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第七十六章 死霊都市ネクロニア

二人の怪物に連れられて辿り着きましたネクロニア
時折見える家の中ではゾンビとおぼしき者が笑い声をあげて食事をしている

食べた物は全て床に散らばっていっているわけだが

「これは・・・SAN値が下がるな」

胃の中から酸っぱい物が出て来そうになるのに耐えながら先を急ぐ

「ついたよついたヨ!ここが亡者の管理施設!」
「うむうむ!いつ来ても虫唾が走る場所であるな!」

二人の視線の先には小さな教会と見えなくも無い建物が建っている

<システムログ:死霊都市ネクロニアをホームに設定しますか?>

俺は全力でいいえを連打する
そんな俺の動作を気にすること無くリッチーが教会の扉をノックする

「はいはーい!」

中からシスター服を着たガイコツが数人慌ただしく出て来る

「あらまぁ!リッチーじゃない!今日はどうしたの?」
「やぁやぁ!スケコさん!実は紹介したい人物がいてね!」

そう言いながら俺をスケコさん達の前に引っ張る

「あらまぁ!また迷える亡者を連れてきたのね!でもこの子の冥界行きは数ヶ月後になりそうよ?」
「誰が亡者だ!誰が!」

俺が大声で叫ぶとスケコさんのアゴが大きく開いていき外れる

さすがガイコツとほめてやりたいところだ
そんな感想を頭に浮かべているとスケコさんがアゴを戻し無い肺に空気をためる

「キエエエエエエエエエ!シャベッタアアアア!!!」

なんだなんだ!?
驚くスケコさんに嫌な予感がよぎりヴァンプとリッチーを見る

「「悪戯大成功!!!」」
「やかましいわ!!!」

二人を殴っている間に落ち着いたのか
スケコさんは肩で息をしながら服を整えると他のシスターと横並びになる

「コホン、申し遅れました、わたくしスケルトンのスケコと申します」
「私はスケイよ!」
「わたくしめはスケスケよ」

いや、自己紹介されても皆んな同じシスター服を着たスケルトンにしか見えないです

俺はどこが違うのかスケルトン達を観察する

「あら?スケスケの美貌に見惚れてるみたいよ?流石スケルトン一の美少女ね!」

いやそこじゃないし聞いてないです
白い目でスケルトン達を見ていると
司祭の様なボロ服を纏ったスケルトンが現れる

「そしてこの私こそこの教会の司祭、スケサブロウだ」

いや、またスケルトンかよ!もうわっかんねぇよ!
唯一服が違うから見分けれるが、これで同じ服だったらもうわっかんねぇよ!
俺はため息を一つ

「それにしてもなんで俺が喋ったら驚いたんだ?」

スケコさんは恥ずかしそうに?頬をかく

「その・・・生者がネクロニアに来るなんて珍しくて・・・」
「わはははは!亡者は喋らないからな!」

いつの間にか教会の十字架をむしりとったヴァンプが捕捉をいれてくれる

「ヴァンプ様!いい加減うちにちょっかい出すのやめてくださいまし!」

スケルトンBがヴァンプに詰め寄っている
あれはスケスケだったっけなぁ・・・

「うむうむ!そうは言っても我は教会というものが生理的に嫌いなのだよ!」

高笑いをあげるヴァンプとポカポカ殴るスケスケ
吸血鬼って言ってたしその兼ね合いだろうか?

「で?どうやって死人を連れて帰るんだ?」

内心ヘトヘトの俺は投げやり気味に質問する
その言葉にスケルトン達が満面の笑み?を浮かべる

「まぁまぁ!リッチー!まさか亡者を連れて帰って下さるの?」
「フフン!そうさそうサ!ただし生き返らせるけどね!」

そう言いながら教会の中に入っていくリッチーの後を追う
中には無言で虚空を眺める人間が大量に椅子に座っている

「この人達は何をしてるんだ?」

若干ビビりながら隣のリッチーに質問する

「この人?この人?これは亡者さ!触ってごらん?」

言われるがままに触ろうとして・・・俺の手は亡者の体を突き抜ける
突き抜けた手からはヒンヤリとした感触と何とも言えない不快感を感じる

俺は顔を真っ青にしながら後ずさる

「フフフ!じゃあボクの力を見せる時がきたようだネ!」

リッチーが呪文を唱え踊り出す
地面に大きな魔法陣が展開
リッチーが舞うたびにどんどん大きくなっていく
教会の亡者達は虚ろな目でリッチーを眺め・・・体が人魂のようになっていく
人魂は宙を漂うとリッチーの周りを不規則に漂い始める
その姿は死霊の王に相応しく、とても・・・

「幻想的だな・・・」

ポツリと呟いた俺の言葉にリッチーがニヤリと口を歪める
やばい、また何か悪戯するつもりか!?
そんな疑心暗鬼になっている俺にリッチーが近づいてくる

「さぁ!次はアズアズがこの子達を導く番だヨ?」

そう言いながらリッチーは目をほじくり出し俺に渡す
俺が受け取るのを躊躇っていると、リッチーが補足を入れてくる

「これはボクの目よりも魔力の少ないアンデットを従わせる事が出来るんだ!」
「いや、気持ち悪いから受け取りたくないんだよ」

リッチーはケラケラ笑うとスケルトン軍団からランタンを受け取り目玉を中に入れる

「さあアズ?生者に君が感じた幻想的な光景を見せてあげなさい」

今までとは打って変わって真面目な笑顔に一瞬、ほんの一瞬だけ見惚れてしまったのであった

           ◇

出会ったばかりの愉快な友人の背中を眺めながらヴァンプが質問する

「良かったのかリッチー?折角の亡者を手放して」

その質問にリッチーはケラケラ笑う

「仕方ないだろウ?亡者がいても亡者を裁く神様がいないんダ!」

おかげで亡者が捌けず街がパンク寸前になってしまったのだ

「しかし・・・何故神霊種がいないのだ?」
「さぁねさぁね?でも神様がいたらきっと世界を壊しちゃウんじゃないかなぁ?」

ある神はこの世界を失敗作と言っていた

「だからだから!ハーデウス様以外の神様は絶対来ちゃだめなんだヨ」

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