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第七十八章 グラフ舞踏会

今日もにぎやかな木漏れ日荘
がらんとした食堂にグレイの声がこだまする

「ねえ?どんな気持ち?ねえ?どんな気持ち?」

現在俺は絶賛からかわれ中である

霊魂返しでテンションが上がっていた俺はランタン片手に踊っていたのだが・・・
それをどこかの誰かに見られた恥ずかしさにより着替えるのも忘れて木漏れ日荘に帰ってきたのだ

そう俺が絶対着ないような可愛いゴシックドレスのまま
午前中誰もいなかったはずの木漏れ日荘には従業員も客も満員状態
今でも俺が扉を開けた時の周りの凍りつき用に頭を悩ませる

「NDK!NDK!」

尚も俺を煽るグレイの口の中に杖を突きつけ笑顔を浮かべる

「今?八つ裂きにしたい気持ち!」

顔を真っ青にして両手をあげるグレイ
そんなグレイにフーキも同調する

「まぁ確かに可愛かったよね」
「うるせぇよこのロリコンが!」
「まどそのネタ引っ張るん!?」

ネタもなにも事実だろ?
俺の睨みに喚きだす二人を無視する
そんな俺達を見ながら姉が目をキラキラさせながら手をあげる

「ところでー!新しいお祭りの情報きたねー!」
「・・・前回からの発生か?随分はやいな」
「良い事やない?」

落ち着きを取り戻したフーキ
まぁ確かにそうなんだけど・・・
前回のイベントという名の戦争を引き起こした本人としては微妙である

頬を叩き気を取り直してイベント情報を確認する

<グラフ舞踏会>
<冒険者、兵士諸君、先の戦思うところあるだろう、しかし此度は両軍の健闘を称えよう>

「まぁ簡単な話今回の戦を後に引っ張らないように国王が段取り組んだんやね」

フーキの説明に納得していると姉がまたまた挙手をする

「でも本当は王様のお嫁探しらしいよー?」

国王がこういった催しを提案したことによりどこからかそんな噂話が出て来たらしい・・・
その中でもトップクラスにこういった話題が大好きな姉の発言に
噂話に敏感な女子陣は黄色歓声をあげ
男子陣は全員唾を吐きそうな顔をしている

「アズもせっかくやしこの前の服で行ってみたら?」

ニヤニヤしているフーキに目潰しを加え
ついでにグレイに腹パンしてアイテムストレージを開く

「俺は今回この服で行くんだよ」

そう言って広げた服を見て皆んなの目が点になる

「タキシード?いや違うな・・・どこで手にいれたんや・・・」
「そもそもこれサイズ合わないだろう」

グレイの最もな疑問
だがしかーし!
俺は懐から飴玉ケースを取り出す
皆んなの視線が自然と飴玉に移る

「これはとある冒険者がくれた年齢詐称飴玉バージョン2!なんと今回は午後0時まで効き目があるのだ!」

クールタイムは驚異の24時間!
数も一個だけなうえに0時ぴったりに効果が切れるらしいので気をつけないといけない

「でもアズ?女性をリード出来る程ダンス上手いん?」
「ん?あれ?ダンス?」
「まぁ舞踏会やからね・・・当然ダンスくらいあるよ・・・」

俺の疑問にフーキが公式の情報を見せながら捕捉をいれる
ダンス・・・踊り・・・うっ頭が!

「俺は食べるだけで良いよ・・・」

そう言いながらテーブルの上を見るとルピーがメモを見せてくる

[私もお腹がすきました]
「・・・やっぱり少しは踊れるようになっとこうかな」

このハングリー娘と同位置に見られるのはなんとなく嫌だ
俺の発言に衝撃を受けているルピーを無視しながら周りを見渡す

「それにしても・・・ここにいるメンバーでダンス出来るやつなんているのか?」

そんな俺の発言にフーキがニヤリと笑みを浮かべる

「わいには模写眼があるからね・・・基本を覚えればあとは応用でなんとかなる」
「この天才チート野郎!」

お次にグレイ・・・まぁ出来ないだろうな

そう思い、ニヤニヤしながらグレイを見る
グレイは不敵な笑みを浮かべると姉の前に立つ

「サトミさん、お手を拝借してもよろしいでしょうか?」

グレイが貴族さながらのお辞儀をする
まさか・・・そんな馬鹿な・・・!

「いいよー!でも私踊れないからねー!」
「大丈夫です、私に任せてください」

返答を聞いたグレイは姉の手をとるとどこからか音楽が流れ出す
本当にどこからだ!?

後ろを振り返るとそこには木漏れ日荘従業員達がそれぞれの楽器を奏でている
そんな事も出来たとは・・・今度からやってもらおう

改めて視線を姉とグレイに戻す
そこにはダンス初心者とは到底思えない動きをする二人
姉は本人の言った通り全然わかっていない・・・!だが・・・!
それを全てグレイがフォローしているだと!?
ダンスが終わると共に演奏が止まる
一瞬の静寂の後に歓声が沸き上がる

「まさかグレイにこんな特技があったとは・・・」

悔しいが見事だった・・・
何とも言えない表情を浮かべ拍手をする俺の前に来てどや顔をするグレイ
・・・これさえなければなぁ
そんな俺の内心を知ってか知らずかフーキが感嘆の声をあげて俺と全く同じ感想を呟く

「まさかグレイにそんな特技があるなんて・・・驚きやね・・・」
「まぁな!俺にかかればこの程度余裕余裕!」

ニヤニヤしながらこちらを見るグレイ

「さぁアズ!今こそ今までの非礼を詫びて俺にダンスの教授を受けるべきではないかね?」
「ま・・・まぁ俺が本気出せばダンスくらい余裕だから・・・ほら!今の俺背も低いし!相手いな・・・」
「じゃあアズちゃん!私と一緒に練習しよう!」

横から飛び出してきたアクア
俺は口をムニムニさせながらグレイを見る

「さぁアズ!言って楽になっちまいな!」
「ぐぬぬ・・・!」

そんな俺達のやりとりを無視してアクアが俺の手をとる
するとどこからか・・・いや・・・木漏れ日荘音楽隊が演奏を始める

「え!?ちょ!?アクア!?」
「大丈夫大丈夫!」

戸惑う俺にアクアが弾けんばかりの笑顔を向ける
と・・・とりあえず足とか踏んじゃまずいよな!?
混乱しながらもアクアの動きに合わせる俺

「ん?あれ?」

グレイが驚愕の表情を浮かべて俺を見ている

そう上手く踊れているのだ
正確には俺のミスを全てアクアがフォローしているのだが・・・
ダンスが終わり静まり返るフロアを見渡してアクアを見る

「ね?大丈夫だったでしょ?」

相変わらず弾けんばかりの笑顔を浮かべるアクアを見て思い出す
そういえばこの子貴族の娘だったわ

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