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第七十一章 選定の刀

オクトリア城玉座の間にて
オクトリア王の前で跪くアズ

「というわけで!戦わなくても良いので兵士をお借りできないでしょうか!」
「良いぞ」

          ◇ 

驚く程に簡単に兵士を貸してくれたオクトリアを後に俺とAKIHO、グレイの三人は
和の国総本山、天憑城(あまのよりしろ)に来ていた

城下町は人で埋め尽くされておりあちこちに露店が並んでいる
たこ焼きもどきや焼きそばもどき等の客寄せがさっきから鬱陶しい
人混みは城に近づくと更に増えていっている気がする

「なんだか騒がしいですね八兵衛?」
「おいアズ!誰が八兵衛だ!そこは助さん格さんだろ?」
「なら私はお新ってところかしら?」

いや、AKIHOはそんな枠じゃないと思う
むしろ辻斬りや人斬り枠じゃないか?

「そういうアズは悪代官辺りじゃないか?」
「ほう?今月の家賃と言う名の袖の下はまだかな?」

ボソリと呟いたグレイが露骨に目を逸らして口笛を吹いている

そう、彼は期待を裏切らない男だった
彼のRの出所をことごとく潰した結果、家賃を払えなくなったのだ
まぁあのまま他人のRで家賃を払われても寝覚めが悪いしな

「それにしても・・・この国は有望な子が多いわ」

AKIHOの視線の先には木刀で遊ぶ子供達
あの動きなら三人でブルーラットぐらい倒せそうだ

城の前の広場につくと奇妙な催し物が広がる
岩に一本の刀が刺さっており、その刀を抜こうと男が刀の柄に触れた瞬間痙攣しながら倒れる

「なにやってんだあれ?」
「ご存知ないのですか!?」

近くにいた爺さんが唾をかけながら説明してくれる
なんでも刀を抜いた者はこの地の殿になることが出来るらしい

刀の名前はエクスカリバーか何かだろうか?
観察していると名前が出てくる

<不知火の刀>

「バリバリの妖刀じゃないか!?」
「ええ、ですから殿になる精神面を図っているのです」
「でも危なくないですか?へたに使うと操られますよ?」
「ええ、ですから・・・せっかくなのでこちらにどうぞ」

刀の後ろ、武士達と一緒に並ぶ形で様子を伺う
今も新たな迷える子羊が・・・グレイじゃないか
腕まくりしながら刀の前に立つグレイに冷ややかな目を向ける

「へへへ!ここはおれに任せな!」

グレイが刀を握ると刀が少し動く
あれ?抜けるんじゃないか?
そう思った瞬間グレイの顔が豹変する

「ククククク馬鹿な人間がひぃ!!」

隣にいた武士が何かを投げたかと思うとグレイが痙攣しながら倒れる

「ああ・・・そういう・・・」

グレイの尻にささったクナイにはおそらく状態異常を付与しているのだろう
というかこの人達武士じゃなくて忍者だな
グレイの尻にささったクナイを嫌々抜いていると
説明してくれていた老人がフォッフォッフォと笑っている
この爺さん結構危ない人だぞ?

「ところでこんな機密っぽい事俺みたいな一般市民に話してよかったんですか?」
「フォッフォッフォッ!主がグラフから交渉に来た小童なのじゃろう?」

グラフからの交渉・・・?もしや敵だったか!?
俺が警戒を強める中、老人が城の方を指差しついてくるよう促してくる

「詳しい話は向こうでするとしよう」

         ◇

天憑城天守閣

「というわけで戦わなくて良いので手助け願えませんか?」

先程とはうって変わって険しい顔の爺さんに頭を下げる
爺さんは頭をあげるように言うと溜息を吐きながら窓の外を見ている

「援助してやろうにも現在我が国には殿がおらんのじゃ」
「それで殿を選定していたのか・・・でも殿がいない?なんでまた」
「先日村雲城という所に賊が入ってな」

ん?村雲城?

