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第五十六章 追跡者


「ひゃい!?」
「・・・?どしたん?急に」

俺と話していたフーキが怪訝な顔でこちらを見る

「いや・・・なんか視線を感じてさ」

フーキは周りを見回し苦笑する
周りには常連の冒険者と掃除をしているアレクがいるだけだが?

「まあアズは注目されてるもんね」
「何の事だ?」
「色々なイベントで活躍してるギルド未所属のプレイヤー」

ああ、確かにそれは気になるかもしれない
俺はジローに水をかけなが溜息を吐く
そこには水に濡れてもびしょ濡れにならないジローの姿

「すごいぞこれは・・・!」

<海獣のアミュレット>
<水耐性+10>

能力こそ普通だが前回海の上ということで全く役に立たなかったぬいぐるみ勢の弱点を潰せる
俺が新たな可能性に感激しているとフーキが溜息を吐く

「・・・なぁアズ?わいの話聞いとる」
「ん?ああ聞いてる聞いてる、俺が有名人ってことだよな?」

フーキが批難めいた目でこちらを見てくる

「それもやけど・・・武の国の話や」
「なんだそっちの話か」

フーキの話では長らく第二都市の発見が遅れていた北エリア組みがついに街に辿り着いたらしい
武の国 黄国(こうこく)
あらゆる武術の達人が集まる地だそうだ
なかでも武芸館では日々武人達がお互いの武を高め合い新しい技を編み出しているらしい

「そそ!ついにわいのホームになるかもしれん場所なんよ!」

珍しくテンションが高いフーキ
しかし・・・

「・・・ホームの場所変えるんだ」

冒険者は街をホーム登録できる
初期の街はグラフなので基本皆ホームはグラフなのだが
ホーム登録していると死んだときのリスポン地点になったり
市場での取引税や土地の税金の免除、レギオンの設立等お得なのだ

俺?勿論グラフがホームだ
経営者だから当然といえば当然だ

「こうやってどんどんグラフから人がいなくなるのか・・・」
「まあ転移ポータルですぐこれるしね」

そうなんですよ
すぐ来れちゃうから特に悲しくも無いんだよね
まぁ少し寂しいな程度の感覚ですよ・・・
気持ちの問題なんですが!

俺が少しセンチな気分に浸っていると背後から話かけられる

「ちょっと良いかな?」
「ん?」
「なんや?初心者?わいらになんか聞きたいん?」

振り向くとそこには初心者マークが名前の横についたピンク髪ロングの・・・AKIHOが立っていた

「なんで香月さんがBGOを・・・?」
「アズのリアフレか?」

フーキが驚いた顔をしている
もしかしてこいつ俺に知り合いがいないとでも思ってるのか?
だが今一番俺が気になるのはそこではない

「ゲーム・・・しないイメージだったけど」
「君の話を聞いて興味が出て・・・ね?」

俺の話で?照れるな
AKIHOがこちらをジッと見つめているのに気づき背筋に冷たいものが走る

「ひゃい!?」
「ほんま今日どうしたん?」
「い・・・いや・・・なんでもない・・・」

先程の視線の原因はAKIHOだったのか・・・?
しげしげとAKIHOを見ているとぎこちない動きで手元を動かしている

<システム:AKIHOからフレンド申請が来ました>

またこの子は唐突だな・・・断る理由も無いし・・・良いかな?
一瞬ためらって承諾する
フレンドになった事で相手の情報が表示できるようになる
少しワクワクしながらAKIHOのステータスを確認する

<AKIHO Lv1
 <HP5 MP15   力10 防御1 知力1 俊敏4      運1   残3P 
 <スキル:追跡者、見切り、バーサーカー、陽炎、疾風

とんでもないステータスだった  

「また・・・えらく偏ってますね・・・?」
「そう?フフ」

オワタ式AKIHOが妖艶な笑みを浮かべ俺は再び背筋に冷たいものを感じる
なんなんだ!?
異変に戸惑っている俺を置いてフーキとAKIHOが話を進めていく

「それで?何の用なん?」
「青葉君に興味があって覗いてたんだけど・・・武の国っていうのにも興味が沸いて・・・つい・・・ね?」

AKIHOの視線は一度もこちらから外れない
部活勧誘もしかして諦めてなかったりするのかな?

「なら冒険がてら俺達と一緒に行く?」
「ええ・・・お願いします」
「なんで俺も行くことになってるんだ?」
「武の国はまだ行ったことないからね、転移ポータル解放目指して一緒にいこうや」

フーキが武の国に着くまでの道のりを地図に記していく
グラフ大森林を抜けた先にあるグラフ大樹海

そこのエリアボスのグラントレントを倒すと新エリアが解放され
そこから更に黄州(こうす)という平原を通った先にあるらしい

「随分と長い道のりだが迷わず行けるのか?」
「そこは先組が道に記しをつけてくれとるから大丈夫なんよ」

レベル1もいるしエリアボスもきつそうだが・・・
悩んでいると聞き耳を立てていたアレクが手をあげる

「僕も行って良いですか?」
「アレク?危険な旅になるかもだぞ?」

フリフリウェイトレス衣装のアレクが真面目な表情を浮かべているのに気づきこちらも真面目に考える

「フーキ?大丈夫かな?」
「北エリアはマップが面倒なだけで魔物は強くないからいけるけど・・・」

フーキはアレクとAKIHOを見ると良い事を思いついた!とばかりに手を叩く

「そうや!実力の程も見ときたいし二人で決闘してみてくれん?」
「へぇ・・・?」

AKIHOがアレクを興味深そうに見る

「わ!?わかりました・・・よろしくお願いしますAKIHO」

アレクも俺と同じなのかAKIHOの視線に一瞬びくりとしてフーキの発言を承諾する

「決まりやね、アレクはNPCだから・・・ルールはそうやね・・・」

フーキが指を三本立てるとルールを開示していく

1、HPが半分を切るか降参した方が敗北
2、相手を殺してはいけない
3、楽しく決闘する事

「NPC対冒険者の決闘なんてシステム状無いからね、とりあえずのルールやね」

二人はルールを確認すると各々の獲物を取り出しお互いにテーブル越しに向き合う

「それじゃあ・・・いくわよ?」
「AKIHO、胸を借りるつもりでいきます」

二人が武器を構え臨戦態勢に入り・・・

「じゃあまず外に出ようよ!」

その場で戦おうとする二人を外に追い出すのであった

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