覇王の息子 異世界を馳せる

チョーカー

VSドラゴン ⑥

 関羽は神である。
 非業の死。武神と奉られる力。数々の伝説。
 人々の関羽への憧れは、信仰へと駆り立て、ついには関羽を神格化されている。

 関聖帝君

 それが神としての関羽の名前である。
 だが、それは遠い未来の話―——そうなるはずだった。
 しかし、神に対する人々の信仰は奇蹟を生み出す。
 遥か、遠い未来の時代を得て、神になる予定だった男は、生命の危機を前に、生きながら神の領域に踏み入れた。
 傷が癒えていく。
 体内から、闘気や神気、あるいは魔力といった力が満ち溢れていく。
 内部からだけではない。外から内へ。入り込んで来るのは人々の意志。
 自身の存在が希薄となっていく。
 世界と一体化していく感覚。関羽が世界であり、世界は関羽である。
 だがそれは―——

 『ようこそ神の世界へ』 

 それは誰かの言葉。
 いつか、昔、誰かが関羽に放った言葉。

 だがそれは―——

 「だが、それは……関羽ではない!」

 関羽は叫んだ。
 叫ぶと同時に体に満ち溢れていた万能性が消失していく。
 癒えたはずの傷は開き、血が噴き出ていく。
 浄化されたはずの毒が、再び体を蝕んでいく。
 しかし、関羽の目には活力が蘇り、爛々と炎を灯している。

 「この関 雲長。武神ではなく武人である。人として戦い、死すべき時は人として死ぬ。そして……願わくは……いや、言うまい」

 関羽は一度、眼を閉じ、何かを思い出す。
 そして、再び瞳が開いた時には―———

 『ふん、下らぬ』とドラゴンの声が伝わってくる。
 それに対して関羽は「待たせてしまったかな?」と笑みを浮かべる。

 『いや、構わぬ。我を倒すは、倒せるのは、何時だって人の意志によるもの。神などと、勝てて当たり前の相手ほど詰まらぬものはない―———
 ――――眠りを邪魔された分、楽しませて貰う。久々に本気を出すぞ』

 ドラゴンの体に異変が起きる。突如として背中から触手が2本生えた。
 ただ、触手が生えただけ。それなのに、関羽の体に震えが走る。

 

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