「その国の領主を殺害・・・あまつさえ我が国の神器を暴走させて和の国に多大な被害をもたらせた」

なんか聞いたことある話だな

「その折に最前線で戦っていた殿が戦死されたのじゃよ」

なるほどなーと頭をひねっているとグレイが脇を小突いてくる

「にゃ!なんだグレイ!?今大事な話を!」

グレイが入り口を指差すと俺を抱えて全力で走り出す

「逃すなぁ!殿の仇打ちじゃあ!」

襖という襖から武士が出てくる

「な!なんで!?」
「お前が操られてた時に殺したのがその殿なんだよぉ!」
「あー・・・撤退!撤退ぃぃぃ!」

得心いった俺は四方八方から飛び交う剣戟を避けながら出口を目指す

「この程度の動きなら!AKIHOのほうか数倍速い!」

ヒュンッという音と共に頬に赤い鮮血が滲む

「・・・グレイ!ヘルプー!!!」

助けを求めるべくグレイを見る
そこには見事な土下座が完成されていた
あまりの完璧さに敵味方問わず思わず見惚れて・・・

「アズ、いや!この賊の首は私めが落としますので!ここはどうか!!!」
「おっま!この期に及んで俺を売りやがったな!」

爺さんも満更じゃなさそうな顔だし!
更に出口から武士がなだれ込んでくる

「グレイ!覚えてろよ!」
「悪いなアズ!お命頂戴する!」

新手の武士からの攻撃に備える
だが新手の武士達の目標は俺ではなく
そのまま横を通り過ぎていってしまった
俺とグレイがポカンとしている中
先程の爺さんに耳打ちをしている

「誠か!?皆の者!新たな殿の誕生である!」

俺とグレイが間抜け面のまま出口を見ると・・・
AKIHOが不知火の刀を腰にさして仁王立ちしている

「AKIHO!?」
「あら?何の騒ぎ?」

AKIHOは俺と周りの状況を見て・・・

「私の物に・・・手を付けたようね?」

口を開けたまま呆然としていたグレイが後ろに吹き飛ぶ

「あら?首をはねたつもりだったのだけど?」

グレイが喉をおさえてゲーゲー言っている
AKIHOは他の武士に刀を向ける

「こんなに斬れるなんて・・・楽しませてちょうだい!」

大きく口を歪ませ・・・

「待った待った!」

今にも斬りかかりそうなAKIHOを止める

「・・・君が無事なら・・・いっか・・・」

            ◇

かくして和の国との交渉も無事に成功した俺達はグラフに帰還する
転移ポータルを出た先には・・・ブーメランパンツにマントをつけた魔術師が杖を片手に仁王立ちしていた

「む?ウェルカム!」

俺が無言で精霊を撃とうとした所を目元までフードで隠した女冒険者に止められる

「HA☆NA☆SE☆」
「ええい!落ち着かんか!」

久しぶりに見た変質者に頭を抱える

「・・・で?なんでロギアさんがここにいるんですか?」
「ふむ?我は迷宮都市の管理者にして三賢者の一人である」

つまりあれか・・・

「ロギアさんが迷宮都市側の助っ人なんですね・・・」
「そういう事じゃ、見た目はこれじゃが腕は確かじゃぞ?」

確かに見た目はあれだが三賢者の一人だもんな・・・
この際見た目に関しては目を瞑ろう・・・
遠くの景色を見て落ち着いているとポーン!という音が鳴る

「あれ?フーキからメールだ」

[黄国で優勝!今回のイベントの支援の約束とりつけたよ]

まさか本当にやるとは・・・
これでグラフ城は四方の国からの物資援助、及び兵士の派遣を受ける事が出来なくなり
かつ四方の国を警戒して国境に兵を配置しなくてはならない
いくら多くても城の中の兵力は1000いるかどうか
ここから更に作戦で減らせば・・・!

皆に急ぎメールを送る

[作戦は明朝!皆!よろしくお願いします!]


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