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第八十八章 契約の更新

炎の精霊使い討伐イベント
勇敢なる和の国の王の死を告げた俺はネクロニアにて鍋をかき回していた

「ねぇねぇヴァンプ?わかったのかイ?どうなんだイ?」

本を読むヴァンプをニコニコと眺めるリッチー

「ワハハハハ!この程度の書物我にかかればもう読破したとも!!」

そんなリッチーに軽快に笑いかけるヴァンプ
そんなヴァンプは読破した本の上に何か書いているようだ
その様子を見ながらリッチーが真顔になってヴァンプを見る

「随分と無駄な事をするんだネ?ヴァンプ」
「ワハハハハ!愚かな人間種ならまた同じことをしそうだしな」

なんの話だ?
話についていけない俺は食器棚から食器を取り出しヴァンプに質問する事にする

「で?どうやったらハーデウスを召喚できるんだ?」

楽しそうに話す二人の間に食事を並べて席につく
ヴァンプが並べられた料理に破顔しながら続きを語っていく

「方法は簡単、必要な儀式道具と人間の生贄100万人分程度だな」
「簡単・・・100万人の生贄って随分破格な気がするんだが?」

俺がジト目でヴァンプを睨んでいるとシャキシャキタロスを食べるヴァンプがウンウン頷く

「別に生贄100万人と言っても人類種の規格での話である!」
「ボクらなら人間の100万人分くらい簡単に集められるヨ」

リッチーの持つ黒い塊が水晶のような形になり地上の風景を映し出す

「えい!えい!」

リッチーが水晶をタップすると地面から大量のアンデットが出現して周囲の生物を捕獲し始める
何あれ?新手のアプリですか?

捕まえられていく生物の悲鳴を聞きながら人道的な生贄である事を祈る
心の中で合唱している俺を無視して話は続く

「しかし問題は儀式の道具であるな・・・」
「どんなものが必要なんだイ?」

リッチーの質問にヴァンプが珍しく苦い顔をしている

「ふぅん!どうやら神の体の一部が必要なようだぞ!」

首を傾げる俺とリッチーにヴァンプがニヤリと口角をあげるとマントの中から呼び鈴を取り出す

ヴァンプが呼び鈴を揺らすと大きなコウモリのような何かが飛来してくる
コウモリはヴァンプの隣に着地しようとしたところで俺の姿を確認して少し上空を滑空し始める
巨大コウモリはチラチラこちらを見ている

「ワハハハハ!ロビン!この人間種はエサではないぞ?」
「!?」

ヴァンプの台詞に俺は目の前に並べている料理を取り出して投げつける
近づくなという意味合いだったのだが
ロビンは投げつけられた料理を食べ物と判断したらしくかじりつく
しばらく咀嚼していたロビンは
何かにぶつかったようにゆらゆらと空中を漂うと俺のすぐ近くに墜落してくる

「なにかマズイ物を混ぜたつもりはないんだが・・・?」

心配そうにロビンを眺めていると
ロビンは俺に近づいてきて頭を擦り付けてくる

「ほう!我が眷属がこうも簡単に篭絡されるとは!さすがだな!」

どうやらロビンになつかれてしまったらしい

「なんだ・・・エサからエサ係に格上げされただけか・・・」

しかし満更でもない俺はどんどんロビンに料理を与える
嬉しそうに咀嚼するロビンを見ながら頬が緩む

「なんだ・・・結構可愛いじゃねぇか・・・」

しかし嬉しそうに咀嚼していたロビンが急に飛びのく
背後には黒いオーラ漂うヴァンプさん
あれ?何かすごい怒ってらっしゃる?

「我が眷属ロビンよ!神の痕跡を探すのだ!」

何故か眷属という言葉を強めに発言するヴァンプ
ロビンは首が千切れるんじゃないかという勢いで首を縦に振るとものすごい勢いで飛んでいってしまう

「あ・・・行っちゃった・・・」

なんだか少し寂しい
そんな俺の様子を全く気にせずにヴァンプが高笑いをあげる

「ワハハハハ!こればかりは時間がかかるであろうな!」

笑い声をあげながら席に戻るヴァンプ
だがその口元は笑っていない
そんなヴァンプから距離を取っているとリッチーが水晶片手に手をあげる
水晶の中にはすでに何十種類もの生物がアンデットに捕獲されている

