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第四十九章 海上の暗殺者

看守室のドアにこっそり穴を開け中の様子を見る
中にはボサボサ頭をボリボリ掻きながら欠伸をしている海賊が一人と居眠りをしている海賊が一人

「皆はここで待ってて・・・アレクはこっちに」

子供達を牢屋の中で待機させアレクと二人扉の両横に張り付いて扉をノックする

「ぁあ?なんだぁ〜?」

ボサボサ頭が訝しみながら扉を開け中に入ってきた所でアレクに合図をする
示し合わせた通りアレクが杖で海賊の腹を思いっきり殴る
海賊は苦しそうにその場にうずくまり息を整える

「カ・・・が・・・てめ・・・!」

うずくまっている海賊に反対側の壁に張り付いていた俺が風を纏い空中回転しながら脳天をうちぬく
海賊のHPゲージが一気に白くなりその場に崩れ落ちる

『やっやった!』
『流石冒険者!』
『いいですわよ!』

子供達が歓声を上げる

「う?なんだぁ?おい!相棒!」

子供達の歓声でもう一人の海賊が目を覚ましてしまった
眠気眼で海賊がサーベルを構える

「遅い!」

隠密で後ろに回り込んでいた俺は海賊の背中に張り付き口に猛毒マスクを押し付ける

「ガボ!なんだこれぇぇぇぇぇぇ!?」

猛毒マスクの効果が発動
猛毒と混乱により海賊は痙攣しながら崩れ落ちる
使い捨ての装備だったのか猛毒マスクは粒子となって消える

「この状態異常つらいんだよな・・・」

一度味わった者にしかわからないだろう
ウンウン頷き改めて子供達に静かにするよう合図する
両手で口を押さえてコクコク頷く子供達にホッコリしながら先に進もうとして・・・

真っ青な顔のアレクに気づく
視線の先には無限沸きの無くなった海賊の死体
・・・これって人殺しに・・・入るのかな・・・?
改めてNPCが無限沸きしなくなった事を胸に刻みアレクの背中を叩く

「無理しなくていいんだぞ?」

アレクは少しの沈黙の後に首を横に降り笑顔を向けてくる
顔は真っ青、足取りはフラフラなままだ
とてもじゃないが連れていけないな・・・

「アレクは子供達の護衛を頼む」

フラフラなアレク一人では心配なので用心棒にジローを出現させる

『きゃー!何この子可愛い!』
『魔物!?』

アレクに後の事を任せ一人看守室の先にあった階段をのぼる

「ドアは4個か・・・」

物音をたてないよう一番近いドアから確認していく
一つ目のドアからは海賊の談笑が聞こえる・・・休憩室かな?
中の様子を確認すると4人の海賊が寝台で話しているのが見える

二つ目のドアからは調理場独特の匂いがするので調理場だろう
中には痩せた海賊と小柄な海賊がコック帽をかぶり料理を作っているのが見える

三つ目のドアからは人の気配は感じないが何の部屋かわからない
中の様子を確認すると麻袋と樽が大量に置いてあるのが見える

「ここも外れ・・・けど隠れるのに使えそうだ」

四つ目のドアからは冷たい風が入って来るのがわかる
穴をあけて中の様子を見ると外の景色が見える
木製のRPG特有のガレオン船には少なくとも視認できるだけで3人は海賊が見える
船はまだ出向していないのか浅瀬が見える

「船が出航してないなら・・・いける!」

挟撃を避ける為敵戦力の殲滅にとりかかる

「まさかこのアイテムを使う時がくるとはな・・・」

調理場の前に立ちドルガさんから受け継いだコック帽を取り出して装備、盗賊のマスクで顔を隠す
これなら小柄な海賊に見えなくもないんじゃないか?
深呼吸をして調理場の扉をノックする

「こ・・・交代だ!」

中に入ると小柄な海賊が歓声をあげて失神する
その表情はまるで地獄から解放されたかのようだ

この世界の厨房はどこもこんなのなのか・・・?
調理場の中に潜入すると痩せた海賊がチラ見でこちらを確認する
バレテナイバレテナイ!

「おい!そこの!調味料とれ!」

大鍋をかき混ぜながら俺に指示を出す海賊に安堵しつつ
背中を見せた海賊の首元を鬼の短剣と包丁で切り裂きHPゲージを白く染める
ついでに失神している海賊のHPも白く染めておく

不意打ち状態でダメージが大きく上がる状態での弱点特攻
これに耐えれるやつは余程の体力馬鹿だろう

「なむなむ・・・さてお次は」

倒した海賊に両手を合わせると次の作業にとりかかる・・・それは・・・
調理人として許されざる行為・・・料理に一服盛る!
完成した鍋に痺れ薬を注ぎ込み
木製のカップにいれると休憩室に持っていく

これで安全に敵の数を減らせるはずだ!
我ながら完璧な作戦に黒い笑みを浮かべ、休憩室の海賊に声をかける

「料理できたぞー!」

『うっひょー!待ってました!』
『はらへり~はらへり~』
『いっただっきまーす!ひぎっ!?』

一人目の海賊が食べ始めた所で痺れ薬の効果が発動してしまった
やばい!はやすぎる!

『おい!どうした・・・!?』
『ま・・・まさか!?
『よく見たらお前血だらけじゃねえか・・・!』

三人の海賊は痺れている海賊を見て驚愕の表情を浮かべ・・・
バレた・・・!?
完璧な作戦が失敗した俺は包丁を構え臨戦態勢に入る

『気絶するほどうまいのか!?ひぎっ!?』
『うめえ!うめぇ!ひぎっ!?』
『ひゃっほーう!新鮮な肉料理だ!ひぎっ!?』

全員馬鹿で助かったよ
状態異常で動けない海賊を殲滅して子供達と合流する

「おーい!とりあえず安全は確保してきたぞー」
『ほ・・・ほんひい!?』
『流石冒険者ひい!?』
『私は心配なひい!?』

なんだ・・・?皆の様子がおかしい
まさか敵!?
後ろを振り向くが誰もいない
困惑する俺にアレクが近づいてくる

「アズ・・・ですよね・・・?あと血だらけなので少し・・・結構怖いです」
「ああ!なるほど!」

いつもこのぐらいの返り血では誰も反応しないので感覚が麻痺していたようだ
血だらけの装備をローブに変えると子供達の顔が若干戻ったような気がする
怯える子供達を人質に取られないよう樽の部屋に誘導する

「次はここで待っていてくれ・・・」
「アズ!さっきは見苦しい所を見せてしまった・・・今度は僕も行く」

外の海賊に不意打ちは通用しないだろう
最悪俺がやられても騒ぎを聞きつけた仲間が助けに来るかもしれない

「アレクはいざという時の為に皆を守ってくれ」
「しかし!」
「じゃあピンチの時は助けてくれ」

納得してない様子のアレクの頭をポンポンと撫で外への扉の前に立つ

「あとは外の敵をなんとかするだけだ」

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