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第七十三章 赤色の反逆者

味方の軍勢から作戦成功の狼煙が上がる
当初老兵がクラウスと判断した青髪がフードを投げ捨てる

『精霊使いだ!精霊使いが出たぞ!』

青い髪をたなびかせ、元の身長に戻ったアズがそこにいた

           ◇

『馬鹿な!?精霊使いは子供のはず!?』

杖を上段に構えて驚愕している兵士に殴り掛かる
慌てて兵士が剣を構えるが握りが甘かったのか剣が後方に弾きとぶ
防がれてしまったがそのままバットを振るうように片足で振りかぶる

『落ち着け!精霊使いは力は無があああ!』

兵士が杖で強打されて壁によりかかる

『か・・・かこめかこめ!!』

5人の兵士が囲むように剣を縦に横に振りかぶると、ボフンという音と共に煙が巻き起こる

『て・・・手ごたえが・・・ない!?』

目標を見失った兵士の顎を打ち抜きスタンさせるとその場を離脱する

「今だ!小鳥の会!放て!」

青髪の後方を走っていた小鳥の会が
会長の声と共にボウガンから様々な弾幕が放ち、兵士達のHPを削っていく

「ガハハハハ!我らの飢狼ボウガンの威力はどうだ!」

笑い声をあげる会長に青髪の子供が近づく

「ナイスです会長!さすがハンター勢!」
「当たり前だ!しかしそのサイズだと仲間というよりオトモア」

会長が最後まで言う前に溝内を杖で殴り黙らせる
それ以上いけない
それに最近の新作では飢狼よりも他のスキル・・・おっとこれは違うゲームの話だった

しばらく悶絶していた会長は息を整えて俺の手元に視線を送る

「しかしその飴玉は便利だな」

俺の手元には色とりどりの色の飴玉が入った瓶が握られている

「まさかこんなアイテムがあるなんて驚きですよね」

このアイテムは、食べた者の年齢を上げる事ができるのだ

「それなんてミ」

横から話かけてきたグレイの溝内を殴り黙らせる
それ以上いけない

本来成人している者が食べてもメリットは無いが、子供であればそれは別なのである
大人と同じ体格になるので、必然的に力や体力、リーチが伸びるのだ

「難点は変わりに速さが下がって被弾率が上がる事ですけど」
「だがそれに見合う価値のあるアイテムだぞ!」

何より嬉しいのは一時的にとはいえ元の姿に戻れる事だ

『ああ・・・子供船長が・・・』
『俺達の寮長は!永遠に!』

後ろで叫ぶ木漏れ日荘兵に土精霊をぶつけて黙らせる

「漫才してる場合じゃない!クラウスさんやアクアが稼いでくれてるこの時間を無駄にするなー!」

まだまだ兵士の数は少ないが明らかに最初より増えてきている
どうにかして敵の数が少ないうちに城まで辿りつかなくては!

「木漏れ日荘兵は遊撃にまわれ!くれぐれも死なないように!」
「「「アイアイサー!」」」

木漏れ日荘兵と別れ、城目指して走る俺達の前に近衛兵の集団が迫る

「近衛兵確認!交戦開始!」

気分が高揚している俺は近衛兵の一撃を杖で受け止めようとして吹き飛ばされる

「っく!止めれると思ったがそんな事は無かった!」
「馬鹿やってないで伏せろ!」

悔しさに地面を叩いている俺の頭をグレイが抑えつける

「ぶへぇ!?グレイこの野・・・」

俺の頭上を大量のボウガンの矢が通り過ぎる
泥だらけの顔で口をムニムニさせていると小鳥の会が更に追撃をくわえる

「アズ!ここは先に行け!いくぞお前ら!放てー!」

近衛兵は大したダメージを受けていないがどうやら会長達にヘイトが固定されたらしい
撤退しながらボウガンを放つ会長達を近衛兵が追い回し始める
地面にこけたまま状況を確認している俺をグレイが肩に担ぎ走りだす

「おいグレイ、物扱いとはひどいじゃないか?」
「言ってる場合か!?走れるなら自分で走れ!」

・・・まあ今回ばかりは感謝しておくか

「絶対言わないけどな」

風で体を浮かせて地面に着地する俺にグレイが不思議そうに視線を向ける

「何の事だ?」
「なんでもねえよ」

しばらく無言で三人で走っていると後方からガシャガシャと鎧の音が聞こえてくる
後ろを振り向くと近衛兵が迫ってくる
新手の近衛兵か・・・?
そう思ったが刺さっている大量の矢を見て先ほどの近衛兵であると予測をつける

どうやら会長達はやられたらしい
グレイも同じ発想に至ったのか涙目になりながら叫ぶ

「思ったよりはやかったな!?」
「小鳥の会は基本モンスターを狩るのが主流だからなぁ」

だが会長達の犠牲でなんとか城門に辿り着・・・
唐突に襟を掴まれて減速する

「ぐぇ!?なんかグレイ今日ひどくない!?」

批難の目を向けるが
グレイは真剣な表情をして前を見ている

「なんだなんだ?」

グレイの視線の先に一人の人物を確認する

「な!?まさか!?」

城の目の前には地面にツーハンドソードを突き刺した赤髪が立っている

「こんな時に赤金の鷲のクラマスだと!?」

前門の虎後門の狼ってやつか!?
赤髪は地面のツーハンドソードを蹴り上げて俺達に急接近
上段からツーハンドソード振り下ろすと、俺達を追っていた近衛兵が真っ二つになる

「・・・へ?なんで?」

赤髪がバツが悪そうに目をそらす

「馬鹿なやつだが俺の大切な弟分を傷つけたアイツを許さねえ!」
「弟分・・・?とりあえず・・・味方なのか?」

赤髪は無言のまま背負っていたツーハンドソードで横払いに一閃
迫ってきていた近衛兵を後方に弾き飛ばす

赤髪の後ろに滑り込んだ俺は目の前の凄惨な光景に息を呑む
城の中庭には大量の兵士の死体が転がっているのだ

「まさか・・・」
「っへ!アイツの所まで行くのに邪魔だったんでな!先に潰させてもらったぜ」

どうやら城内の兵士はほぼほぼ赤髪にやられたらしい
圧倒的な強さにゴクリと喉が鳴る
この人もしかしてルピーや海王クラスの化け物なんじゃないか?
そんな俺の様子を見て赤髪がニヤリと笑みを浮かべる

「変な小細工が無かったら・・・俺は最強だ!」

次会う時は敵かもしれないが今回ばかりは頼もしい

「赤髪さん!ここは任せました!」

俺の言葉に赤髪は表情を硬くする

「俺の名は赤金の鷲リーダー、ダ「後は任せました!」
「・・・」

後ろで「やっぱあいつも殺す」とか聞こえるが気のせいだろう
残りの敵を赤髪に任せて先に城内に潜入する

「静かすぎる・・・」

誰もいない城の中を走り抜けると
玉座の間で立ち止まる

「おんやぁ~?まさかここまで来たのですか~?」

玉座から聞こえてくる声の主を睨む

「グラン・・・!姉さんを返せ!」

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