「じゃあじゃあボクはその間にオモチャを集めとくヨ!」

オモチャって・・・リッチーに捕まると何をされるかわからないな・・・
俺が乾いた笑いをあげるなか
オモチャという言葉に一番反応したリッチーの後ろの炎を纏った黒い物体に視線を移す

「ところでリッチーさん?後ろの黒い物体なんですが」
「ああこれかイ?ボクの魔力を勝手に使ってたみたいだからしばらくオモチャにしようと思ってるんダ!」

再び震えだす黒い物体・・・通称炎の魔人
全盛期の彼の姿とは程遠く、まるで小動物のように縮こまってしまっている
やった事はえげつないけどなんだか可哀そうに思えて来たな・・・
・・・元はと言えば俺がリッチーの目玉を使いまくったのが原因だし

「リッチーさんリッチーさん、よかったらそれ俺にくれないか?」

ここで恩を売っておけば何かしら良い事があるかもしれない
・・・マッチポンプな気がするが気のせいだろう

「ええー・・・この子だけでも人間数十万人分にはなるヨ?」
「ごめん!やっぱ有効活用してくれ」

俺は炎の魔人から視線を外して食事を再開する

『・・・か・・・か・・・』

ん?なんだ?

『聞こえますか?聞こえますか?私は今貴方の脳内に直接話しかけています』

こいつ!?頭に直接!?

『僕と契約して精霊使いになってよ!』

炎の魔人が仲間になりたそうにこちらを見ている
そういえば炎の魔人の召喚がずっと使えなかった事を思い出す

「そういう事か・・・」

首をかしげるリッチーをなんとか説得、炎の魔人と契約をしていると、ヴァンプが立ち上がる

「ワハハハハ!ロビンが何か見つけたら使いを寄越す!今の内に少しでも強くなっておくのが良いぞ! 」

そんな台詞と共に闇に消えたヴァンプ

「ヴァンプと一緒に情報収集をしても良いんだが・・・」

契約を終えた俺は、ヴァンプの言葉に従いネクロニアからグラフ街のとある店に行く事になった

商店通りの端、ファンシーな外観の建物
フレンドカードの詳細位置を確認しながら首を傾げる

「ここだよな?」

目立つ外観の割に全然人が入っていないお店の扉を開ける
そこでは紫の髪をした巨大な化け物がやすりを片手に何かを削っている

「お邪魔します・・・」

紫髪の化け物・・・アリスはチラリとこちらを見るが作業に戻る
なんか邪魔しちゃいけない雰囲気だな・・・
俺はアリスの作業が終わるまで店内を見て回る事にする

最近ぬいぐるみを買って無かったしそろそろ新しい子を買うのもありかもしれない
手始めに狐のぬいぐるみの尻尾をなぞるように触る

「な・・・なんて手触りだ・・・!こいつぁたまんねぇぜ!」

お次は猫のぬいぐるみ・・・この肉球・・・本物なんじゃないか!?
他のぬいぐるみもこのクオリティなのか・・・?
俺が時間も忘れてぬいぐるみをあさっているといつの間にかアリスが良い笑顔でこちらを眺めている

「こ・・・こほん!」

咳払いしながらアリスに近づく

「それでアズちゃんどうしたのぉん?」
「じ・・・実はアリスに人形師の極意を教えてもら「覚悟を決めたようねぇん!!」

アリスがカウンターを乗り越えそうな勢いで俺に近づいてくる
怖い怖い怖い怖い!?
鼻息荒く髪をかき上げるアリスに一瞬挫けそうになったが覚悟を決めてアリスの目を見る

「ああ!アリスよろしく頼む!」

しかしアリスは俺の言葉を聞いた瞬間そっぽ向いてしまった

「・・・なんでだんまりなんだ?」

そんな俺の台詞にアリスがやれやれといった感じで両手をあげる
若干イラッとするがここは耐えねば・・・

「アズちゃん?こういう時は師匠かお姉様よぉん?」
「・・・」

無言で口をムニムニさせる俺をアリスが良い笑顔で見返す
今回は頼む側だ・・・仕方ない・・・
ちなみにお姉様は絶対無い

「・・・よろしくお願いします師匠」
「まかせてぇぇん!!」

髪をかきあげながらドヤ顔するアリス
殴りたい、この笑顔
笑顔で殺意をぶつけるがどこ吹く風でアリスが懐から人形を取り出す

「この子わぁん!人形師の適正を測ることが出来るのよぉん!抱いてごらんなさぁい?」

そんな便利な物が!?
アリスに言われるがままに人形を抱きしめる
一瞬の静寂が店内に訪れる

「・・・おい・・・これでどうやって判別するんだ?」

俺が疑問を口にすると同時に人形の口が開く

「おい!こいつぁヤバイぜ・・・おい!こいつぁヤバイぜ・・・」

えらく渋い声の人形の声が辺りに響く
っは!?見た目と声とのギャップで一瞬思考が停止してしまった!
我に返った俺は人形をアリスに投げ渡す
しかしこれは・・・

「ヤバイぐらい才能があるって事だよな?」

俺は期待の眼差しをアリスに向ける
しかしアリスは受け止めた人形を棚に戻すと無言で虚空を眺める作業に入っている
あれ?

