ドラゴンは、その巨大なアギトを開いた。
 そして、関羽は見た。
 自身に向けられる光を―――
 先に熱が発射され、その直後、ドラゴンのアギトの奥から本命が放射される。
 爪を弾き続ける関羽にそれを回避する方法はない。
 圧倒的な熱量を持って、関羽に火炎放射が吹きかけられた。

 

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