「おい?なんだよ?なんかあるなら言えよ!」

この雰囲気・・・まさか・・・
アリスは溜息を一つすると諦めたようにこちらを真剣に見つめ・・・

「びっくりする程才能が無いわぁん・・・」

そんな気はしてたよ!!!
ガックリと膝をつく俺を無視してアリスが鏡を取り出す

「じゃあまずはセクスィーポーズの練習に入るわよ!!」

更に追い打ちをかけてきたか!!
俺は膝をついた状態でアリスを睨む
この人に師事を仰ぐなら当然来るとは思っていた
だがしかーし!
俺はアリスがセクシーポーズを決め始めると同時に店のドアを開ける
すると外ではポカンとした顔でアリスを見つめる男性
今は間抜け面だが普段は髭面の強面な顔、ドワーフのような背の低さに加えて横に広い体系
そう、ドルガさんだ

「ありすぅぅぅ!!!おらが悪かったぁぉぁぁ!!捨てないでぐれぇぇぇぇ!!!」

涙を流しながらアリスに抱きつく我らがドルガさん
かかったな!!こんな時の為にドルガさんにデマ情報を流して待機させておいたのさ!

「だ!ダーリン!!?どうしてこんなところにぃん!?」

尋常じゃないドルガさんの様子にアリスの困惑した声が店内に響く

「おらがもっと自分を磨く!だがら他の男を挑発するようなそんなセクスィーポーズはやめてぐれー!!!」
「だ!ダーリン・・・ええ・・・私がはしたなかったは・・・ごめんなさい!」

ドルガさんの勢いに負けてしおらしくなるアリス

「アズちゃん?少しダーリンと話をしてくるわ!!」

アリスがドルガさんと店の奥に引っ込む

「計画通り・・・!」

これでセクシーポーズの練習は無くなるだろう
・・・しかしアリスはドルガさんをなだめるのに時間がかかりそうだな

「・・・」

俺はチラッと目の前の鏡を見る

「誰もいないよな?」

アリスもドルガさんもこちらを見てる余裕はなさそうだし・・・
鏡の前で一人腕を組む

「インパクトが足りないか・・・」

その場に座りながらポーズを調整していく
なかなか良いのでは無いか?
鏡に向かってドヤ顔をかましていると俺の背後で物音が聞こえる
あれ?ここには誰もいないはず・・・
恐る恐る背後を見るとルピーが鼻血をたらしながら親指を立てている

「う!うわぁぁぁぉぁぁぁぁ!!!!」

俺は顔を隠しながらその場から逃げ出そうとしてドルガさんをなだめ終えたアリスに襟首を掴まれる
しかしまわりこまれたぁ!?
混乱する俺をよそにアリスがルピーに話しかける

「あんらぁん!ルピーちゃんじゃない!!」

アリスの声にルピーがメモを取り出してこちらに何かを伝えようとしている
・・・恥ずかしすぎてルピーを直視出来ないんですが?

[私も特訓してください!!]
「あんらぁん!もちろんよぉん!」

ルピーが特訓?必要無い気がするが・・・
いや・・・確か今の時期はまだかなり強いレベルの冒険者だったな
・・・てことはアリスの修行で化け物クラスになるってことか?
なんだか鏡に向かってポーズを取っている気がするがきのせいだろう
これから最強生物が生まれる予感に自然と体が震える

「こいつぁ面白い事になりそうだ・・・!」

震える俺の背後にアリスが屈んで顔を近づけてくる

「ところでアズちゃぁん?」
「なんだ?やめろ気持ち悪い」

俺は内心を悟られないようにアリスの目を見つめる

「ダーリンを惑わした罪、万死に値するわぁん」

アリスの目がすわっている

「覚悟は良くてぇん?」
「イージーモードでお願いします」

俺の震えは更に加速するのであった

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